「西北青年団再建準備委員会」を自任する極右団体が、ソウル広場に設置された“黄色いリボン”を撤去しようとしていた事実が知らされ、彼らが再建しようとしている“西北青年会”(略称 西青)に対する関心が高まっている。 西北青年会とはどんな組織で、このような極右団体に対処するためにはどうすればいいのだろうか?
■ 西北青年会はいつ、なぜ結成されたか?
西北青年会は解放後に38度線を越えた西北地方の青年たちを中心に、1946年11月30日にソウルで結成された極右反共団体だ。 彼らは主に地主、キリスト教系要人、民族主義者や一部親日派など、北朝鮮の弾圧を避けて逃亡してきた若者たちだった。 彼らは綱領で、祖国の完全自主独立の戦取、均等社会の建設、世界平和への貢献などを前面に掲げた。 だが、彼らが主にしたことは、左翼勢力に対する“白色テロ”だった。
彼らは1947年の「三・一節」記念式を別々に行った左右両翼が、市街行進中に南大門で衝突した事件をはじめ、釜山劇場事件、朝鮮民主愛国青年同盟事務室占領事件、チョン・スボク検事暗殺事件などに関与した。
藤井たけし 成均館大学東アジア研究院研究室長は『韓国日報』とのインタビューで「西北青年会が正式名称だが、西北青年団という名称を使ったことを見れば、組織に対する正確な理解をせずに対共闘争という漠然としたイメージだけがあるようだ」として「セウォル号遺族をひっ捕えなければならないアカと規定して、反共フレームを露骨化するだろう」と話した。
■ 安斗煕も西北青年団の幹部だった
キム・サムン元独立記念館長は今年6月26日、白凡・金九(キム・グ)暗殺65周年に合わせて『安斗煕(アン・ドゥヒ)、その罪をどう見るか』(チェクポセ刊)を出した。 キム元館長は、安斗煕の人生と行跡を追い、金九暗殺の真実を追跡したが、その本によれば安斗煕は西北青年会幹部であった。
<キム元館長が整理した安斗煕の履歴はこうだ。 『1917年3月、新義州(シンウィジュ)から40里余り離れた平安北道龍川(ヨンチョン)郡の山奥の村で生まれた。 三菱など日帝企業らの製品を取り扱い金を儲け、新義州の豪商になった彼の父親は土地測量技師の資格を取った後、精米業に手を出してコメの軍納まで行い平安道で指折りの富豪になった。 父親のおかげで商業学校を出て、満州そして北京を放浪し放蕩な歳月を送った。その後、金融組合の書記も務めた。日本に留学したが、解放と共に進駐したソ連軍が財産を没収するや47年に単身で38度線を越え、北側出身の反共右派組織である西北青年会に入り、鍾路(チョンノ)支部総務にまで上がる。 陸軍士官学校8期生として入隊し、李承晩の私的組織と言われる親日・親米派の巣窟‘8・8クラブ’の精鋭要員に抜擢され、少尉任官の3か月余後に白凡金九を暗殺する。』>
(『ハンギョレ』 2014年7月22日付「白凡を殺した安斗煕は李承晩の下手人に過ぎない」 )
■ 済州4・3抗争時に住民虐殺
済州のインターネット新聞である『済州の声』に連載されている「キム・グァンフの4・3コラム」を見ると、西北青年会が“4・3抗争”で市民虐殺の先頭に立った場面が出てくる。「済州4・3事件真相究明および犠牲者の名誉回復に関する特別法(4・3特別法)」によれば、済州4・3事件は1947年3月1日を起点にし、1948年4月3日に発生した騒擾事態および1954年9月21日まで済州島で発生した武力衝突と鎮圧過程で住民たちが犠牲になった事件をいう。
<済州4・3抗争の勃発と展開過程で、西北青年会または西北青年団(西青)は“人間が果たしてどこまで残酷になりえるのか”を見せる。 1949年初当時、国防部長官シン・ソンモは「西北青年会員ら内地の人々が警察・商人・官吏などになり済州道民を困らせたので4・3暴動が起きたのだと思う」と話した。
西青は「我々は北側で共産党に追われてきた。アカは完全に種を絶やさなければならない」とし、済州島に入ってきた。 米軍政・李承晩などの執権勢力は“済州島虐殺”の最先鋒に西青を立てた。 彼らはソ連軍政によって迫害を受け、38度線を越えた地主勢力であり、そのトラウマゆえに反共主義者に変わった。 要するに政府の代わりに手を血に染める右派民兵隊であった。 軍と政府の高位職を掌握し、大邱(テグ)労働者ストライキ、保導連盟事件、居昌(コチャン)良民虐殺事件、済州4・3事件に介入して、20万~40万人以上の左派と疑われる民間人と非キリスト教徒を虐殺した。>
(『済州の声』2014年05月14日付「キム・グァンフの4・3コラム‐23‐西北青年団、済州島虐殺の最先鋒に立つ」 )
■ 他国での“白色テロ”は?
