▲保健福祉部は6月8日から全国1万2千余のPC房が全面禁煙区域だと発表しました。 報道資料にはこのように書かれています。 "喫煙者を不便にしようというのではなく、非喫煙者を保護するための政策です。 PC房が大衆に一層親しめる公衆利用施設に変貌する契機となるでしょう。"
ところでPC房事業主のため息は深まっています。 彼らは言います。 "誰がタバコを止めさせるんですか。 それでもPC房にちょっと来て見てから政策を作って下さい。"
永登浦(ヨンドンポ)駅近隣のC PC房
喫煙区域内の80席は満席
禁煙区域内の60席は空いていた
出入り口を開けて入ってきた二人は
喫煙区域に席が無いのを見て
すぐに出て行ってしまった
"家でも全部できるのに
あえてPC房に来る理由は
気楽にゲームを楽しみたいからでしょ
喫煙客比率が70~80%なのに
禁煙ですと言えばどうして我慢しますか"
霧雨が舞い昼間の最高気温が27度まで上がった去る11日の昼下がり、ソウル、永登浦(ヨンドンポ)市場を横切って到着した永登浦駅近隣のC PC房の室内は涼しかった。 建物の2階にあるC PC房は全体空間の半分を‘喫煙区域’に指定していた。 喫煙区域と禁煙区域の境界には空気の移動を遮断するエアカーテンが、喫煙区域には別途の通風装置が用意されていた。 PC房の事業主であるキム・ドンヨン(40)氏は 「このように通風しなければタバコの煙がすぐ混じる」と説明した。
学生たちの下校時間、会社員の退勤時間と重なったためか、お客さんは多いほうだった。 喫煙区域内の80席は‘満席’であったし、禁煙区域内の60席は10席程度だけが埋まっていた。 2人のお客さんがPC房の出入り口を開けて入ってきた。 喫煙区域に席がないという事実を確認すると 「今度きますね」と言って出ていった。 キム氏が話した。
"2006年頃に区庁からPC房の営業許可を得るためには売場の半分以上を禁煙区域にしなければなりませんでした。 区庁でも一年に1,2回ずつ禁煙区域をきちんと分離しているか取り締まりに来ます。 私たちの売場は見た通り商圏のまん中にあって中高校生などはほとんど来ません。 喫煙客が全体の80%程度なんです。PC房の商売は午後6時から10時までがピークタイムですね。禁煙区域側に席ががらんと空いていてもしょうがありません。"
なぜ彼らはPC房でタバコを吸うのか
首をかしげた。 保健福祉部は去る8日から全国すべてのPC房を一斉禁煙区域に指定する国民健康増進法改正案を施行すると発表した。 PC房に禁煙区域、喫煙区域が別に有ってはならないという意味だ。 C PC房の入口にも「PC房は禁煙施設です」という張り紙が貼られていた。 現実は違った。 C PC房でも入口の禁煙張り紙のすぐ向い側に灰皿が用意されていた。 キム氏に福祉部の‘PC房一斉禁煙政策’について知っているかと尋ねた。
"知っています。 ところで今は啓蒙期間なので大丈夫なのではないですか? 実際に取り締まりをして過怠金を賦課するのか、よく分かりません。 お客さんが頑としてタバコを吸えば、止めなければならないのか、それとも灰皿さえ提供しなければ事業主は責任を免じられるのかも分かりませんね。 それで灰皿を提供しないことにしようとしましたが、そうすればタバコの灰や吸殻をどこにでも捨てるので、それもできません。」15年間PC房を運営してきたキム氏は、この間多くの危機を体験したが、今が最も難しい時期だと話した。 特に本格的な喫煙取り締まりが始まれば、事業を続けられるか心配だと話した。 このような憂慮を吐露する人々はキム氏だけではなかった。 去る8日以後に訪ねたソウル市内10ヶ所のPC房事業主は「全面禁煙化が最も恐ろしい」と異口同音に話した。 非喫煙者であり‘ノンゲーマー’(ゲームをしない人)の記者には理解が難しかった。 ‘ゲームをしながら絶対にタバコを吸わなければならないのか’からして疑問だった。 11日C PC房の喫煙区域でゲームをしているカップルに近付いて尋ねた。 25才の同年齢であるチャン・某氏とナ・某氏は「タバコが吸えなければPC房に来る理由がない」と言い切った。 女性のナ氏が先に話した。
