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[土曜版/ ニュース分析] 米軍慰安婦、私たちは日本右翼の妄言に堂々と答えられるか

登録:2014-08-21 10:41 修正:2014-08-21 15:50
ユ・スンフィ議員インタビュー
ユ・スンフィ新政治民主連合議員は去年の国政監査で、朴正煕元大統領が決栽した基地村浄化対策文書を公開し、基地村被害女性に対する国家の責任を国会の場で初めて問題提起した。先月30日、ソウル汝矣島(ヨイド)の国会議員会館執務室でインタビューをしているユ・スンフィ議員。シン・ソヨン記者 viator@hani.co.kr

 先月5日、ハンギョレは米軍慰安婦関連問題を集中照明しました。基地村女性の人権侵害問題に対して新たな証言と資料により世論を喚起させたとの評価を受けました。国会で真相糾明、及び被害支援特別法制定の動きが始まりました。恥ずかしい歴史を反省しなければ日本右翼たちと同じではないかという自省論が起きています。特別法を主張するユ・スンフィ議員に会いました。

 ハンギョレは先月5日、「米軍基地村被害女性の証言」を報道した。韓国社会が努めて目を閉じて来た悲しい現代史の記録だった。

 1960~80年代に基地村で働いた性売買女性のかなり多くが、人身売買されて来た未成年者であって、国家はそれを放置していた。基地村一帯を特別区域に指定して、その地の米軍人に限って性売買を許容した。甚だしくは女性たちを「慰安婦」と呼称して「ドルを稼ぐ愛国者」と言うなど精神教育を行った。性病にかかった女性は収容所に閉じこめて強制的に治療した。国民の人権は眼中になく、米軍の性的欲求を安全に満たしてやることにのみ国家は集中した。

 このような事実は被害者の証言だけでなく記録で確認され始めたという点で、静かな波紋が生まれた。米軍慰安施設の数を面(日本の村にあたる行政単位)別に計画した京畿道庁の起案紙と、慰安施設集団収容を拒否すれば処罰を可能にする計画を立てた仁川市などの記録、「慰安婦女性ペニシリン過多投与によるショック事故が発生しても医者に兔罪符を与える」との法務部長官公文書などがハンギョレ報道で公開された。

セウォル号があきれた惨事であるように
同じ理由で基地村女性に注目
未成年の子供達が性暴行被害を
受けているのに救助しなかった
真相調査特別法が必要だ

被害女性たちが年老いていく
一度もまともに人間としての待遇を
受けられなかった方々に
少なくとも亡くなる前に
尊重された思いを持てるように

1990年代から「慰安婦」と呼ばなくなった理由

 今、白髪の老人になりつつある基地村性売買の被害女性122人は、ソウル中央地方裁判所に国家を相手に被害補償を要求する訴状を提出した。今月末に韓国法務部が訴状提出に対する答弁書を裁判所に提出すれば、直ちに審議期日が決まり裁判所で攻防が繰り広げられるだろう。

 韓国国会では一部の議員を中心に真相調査の動きが始まった。ユ・スンフィ、キム・グァンジン 新政治民主連合議員らは、特別法(在韓米軍基地村性売買被害真相糾明及び支援に関する特別法)を制定して旧基地村女性の問題を解決しなければならないと主張している。

 ハンギョレは先月30日、ユ・スンフィ議員(国会女性家族委員会委員長)に会った。ユ議員は昨年の国政監査で、1977年に朴正煕大統領が親筆で決栽した「基地村浄化対策」文書を暴露し、国家が基地村女性たちを直・間接的に管理したことを指摘した。ユ議員は今回ハンギョレとのインタビューで「ドイツのように国家が犯した恥かしい過去を反省すれば、私たちも未来に向かって進むことができる」と指摘した。

-国家が基地村女性問題に関心を持たねばならない理由は何か?

