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[分析]国家情報院スパイねつ造事件、司法体系を籠絡した深刻さに較べ処罰不十分

登録:2014-10-28 23:17 修正:2014-10-29 07:06
イ・ビョンキ国家情報院長(右)が28日午前、ソウル瑞草区の国家情報院庁舎で開かれた国会情報委員会の国家情報院に対する国政監査で、ハン・ギボム1次長と話している。 共同取材写真//ハンギョレ新聞社

「罪責重い」「厳罰が要求される」としつつ
国家情報院上層部は処罰対象から除外
「不法捜査の慣行が安保を脅かしている」
「牽制装置の用意が至急必要」の声

 国家情報院職員が6回も証拠をねつ造して司法体系を徹底的にもてあそんだスパイ証拠ねつ造事件で、関連者6人全員に有罪が宣告され“1次的断罪”はなされた。 だが「国家と国民のために奉仕」したという理由で、国家情報院職員4人のうち実際に刑が執行されるのは1人にとどまり、事案の深刻性に較べて処罰が軽すぎるという声も出ている。

前例無き証拠ねつ造「罪責非常に重い」としつつも…

 事件の骨格は、2006年5月末~6月初めにかけユ・ウソン氏が北朝鮮からスパイの指令を受けたという公訴事実につじつまを合わせるため、国家情報院が中国公文書4件と駐瀋陽総領事館領事事実確認書2件を偽造したということだ。 ユ氏の妹であるユ・ガリョン氏が国家情報院及び検察の調査で「兄はスパイ」と言った陳述を1審法廷で覆したために無罪が宣告されると、追い詰められた国家情報院は控訴審で有罪判決を出させるために証拠をねつ造したことが明らかになった。 ユ氏は2006年5月27日に北朝鮮で母親の三回忌を行って中国に出国したが、国家情報院はその日に再び北朝鮮へ入国し6月10日まで留まりスパイ指令を受けたとし、それに符合するよう証拠をねつ造した。

 今回の事件は韓国最高の情報機関が中国政府の公文書を偽造したものを証拠として裁判所に相次いで出したという点で、司法体系をもてあそんだことはもちろん、外交問題にまで飛び火した。 裁判所は28日の宣告公判で「刑事司法機能を深刻に妨害し、在外公館の公文書の真実性に関する公共の信用に悪影響を及ぼした」と明らかにした。

 だが、1審結果で実刑が執行される国家情報院職員は犯行を最も積極的に主導したと名指しされたキム・ポヒョン課長のみだ。 直接の上層部ラインであるイ・ジェユン対共捜査処長は実刑を宣告されながらも防御権保障などを理由に法廷拘束を免れた。 他の二人は執行猶予を宣告された。 反面、国家情報院の指示で中国の公文書を偽造した中国同胞二人には実刑が宣告された。 裁判所は、国家情報院職員の「罪責が非常に重い」とし、犯行を否認したうえに反省もしていないと指摘した。 しかし「国家安保守護の一翼を担うなど、国家と国民のために奉仕」してきたという理由などで執行猶予を宣告した。

 国家情報院職員は裁判の過程で証拠をねつ造していないとか、証拠がねつ造されたとすれば、それは協力者らの過ちだと弁解した。 証拠ねつ造に数千万ウォンを使っていた事実も裁判の過程で明らかになった。

 仮にユ氏の弁護団が積極的に対応しなかったとすれば、ユ氏はねつ造された証拠を根拠に法定最高刑が死刑であるスパイ罪で有罪を宣告されることもありえた。 民主社会のための弁護士会などは、国家情報院職員が誤りに相応する罰を受けるためには、スパイ罪と同じ刑量で処罰できる国家保安法の無辜・ねつ造容疑を適用しなければならないと主張したが、検察は受け入れなかった。 これに先んじた捜査で、検察は国家情報院上層部ラインは関与の事実があきらかにならなかったという理由で処罰対象から除外した。 検察はねつ造文書を裁判所に提出した検事3人に停職1か月または、減給1か月の処分を下すに終わった。

 ユ氏の弁護団はこの日出した声明で「法治国家としては想像すらできない証拠偽造を行い、国家の基本を揺るがした被告人の犯行に比べてあまりに軽微な刑が宣告された」と批判した。

■「不法対共捜査の慣行を根絶しなければ」

 今回の事件を契機に違法・脱法的な対共捜査の慣行に対する牽制装置を用意しなければならないという声が高い。 国家情報院はユ氏の事件で中国の公文書を偽造したのみならず、種々の違法捜査慣行を露呈した。 ユ氏事件の1審で彼が中国で撮った写真を北朝鮮で撮ったものと主張したが、嘘であることが露見した。 また、ユ氏の妹ユ・ガリョ氏を合同尋問センターで調査している間、弁護人との面会や書信の交換を阻んだ。 裁判所はこれに関して、弁護人が出した準抗告を受け入れ「ユ・ガリョ氏は長期間外部と全く連絡を取ることができず独房で調査を受け、国家情報院から『兄さんが処罰を受けて出てくれば一緒に韓国で暮らせるようにする』という話を聞いた。 心理的不安と重圧の中で実の兄のために継続調査に応じた可能性を排除できない」と明らかにした。

 “直派スパイ”として知らされた北朝鮮脱出者ホン氏(41)の事件でも、先月1審で違法な捜査方式を理由に無罪が宣告された。 裁判所は検察が陳述拒否権と弁護人助力権を形式的に知らせただけで、陳述を拒否しても不利益を受けないとか陳述が法廷で有罪の証拠として使われることがあるという内容をきちんと説明しなかったと明らかにした。

 オ・ドンソク亜洲大法学専門大学院教授は「国家情報院がスパイ捜査の過程で、単純に司法手続きに違反しただけでなく、不法な方式で捜査してきた慣行がむしろ国家安保を脅かす結果を産んでいる」と話した。

キム・ソンシク、イ・ギョンミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/661902.html 韓国語原文入力:2014/10/28 21:34
訳J.S(2389字)

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