"女が外でタバコを吸うことも嫌がられるでしょう。家でタバコを吸いながらゲームをするなんて当然思いもよりません。 私は平日に退勤してストレス解消をかねてこのようにPC房に来るんですが。 こういうことも出来ないように阻むなんてちょっと強圧的な感じがします。" 隣に座っていたチャン氏が相槌を打った。 「エライさんたちはPC房に来てストレス解消しないからでしょうね。 両親が汝矣島(ヨイド)の国会前で韓国式食堂をしています。 私は20才の時からそこで両親の仕事の手伝いをしていて、仕事が終わるとこのようにストレス解消をかねてPC房に来ます。 食堂は今年の初めから禁煙ですが、唯一守らない人が国会議員です。 バッチを付けてTVで見た顔の方が私たちの食堂にくれば灰皿をくれと言うし、禁煙だと言えば腹を立ててそれでも頑としてタバコを吸います。」
それでなくとも廃業が多いのに…PC房に大打撃
PC房全面禁煙政策が6月8日から施行されているものの、直接訪ねて行ったソウル市内10ヶのPC房で禁煙をきちんと実践している所はただの一ヶ所もなかった。 麻浦区(マポグ)孔徳洞(コンドクトン)でPC房を営むハン・ギョンヒ(36)氏は「お客さんに禁煙だと話はするが、守らないでも厳しく言うことはできない」と話した。 PC房の中でタバコを吸う大多数の人々もPC房禁煙政策について知っていた。 会社員チョ・某(24)氏は「オンラインゲームの特徴がユーザーどうし互いに対話をたくさんするということだ。 PC房でタバコを吸えないこともゲームをする人々の間に即座に広がった」と伝えた。 だが、今のところ人々は変わらずタバコを吸っている。 チョ氏は「ゲームを一緒にする友人たちは皆、今は顔色を見ているけれど、タバコを吸えなければPC房に来ないという雰囲気」と話した。 帽子を目深にかぶってPC房の隈でゲームをしていたチェ・某(35)氏は「PC房でタバコを吸えなければ中間でゲームを止めなければならない。 そうなればそこでゲームをやめる」と、モニターを凝視したまま話した。
禁煙政策の対象になる業者はPC房だけではない。 食堂やビヤホール、カフェなどでも以前のように自由な喫煙は不可能だ。 それではPC房が唯一別の状況に置かれているのか。 PC房事業主の集いである韓国インターネット文化コンテンツ協同組合のチェ・スンジェ代表は 「PC房は最近恐ろしい速度で廃業している。 このような状況で喫煙取り締まりまで強化されれば、打撃が本当に大きい」と吐露した。
韓国コンテンツ振興院が発刊した<2012大韓民国ゲーム白書>を見れば、全国のPC房数は2002年から2009年までは2万~2万2000店余りを維持してきた。 だが、2009年から急減して2万1547店から2011年には1万5817店で減り、業界の推算では現在は1万2000店余りに過ぎない。 4年で1万店がなくなったわけだ。 チェ代表は切迫感を訴えた。
"この頃は自宅でインターネット、ゲーム全て可能なのに、あえてPC房に来る理由はちょっと気楽にゲームを楽しみたいからです。 喫煙客比率が全体の70~80%に達します。 このような状況で突然に全面禁煙を実施すれば、PC房がどうして持ちこたえられますか。 自営業者の廃業は、そのまま生計極貧層への墜落なんです。政府が最近1~2年で5000の店が廃業している業種を全く考慮していないということです。"
ソウル江東区(カンドング)城内洞(ソンネドン)でS PC房を営むソン・ヨンテ氏は近隣のPC房4ヶ所が店を閉める状況を見守った。 5ヶのPC房が競争していた半径300メートル以内の商圏で、わずか2年で4店が廃業した。 「2011年末から2ヶのPC房が先に門を閉めましたが、残った店の状況は良くはなりませんでした。むしろ残った2つのPC房が低料金で激しく競争して結局は時間当り利用料を500ウォンまで下げましたよ。 そのように出血競争をして2つとも店を閉めました。 私たちは最後まで1時間1000ウォンで頑張りました。 商売にならなくても、これ以上料金を削れば残るものがありませんからね。」 城東区(ソンドング)鷹峰洞(ウンボンドン)でS PC房を運営するイ・チョンヒ(40)氏もやはり、あるアパート商圏で4店のPC房と競争して唯一生き残った。
