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「正社員過保護」の誤解と真実…韓国企業の解雇はあまりに容易

登録:2014-12-04 09:19 修正:2014-12-04 10:56
企画財政部局長級関係者が非正規雇用総合対策の一環として正社員に対する整理解雇要件の緩和を検討していると明らかにした。写真は繰り返し正社員解雇要件緩和の必要性を表明してきたチェ・ギョンファン経済副総理兼企画財政部長官。 キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 チェ・ギョンファン副総理兼企画財政部長官に続き朴槿恵(パク・クネ)大統領まで「正社員の過保護」を主張し、雇用柔軟化を推進させる世論作りを始めた。1998年の外国為替危機後から財界と政府は持続的に労働格差や非正規雇用の拡大が大企業の正社員のためだと攻撃してきた。韓国の労働市場における問題は多様な原因により発生しているが、大企業の正社員の問題だけを浮き彫りにさせ“烙印”を押すやり方で政策を推進するのは危険だという指摘もされる。

■正社員解雇は難しいのか? …非正規雇用労働者の解雇が容易すぎ錯視現象

 財界は現代自動車や銀行圏などを指し、労組が強い大企業正社員の解雇は難しいと言う。雇用が硬直しているので非正規雇用を使うしかないというのだ。これに対して現代車労使関係を10年以上も研究してきたパク・テジュ雇用労働研修院教授は「自動車がよく売れ市場の状況が良いから雇用が安定して見えるのだ。強い労組があった大宇自動車(現在の韓国GM)や双龍(サンヨン)自動車のような大企業も、経営が困難になるとすぐに大々的な整理解雇がされたという点に注目しなければならない」と話した。

 法・制度上でも韓国の正社員に対する整理解雇は容易な方に属す。雇用労働部が韓国雇用労使関係学会に任せて発表した報告書「経済協力開発機構(OECD)加盟国の労働市場指標比較研究」(2013年)によれば、正社員の集団解雇は34か国のうち4番目に容易と調査された。個別の労働者の解雇は相対的に出しにくく、加盟国のうち22番目に容易とされた。しかも、韓国の大企業は法で保障された整理解雇だけでなく、“名誉退職”や“勧告辞職”など様々な方法で解雇をしている。例えば今年4月にKTは、昨年の赤字を理由に8300人を名誉退職させている。

 大企業正社員の解雇が難しいように見えるのは相対的な差異との分析もされる。非正規雇用や中小・零細企業では解雇があまりにも容易で、大企業正社員の雇用保護が過剰に見える“錯視現象”が起きている。

 一方、大企業の正社員労組も一定部分の責任は免れないとする指摘もある。パク・テジュ教授は「現代車を考える場合、非正規雇用(社内下請け)問題は使用側の“労働柔軟性に対する欲望”と正社員労組の“雇用安定に対する欲望”を交換した談合と見ることができる」と話した。

 現代車労組は自らの高い賃金と雇用安定のため非正規雇用の使用を容認し、経営陣はそれを通じて労働柔軟性を確保し、人件費を削減しているというのだ。非正規雇用の犠牲の上に企業と正社員“共生”をしているわけだ。

■賃金格差の原因は何か? …下請けを搾取する大企業の戦略に問題

 OECDの資料によると、韓国の賃金不平等(下位10%賃金対比上位10%賃金)は2011年基準で4.85倍になり、33加盟国のうち3番目に高い。大企業の賃金を100にした時、中小企業は64.1で、正社員が100とすると非正規雇用は49.9になる。

 ここまで賃金格差が広がったのは利潤を最大化するため非正規雇用を無差別に使い、納品単価の引き下げなどで中小企業の取り分を絞り取ろうとする大企業の経営戦略の影響が大きい。非正規雇用と中小・零細企業労働者の低賃金により恩恵を得たのは正社員より企業といえる。労働所得分配率(国民所得のうち賃金の比重)は1996年に47.6%から2012年45.8%に落ち込んだ。全体の労働者の取り分は少なくなり、企業の取り分が大きくなったという意味だ。産業研究院資料によれば4年間(2006~2010年)の企業所得は19.1%増え、家計所得は1.6%の増加にとどまった。

