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教皇に祝福された障害者施設“コットンネ(花の村)”で人権逆行の現実

登録:2014-08-26 20:25 修正:2014-08-27 08:08
「収容と保護」ではなく「脱施設と自活」へ
忠清北道陰城のコットンネ(花の村)を訪れたフランシスコ教皇が16日午後、「希望の家」で生涯病床にあるオ・ミヒョン氏(23)の額に唇を付けている。陰城/写真共同取材団

25坪の部屋に2段ベッド24個がびっしり
“3か月の適応期間”は面会も電話も禁止
一部の障害者団体、教皇訪問に反対

政府の支援が不十分で自立も困難
「地域社会中心の政策が必要」との指摘も

 クォン・オジュン氏(42)は忠清北道(チュンチョンブット)陰城(オンソン)のコットンネで10年間暮らした。1996年に交通事故で頸骨を痛めたクォン氏は、肢体障害1級の判定を受けた。妹の勧めでコットンネという名の施設に“入所”した。入所後、クォン氏は2段ベッド24個がびっしり設置された82平方メートル(25坪)ほどの大きさの部屋で、ほとんど横になったまま過ごしたという。

食事時間は決まっていた。朝食は、午前5時30分、昼食は12時30分、夕食は午後4時30分だった。夜食はなかった。小売店が月に一度コットンネを訪ねて来る時にだけ、商品を買うことができた。

クォン氏は2011年に障害者自立支援センターの支援を受けて、コットンネを出た。クォン氏は「文字通り『こんなふうに生きて死にたくはない』という思いで、施設を出た」と語った。

 コットンネはローマ教皇の来韓日程の中で、唯一“論議”の対象になった所だ。1976年に建てられたコットンネには、障害者・高齢者患者など約5000人が暮らしている。この16日、同地を訪問した教皇が入所者たちに希望のメッセージを伝えたことを歓迎する声もあるが、“収容と保護”ではなく“脱施設を通しての自活”という障害者人権の流れに逆行する大規模な収容施設訪問を憂慮する声も少なくない。

 コットンネに代表される障害者収容施設は、これまで障害者福祉政策の一つの軸をなしてきた。昨年12月基準で、施設で暮らしている障害者は3万1152人だ。未登録施設まで考慮すれば、その数は大幅に増えることになる。しかし、“脱施設”を要求する障害者団体は、“自立不可能”を前提とした収容施設自体に否定的だ。 献身的に働く施設の勤務者たちですら、このような考えから自由ではないと障害者団体は指摘する。

 このため、施設から“脱出”したという人は多い。1999年に交通事故で首を痛め、肢体障害1級の判定を受けたチョ・ソンミ氏(33)も、コットンネに入った。生活は思いもしない方向に変わった。“適応期間”という理由で3か月間は外出も面会も、さらには公衆電話の使用さえも禁止された。適応期間が過ぎてもさほど変わらなかったという。50平方メートル(15坪)余りの部屋で13人がほとんど横になってのみ暮らした。

チョ氏は先に施設を出た人の紹介で、障害者自立支援センターを知った。そこの助けを得て8年ぶりにコットンネから出て、現在は自立生活家庭で暮らしている。朝8時から夜11時まで、活動補助人の支援を受けて自活の努力を続けている。

 しかし、脱施設や自活をするには韓国の障害者福祉水準は極めて劣悪だ。障害者の自立に最も重要な住居支援と初期定着金支援は劣悪だ。保健福祉部が運営する自活体験ホームは全国に197ヵ所、共同生活家庭は685か所に過ぎない。現在、共同生活家庭で生活している障害者は2766人という水準だ。障害者のための活動補助人制度支援も、お話にならないほど足りない状況だ。保健福祉部の資料を見ると、昨年末基準で活動支援サービスを受ける資格となる障害等級1・2級の障害者は36万4507人だが、このうち実際に活動支援を受けた人は6万435人(16%)に過ぎない。

 公益人権法財団「共感」のヨム・ヒョングク弁護士は20日、「政府の障害者福祉政策の方向が、未だに障害者施設中心の福祉から抜け出せずにいる。障害者たちが地域社会と統合され、共生していくためには、自立ホームなどの小規模施設により多くの予算を与える方向に政策が転換されなければならない」と指摘した。「全国障害者差別撤廃連帯」のナム・ビョンジュン政策室長は、「韓国は自立よりは保護を中心に政策が構成されている。自立しようとしても、むしろ重症障害者でなければ活動支援を申請することができない。そのため、施設でも『そんな身体でどうやって生活するのか』と言って、脱施設を止めることが繰り返されている。施設に予算を与えるのではなく、地域社会中心に政策を転換しなければならない」と話した。

ソ・ヨンジ記者 yj@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/652120.html 韓国語原文入力:2014/08/20 22:14
訳A.K(2006字)

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