度を越えた“捜査ガイドライン”に批判
朴槿恵(パク・クネ)大統領の捜査介入が“禁止ライン”を越えた。 捜査の方向を提示する水準を跳び越え、結論まであらかじめ決めたも同然の発言をした。 報告書の内容の真偽と関連して、最高権力者の“ガイドライン”が提示された状況で、検察がこの事件の真相に一歩でも近寄れるか、懐疑的な反応が検察内外から出ている。
朴大統領の発言は、証拠収集を通した実体的真実の発見という捜査本来の方法論に逆行するものだ。 朴大統領は「この間、マンマン会(訳注:朴大統領の弟であるパク・ジマン氏とイ・ジェマン総務秘書官の名前の末尾文字から名付けられた集い)をはじめ根拠のない話が多かった」、「根拠のないことで国を揺さぶることはやめなければ」などの発言を通じて、チョン・ユンフェ氏の国政介入疑惑は事実ではないと釘を刺した。 疑惑の周辺を調べ端緒を探し、関連者の陳述確保を通じて真実に接近する“帰納式”捜査が始まろうとした途端、「その疑惑は事実ではない」として“演繹的捜査”をしろとの教示が下されたわけだ。
このような発言は捜査の大きな分岐と見られる報告書内容の真偽確認を小枝に過ぎないと見て、あらかじめ枝刈りしたようなものだ。朴大統領は報告書の内容を「基礎的な事実確認すらしなかった」と規定した。 また「少しでも確認すれば、すぐにも真偽が分かることを、関連者に確認すらせずに“秘線”とか影の実力者がいるかのように報道して、さも疑惑があるように追い込んでいること自体が問題」としたことは、マスコミの報道が名誉毀損に該当すると結論を下したも同然だ。
国政壟断の糾明と正反対の方向
捜査も始まらないうちに限界を決め
「執権2年目の大統領の尋常でない剣幕を見ながら
まともに捜査できる検事がいるだろうか」
「捜査の中立性や法規定を無視」との批判
一部参謀たち「あまりに強硬」という反応も
文書流出事件として特殊2部に割り当て “総力”
国政壟断捜査はスルーされるかも
朴大統領は「検察は内容の真偽を含めて一点の疑惑もないよう捜査しろ」とも言ったが、すでに関連者たちが事実ではないと言い、それを大統領が認めてしまった以上、検察がこれに反する捜査結果を出すことは難しくなった。
検察内部でも尋常でない剣幕の執権2年目大統領の発言により「国政壟断疑惑」を捜査するのは不可能に近いという話が出ている。 匿名を要請したある検察幹部は「少なくとも、この政府が二回以上は検察人事ができる状況で、どんな検察幹部が右往左往せずに捜査を指揮できるか」と反問した。検察特捜部の経験が長いある弁護士も「検察としては文書流出の部分に捜査力を集中し、チョン氏の国政壟断有無は簡単に事実確認さえやって終わり。 結局、名誉毀損判断のための根拠だけを探せば良いわけ」になったと話した。 彼は「大統領のお言葉のおかげで、捜査が一段と楽になった」として冷笑的反応を見せた。
朴大統領の発言は、検察の中立性を規定した検察庁法の根本趣旨を傷つけるものでもある。 検察庁法第8条は「法務部長官は検察事務の最高監督者として、一般的に検事を指揮・監督し、具体的事件に対しては検察総長のみを指揮・監督する」と規定している。 捜査の中立性と独立性を保障するための条項だが、朴大統領は首席秘書官会議メッセージという政治行為を通じて、法規定の趣旨を無視してしまったわけだ。
検事出身のクム・デソプ弁護士は「権力核心部のパワーゲームが公然と行われているということは最高の公的関心事に該当する。 これを政治行為で解決できずに告訴・告発を通じて検察に押し付けることも問題だが、そんな風に押し付けておきながら「ああだこうだと指示する」ことは、より一層大きな問題」と話した。 彼は「(大統領が)民主的な権力作動方式に対して基本的な認識すらないために言えること」と批判した。
検察も事件担当配分から大統領の「捜査指揮」に積極的に応じる姿を見せた。 国政壟断の有無に対する調査が含まれた名誉毀損部分は、通常名誉毀損事件を受け持ってきたソウル中央地検刑事1部に任せながらも、文書流出部分は特殊2部に割り振った。 また、両部署の捜査指揮も認知部署を総括するソウル中央地検3次長に任せた。 主に認知・企画捜査を受け持つ特捜部に報告書流出部分を任せたことは、朴大統領の注文どおりにこの部分をより強力に捜査するという予告であるわけだ。