 最低賃金の引き上げ、非正規雇用の差別禁止などの政策を積極的に進めて賃金格差を解決しようとする努力をしてこなかった政府の責任も大きい。それに加え、力のある大企業正社員労組が事実上この問題を放置したのも批判の対象になる。大企業-中堅企業-中小・零細企業、元請け-1次下請け-2次下請けごとに賃金格差が広がる構造のなかで、大企業正社員の高い賃金が中小・零細業者労働者、非正規雇用労働者の相対的な低賃金の影響を受けているという点は否定し難い。

■「年功序列号俸制」はどれほど深刻なのか? …300人以上企業の75.5%が年俸制を並行

 朴槿恵大統領は1日、大統領府首席秘書官会議で「韓国の賃金構造はひどく硬直した年功序列型で、ある職場で30年以上勤めた人の人件費が新入職員の2.8倍に達するが、これはOECD平均の二倍に近い」と話した。だが、韓国では一つの職場で30年以上仕事ができる労働者は珍しい。雇用部資料では、勤続年数が10年以上の長期勤続者の比率は18.1%に留まり、平均退職年齢は49歳にまで下がる。最後まで生き残れた人だけが2.8倍に達する年俸恩恵を受けることになるが、これは少数だ。

 すでにかなりの数の大企業では号俸制にともなう賃金引き上げを抑制するため、年俸制と成果配分制が多く導入されている。300人以上の企業の75.5%が年俸制を導入しており、46.8%は成果配分制まで活用している。

 ただし、韓国の賃金格差が深刻な事実には変わりがない。また、賃金負担を感じた企業が長期勤続者を大挙退社させ高齢者雇用が極度に不安になっているのも現実だ。チョン・イファン ソウル科学技術大学校教授(社会学)は「非正規雇用と零細事業場労働者まで包括できる賃金の基準を作り、高齢者の雇用安定を守る突破口を作るためにも、職能にともなう賃金など賃金体系改編に対する議論は必要だ」と話した。

■正社員が譲歩すれば非正規雇用問題は解決されるのか?…労使政が妥協しても順守されなければ無意味

 労使政の三者が「正社員譲歩、非正規雇用の処遇改善」という大きな枠組みで妥協するといっても、そうした合意案が守られないのではないかと憂慮する声もある。今まで労使政の間で数回の合意がされたが、労働市場や労使関係を変化させることができなかったためだ。昨年5月の労使政委員会で、大企業正社員の採用拡大などの内容を盛り込んだ「働き口協約」が締結されたが、広く知られることもなかったし、さしたる影響もない状態だ。政府が推進している賃金ピーク制の活性化にしても、企業はこれを口実に正社員の賃金だけを低くし、定年延長や正社員採用を増やさない場合は何の強制もできない。

 労使政の大妥協に実効性を持たせようとするなら、それぞれの主導者に代表性と影響力がなければならず、中央・産業別・地域別で“対話文化”が蓄積されなければならない。10%の労組組織率を土台にした企業別労組体系では、労使が全体の労働市場より企業内賃金や労働条件問題にばかり埋没するほかはない。中央で労使政が合意をしても、企業の労使が履行しなければ意味がない。

 厳しい限界はあるが、それでも労使政の対話をすべきなら、少なくとも民主労総の参加はなければならないとする指摘も出てくる。現代車をはじめとして韓国のかなりの大企業労組は民主労総に加入しているためだ。パク・ソンシク民主労総スポークスマンは「労働市場の格差問題について国会を中心に労使政が議論をし、政府が真剣に非正規雇用の懸案問題に積極的に取り組むなら、いつでも対話が可能だ」と話した。

世宗/キム・ソヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2014.12.03 23:53

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/667338.html 訳Y.B

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