「セウォル号事件に私たちが注目する理由は、このあきれた惨事、助けられた筈なのに救助できなかった理由、そういう疑問のためだ。同じ理由で基地村女性の被害に注目するようになった。軍基地村に売られた女性たち、それも未成年の子供たちが性暴行被害を受けている間に国家は救助しなかった。基地村があれば、そこで性売買をする人々がいるのは当然で、それを仕方ないと思ってはいけない。米軍部隊が駐屯する過程で韓国の女性たちが結局、性のおもちゃとして犠牲になったのだ」

-基地村に自発的に入っていった女性も多い。全員を被害者と見ることはできないのではないか?

「どの様な経緯で流れて行ったのかを把握することはもちろん重要だ。人身売買された女性もいて、そうでない女性もいるでしょう。ただ、キム・ジョンジャさん(ハンギョレを通じて証言に立った基地村人身売買被害女性。ハンギョレ7月5日付 3.4面)の事例は、一部ではなく広範囲だ。かなり多くの女性が人身売買や就業詐欺被害に遭って基地村に入って行った。脱出しようにも脱出できないくびきに嵌まっていた。そこから脱出しようとする女性を救うべき警察は、抱え主と癒着して責任を放棄した。

さらに大きな問題は、そこで国家が女性たちに「君たちは外貨を稼ぐ愛国者だ」との精神教育をしたということだ。国民の人権と生命を保護しなければならない義務がある一国の政府が、どうすれば米軍に性を売ることは正当だと訓戒できるのだろうか。自発的に基地村に入って行った女性であっても、そこにはいられないようにすべきだった」

-他の集娼村の性売買女性たちと米軍慰安婦女性たちにはどの様な違いがあるか?

「米軍基地村は他の集娼村とは性格が異なる。米軍基地周辺に自然発生的にできたのではなく、国家が厳然たる淪落行為防止法の存在にも関わらず性売買許可区域を作り、そこを管理して育成した。そこには歴史的・社会的背景がある。韓-米軍事同盟を堅固に維持するために国家が必要に応じて管理したわけだ。それで当時、米軍基地村で働く女性たちを政府が公的に(軍)慰安婦と呼称したのだ。政府記録と地方条例などでは基地村女性たちを慰安婦という行政用語で呼称してきた」

-90年代以後、いつの間にかに慰安婦という用語は日本軍慰安婦被害者を指す用語としてのみ使われ、基地村女性は慰安婦と呼ばなくなった。

「意図的に潤色されたのではないかと思う。基地村女性を米軍慰安婦と呼称し続けていたら、この女性たちの問題は個人的問題ではなく、韓米間の特殊な状況で発生した構造的問題として認識されるようになる。そこで慰安婦という言葉を脱色して、彼女たちを基地村女性とだけ呼び、私人間の性売買問題に潤色したのではないかと思う」

「日本軍慰安婦所為」の拡大を用心深く提案

-去年の国政監査で朴正煕元大統領に親筆決裁された「基地村浄化対策」文書を公開して話題になった。

「本来は2012年の国政監査で公開しようと思っていた文書だ。朴槿恵(当時)大統領候補は朴正煕元大統領の娘で、少なくとも女性大統領候補として胸が痛む私たちの過去の歴史を認識するよう願う思いがあった。しかし当時、ハンナラ党がその文書だけは公開しないでほしいと頼んだ。大統領選挙を控えて政治争点化しようとしているという誤解を受けかねないので、その翌年に公開することになったのだ」

-基地村女性問題は人権問題としてアプローチすべきで、国家暴力の問題として接近するのは行きすぎだという主張もある。

「基地村内での性売買被害は、私人と私人との間に起こった人権侵害の水準を越えている。国家が基地村を政権の維持に必要な道具として活用したので、その様な面から見た場合、基地村問題の背後には国家権力が隠れている。たまに偶然で起きる人権侵害とは性格が異なる」

-それにも関わらず、米軍慰安婦問題と日本軍慰安婦問題は明らかに異なるのではないか?

「異なる。日本軍慰安婦問題は戦時下で起こったもので、米軍慰安婦問題は休戦下で起こったものだ。慰安婦徴集と慰安所運営に対する国家の介入水準も異なる。米軍慰安婦問題ははるかに複雑だ。

しかし本質的には同じ部分がある。日本軍慰安婦は日本が大陸侵略戦争をする過程で形成されたもので、米軍慰安婦は米軍が軍事力を世界的に拡張する過程で形成された。慰安所設置と運営に国家が介入した点も同じだ」

-朴正煕政権が米軍慰安婦被害者問題の解決に積極的に取り組まなかったと見るか?それとも当時は警察力が不足しており仕方なかったことと見るのか?