西北青年会の一連のテロは“白色テロ”(white terror)と呼ばれる。 白色テロは、政治的目的達成のために暗殺・破壊などを手段とするもので、左派による赤色テロ(Red Terror)と対極にある。
白色を使うのは、フランス革命中の1795年に王党派が革命派に報復した事件に由来する。 白色はフランス王国の象徴だったユリの色を意味する。 フランスで白色と言えば、王権や王党派を意味する色だった。
現代でも白色テロは終わっていない。 アメリカの悪名高い人種差別テロ団体であるKKK団が現代の代表的な白色テロ団体だ。 有色人を相手に暴力を行使するドイツのネオナチなども同じだ。
日本の「在日特権を許さない市民の会」(在特会)も白色テロ団体に挙げられる。 最近、在特会の嫌悪集会で日本東京にある“韓流通り”と呼ばれる新大久保の代表的韓食堂である「大使館」が先月15日を最後に営業を中断する事態も起きている。
<大使館が店を閉めた原因は、2010年頃から本格化した在日特権を許さない市民の会(在特会)等の反韓集会(ヘイト スピーチ)のためだ。 在特会らは東京の韓流通りと呼ばれる新大久保や秋葉原などを中心に2012年夏頃から反韓集会を始めた。 しかし、業者に最大の被害を与えたのは、集会が終わった後に行われたいわゆる“散歩”であった。 在特会会員らが集会後に散歩という名目で、韓流業者の店を回って悪口をいい看板などを足でけるなどして暴れまわったためだ。>
(『ハンギョレ』 2014年9月18日付「在特会嫌悪集会で消えゆく東京の韓流通り」)
■ 彼らの狂気にどう対処すべきなのか
韓国の「日刊ベスト貯蔵所」(イルベ)は、日本の在特会と双子のように似ている。 これまでオンライン空間だけで活動していた彼らが、最近はオフライン空間にまで出てきている。
イルベをはじめとする極右団体が白色テロを行う理由は何だろうか? ハン・グィヨン ハンギョレ社会政策研究所研究委員は「強者と権威主義に対する盲目的服従と、弱者に対する暴力性という側面でイルベ現象はファシズムと非常によく似ている」として「 “認められたい欲求”や “帰属感および親密感に対する強い渇望”がイルベの主要動機」と診断した。
<それでは、なぜ彼らはイルベをするのか? 結局、自分が受けた傷のためだろう。 強者と権威主義に対する盲目的服従と、弱者に対する暴力性という側面で、イルベ現象はファシズムと非常によく似ている。 エーリヒ・フロムはファシズムについて、孤独と無力感に耐えられない個人が強者に逃避するとし、ヴィルヘルム・ライヒは弱者には君臨しようとし強者には屈従しようとする大衆の権威主義的性格構造と説明したことがある。 20世紀初期、資本主義の独占化過程でドイツの中間階級大衆は没落して行き、彼らは傷ついた自尊心を強者に対する無限の服従と弱者に対する荒々しい暴力で補償を受けようとした。 弱者に対する暴力は傷ついた自尊心を治癒し、自身の存在を認められようとするための行動だったということだ。 犯罪心理学者ピョ・チャンウォン博士も“認められたい欲求’“や“帰属感および親密感に対する強い渇望“がイルベの主な動機だと説明したことがある。
韓国よりネット右翼事情が深刻な日本の状況は、イルベ現象を理解する上で示唆的だ。 日本のルポ作家安田浩一が書いた『ネットと愛国』によれば、在日特権を許さない市民の会(在特会)等の日本ネット右翼の存在理由もやはり認定欲望にある。「ぶっちゃけ、僕らって親からも世間からもたいして評価されていないじゃないですか。ところが活動する時、同志たちは必ず私を認めてくれました」という在特会会員の言葉がこれをよく示している。 やはり認定欲望が重要なのだ。 人間はただ生物学的・経済的存在ではない。 本当にお金さえあれば生きていけるのではない。 誰かから認められているという自尊感は生存の必須要素だ。>
(『ハンギョレ21』 2013年6月10日「イルベ、傷ついた彼らの認定欲望」)
それでは、彼らの狂気にどのように対処しなければならないのだろうか? 憎しみを溶かすのに魔法のような治療剤はない。 代わりに専門家たちは憎しみの原因と結果を先ず直視しろと言う。
<憎しみを溶かすのに魔法のような治療剤はない。憎しみの原因と結果を直視することが先だということが共通した意見だ。「一番最初にすべき事は、憎しみ、憎しみの対象である加害者、そして憎しみの結果に対して責任感を持つことだ。 私たちが憎しみの結果を認め、受け入れることができるならば、私たちは憎しみに対抗してそれをなくすことができる」。『私たちはなぜ敵になったのだろうか』の著者ロバート・スタンバーグはこのように書いた。 パク・ヘグァン教授は次のように提案した。「イルベのような若い世代は、特に5・18を他の人種、他の領土での事件のように受けとめています。 私たちの歴史の中で、私たちの領土の中で起きたことだということを喚起できる社会的反省が絶対に必要だ。歴史教育だけでなく、総体的に社会が若い世代に正義を教育する必要があります」。結局、憎しみという原始的感情を調節するのは、正義と合理という高等神経系の思考を通じてのみ可能だろう。 人間はその為に進化したのではないだろうか。>
(『ハンギョレ21」 2013年3月10日「嫌悪に満ちた君の言葉、それが人種主義だ」)