10日朝7時48分、パク・チャングォン(53)氏はソウル恩平区(ウンピョング)甑山洞(チュンサンドン)のデジタルメディアシティ駅で、汶山(ムンサン)行きの京義(キョンウィ)線列車に乗った。一駅だけ行けば前日まで働いていたKORAIL水色(スセク)車両事業所だが、パク氏は水色駅では降りなかった。同日付で、京畿道坡州市(キョンギド・パジュシ) 汶山(ムンサン)車両事業所に“強制転出”させられたためだ。パク氏は「1988年に入社して、今までずっと水色車両事業所で働いた。あの時の初出勤は、ときめきと心配で胸が高鳴っていたけれども、今日は心配ばかりだ」と語った。彼は、KORAILが“循環異動及び定期人事交流”を名分にこの日異動発令を受けた726人の一人だ。 昨年、政府の水西(スソ)発高速鉄道(KTX)の子会社設立を鉄道民営化の信号弾と見て、23日間のストに参加した彼は、“循環異動”を希望も申請もしたことがない。
セマウル号・ムグンファ号の機関車だけを26年間整備してきたベテラン技術者のパク氏は、この日から京義線の電動列車を担当する“新参の整備士”になった。彼は2週間、新たに教育を受けなければならない。慣れない境に適応することと同じくらい“安全問題”が心配だ。「一つの分野の職人になるためには10年以上かかる。 列車は人の手で整備するのだから、勤務期間が長いほどノウハウが蓄積される。一日に多くの人が乗る列車の整備士を急に替えれば、技術力が落ちて事故が起きるかもしれないのに…。」
入社後ずっと
水色車両事業所で働いた
ムグンファ号・セマウル号専門
図面なしでも整備できる
突然、汶山車両事業所に発令
京義線電動列車を整備しろという
パク氏は異動を申請したこともない
彼を待っていたのは2週間の新参教育
セマウル号と電動車は完全に別の分野
「市民の安全には関心がないという意味」
「事故が起きるかもしれないのに・・・」
パク氏の出勤の足はとても重い
一般の人の目には同じように見えようが、高速鉄道(KTX)、一般列車(セマウル、ムグンファ号)、広域列車(電車・地下鉄)の設計・年式・運行方式はまったく異なる。パク・チャングォン氏が担当してきた一般列車の機関車は、列車を走らせるためのエンジンを中心に整備する。しかし、新たに任される京義線電動車は動力と客車が一つになっており、重点整備対象も乗降ドア、放送装置、暖房施設などだ。 ベテラン機関士でもある<社会公共研究所>のパク・フンス 列車担当客員研究員は「20年以上働いて蓄積された経験と専門性によって、図面を見なくてもムグンファ・セマウル号の機関車が整備できる人々を、完全に異なる分野に送るのは、非効率的な上に、市民の安全には関心がないということを意味する」と指摘した。
KORAILは“循環異動”の理由として“人材の不均衡解消”を掲げているが、パク・チャングォン氏の考えは違う。今回の配置転換は、1994年の<全国機関車協議会>のストと2000年の鉄道労組委員長直接選挙制確保のための鉄道共同闘争本部の闘い以降、初めて実行される大規模な異動だ。過去の配転は“懲戒”次元で行われ、強制転出された職員が心的ストレスに耐え切れず、自殺するという状況にまで至った。2003年に“御用組合”を追い出して民主化された鉄道労組が結んだ団体協約に「懲戒次元の非縁故地配転禁止」を明示したのも、このような悪い先例があったからだ。「問題が多くて強制転出ができないように作った条項なのに、過去に戻ってしまったようだ。スト前から、ストに参加すれば強制転出になるといううわさが出ていた。鉄道労組が民営化に反対するので、組合員の結束力を弱めるために強制転出を実施するものとしか考えられない。」パク・チャングォン氏は白く霞んだ春の空を眺めながらこう言った。
会社に裏切られたという思いで、彼のこの日の出勤の足は非常に重かった。朝9時、汶山車両事業所2階の会議室に着いたパク氏など転出者15人の耳に、一人の組合員の携帯電話からニュース放送が流れた。「鉄道労組組合員2名が、水色駅の45m鉄塔に登って高空籠城を行なっています…。」
キム・ミンギョン記者 salmat@hani.co.kr