「当時、淪落行為防止法があったが、特別区域を設定して基地村を運営したのは、この程度の犠牲は米軍駐留と政権の維持のために甘受せざるをえないと判断したものと見なければならない。被害者たちを放置したことが意図的だったか、結果的に放置することになったのかは、歴史的文献と証言からさらに見つけ出さなければならない課題だ。真相糾明をしなければならない」

-米軍慰安婦被害女性たちに国家がどの程度の水準の責任を負わねばならないか?

「ひとまず、国家が責任を認める宣言を出さなければならない。現在、被害女性たちが高齢になってきている。少なくとも亡くなる前に人権を尊重されているとの思いを持てるようにしなければならない。一回たりとも人間らしい待遇を受けられなかった方々だ。大韓民国で生まれた国民なのに、国家が自分を捨てたのではないという社会的人格として慰労を受けられるようにすることが重要だ。また、彼女たちは現在病気も多く、住居状態も良くない所に住んでいる。最小限の人間的な生計が可能になるように支援しなければならない。

-国会ではどの様な努力をするのか?

「被害者たちが国家を相手に行政訴訟をしているが、そうであるならば真相糾明が優先されなければならない。国会がその仕事を助けなければならない。被害者たちの証言を国家が直接収集しなければならない。今は市民団体がこの仕事を引き受けているが、国家がすべきことだ。

国会に「日本軍慰安婦及び戦時下での女性性売買関連小委員会」があり、私が米軍慰安婦問題にまで拡大して扱ってはどうかと提案している。まだそれほど活発ではないが、適切な時点に国会でこの問題が正式議題として扱われなければならない」

-今年の国政監査でもこの問題を扱うのか?

「一段階ずつ、この問題を発展させて行くつもりだ。法案を発議しておいて腰砕けになる場合が多いが、最後まで続けるつもりだ」

民族的次元以前に人権の問題

 キム・グァンジン議員を中心に「在韓米軍基地村性売買被害真相糾明及び支援に関する特別法案」が先月7日発議された。国会国防委員会で間もなく法案審査が行われる予定だ。

 国務総理所属の「基地村性売買被害真相糾明及び被害者支援委員会」を設置することを主要内容とし、委員長は国務総理が引き受け、委員は国防部次官と関係公務員、及び被害者代表などとすることになっている。委員会の構成後、4年以内に在韓米軍基地村性売買被害事件に関連する資料の収集と分析を完了し、委員会活動終了後に真相調査報告書を作成しなければならない。また、性売買被害者たちに対して国家が寝食提供など各種支援を行う内容を記している。法施行日から30日以内に政府は被害申告を受け付けるための申告窓口を運営するよう法案が構成されている。

-米軍慰安婦問題に注目が集まれば、日本軍慰安婦問題の責任を回避しようとしている日本の右翼に悪用される恐れもある。

「もちろん、その様なこともあり得る。去年、国政監査でこのような問題を申し立てた時に心配したのもそれだ。日本の右翼が『お前たちも反省しないのに、なぜ我々にだけそう言うのか』と主張することもあり得る。しかし、そうだからこそ韓国政府が立ち上がって米軍慰安婦問題について真相を調査し反省する姿を示さなければならない。それでこそ、日本の右翼に対して私たちが堂々と日本軍慰安婦問題に対する反省を要求できる」

-最後に言いたいことがあれば?

「日本軍慰安婦問題は日本が犯した蛮行なので民族的次元で怒りが容易に拡散した。しかし、慰安婦問題は民族的次元以前に人権の問題だ。米軍慰安婦問題も同じく普遍的人権の価値の側面から関心を傾けてもらいたいと思う」

ホ・ジェヒョン記者 catalunia@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/SERIES/397/651360.html 韓国語原文入力:2014/08/17 11:47
訳M.S(5043字)

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