"3~4年前に禁煙区域を区分しなければならないと言うので、遮断膜、通風施設、冷房機、エアカーテンなどで700万ウォン以上かけたが、今は全部無駄になりました。 あえて室内でタバコを吸うには、室内喫煙室を設置しなければなりません。今座席が36席しかないのに喫煙室を作るには席を4~5ヶは抜かなければならないし、設置費用も馬鹿になりません。」 PC房に対する喫煙規制が始まった時期は2003年だが、地方自治体で本格的に禁煙区域設置を強制した時期は2006年以後からだとPC房事業主らは伝えた。 この時期からPC房は禁煙区域と喫煙区域を分離し、通風・換気設備を備え始めた。 チェ・スンジェ代表は「私たちもカフェのように喫煙区域を禁煙区域から完全に分離したかったが、消防法に抵触すると言って、出入り口より高いエアカーテンを設置しました。 区域を分けろと言って大金を投資したのに、再びこのように政策を変えれば自営業者はどうすればいいのかわからない」と困難を吐露した。
福祉部は反対に不完全な区域区分を指摘した。 福祉部健康増進課のソン・ミョンギュン事務官は「PC房はカフェとは違い喫煙区域と禁煙区域が連結されていて、間接喫煙の被害が大きい。 反面、カフェは喫煙区域をガラスの壁と出入り口で完全に密閉しているし、喫煙施設を一気になくすのには無理があると判断した」と話した。 結局、保健福祉部は施行規則に例外条項を作り、2015年までカフェ喫煙室での営業活動を許容した。 喫煙室を作っても座席を置くことはできないPC房とは差があるわけだ。 「PC房内の禁煙区域と喫煙区域の区分を徹底することが対案になりえるか」という質問に、ソン事務官は 「一つの空間を禁煙区域と喫煙区域に分けることより、全面禁煙化を実施することが間接喫煙の被害を防ぐ持続可能な方法であり世界的な傾向」と答えた。
カラオケ・撞球場など他の業者との公平性
PC房事業主はカフェ以外にもカラオケ、撞球場との公平性を指摘した。 城内洞(ソンネドン)のPC房事業主ソン氏は「あえて青少年を保護するために禁煙を実施するというならば、なぜ撞球場とカラオケは例外なのか」と疑問を提起した。 保健福祉部のソン事務官は「禁煙関連法令を作りながら撞球場について検討したが、法体系上の問題によって禁煙区域に指定されなかったし、カラオケについてはまともに議論されなかった。 禁煙区域を指定する中で様々な業種と施設を総合的に検討出来なかった側面があるのは事実だ」と話した。
もちろんPC房全面禁煙化で得られる利益もある。 青少年を含め非喫煙者などを間接喫煙から保護でき、非喫煙者らがPC房を訪れる契機になることもありうる。 麻浦区(マポグ)孔徳洞(コンドクトン)のあるPC房にいた中学校2年生キム・キュミン(14)生徒は「禁煙区域に座っているのでタバコの臭いが激しくはないけれど、服に臭いがしみこんで、家に帰れば母親に怒られる」と話した。 ソン事務官は「PC房は青少年がしばしば利用する施設であり、間接喫煙の被害が大きいところであったし、禁煙化を実施してほしいという嘆願が多かった」と明らかにした。
問題は政策を実施する主体と影響を受ける人々の間の乖離だ。 一部のPC房事業主は「高位公職者でさえまともに法を守っていない」と指摘した。 最近の報道を見れば、大統領府高位要人でさえ国民健康増進法に違反してタバコを吸っている。 <中央日報>は去る6月4日、大統領府の外交安保首長であるナム・ジェジュン国家情報院長、キム・ジャンス大統領府国家安保室長、リュ・ギルチェ統一部長官が会議場の別室を喫煙場所として活用していると報道した。 彼らが外交安保関係長官会議のたびに別室でタバコを吸ってアイディアを交換するや、最近では禁煙派のキム・クァンジン国防部長官も加勢したとこのメディアは報道した。 問題は彼らがタバコを吸った大統領府会議場別室は、厳格に禁煙区域だという点だ。 国民健康増進法9条は‘公衆が利用する施設の所有者・占有者・管理者は、施設全体を禁煙区域に指定’するよう定めており、この法の施行規則は別途の密閉された空間と喚起施設を備えた空間だけを喫煙室として認定している。 大統領府のこの別室はこのような喫煙室に該当しない。
零細なPC房を営む事業主は政策の趣旨には共感しているが、現実や代案に対する考慮が足りないと話した。 IMF救済金融事態で失職した後、16年にわたり鷹峰洞(ウンボンドン)でPC房を営んできたイ・チョンヒ氏は深いため息を吐いた。
"私が反対するのは禁煙政策ではありません。 ただ、この政策を作った公務員たちがPC房に直接来てみたのか疑問です。 PC房全面禁煙化以後、お客さんが20~30%減りました。 一日に12時間以上仕事をしても月に150万ウォンを家に持っていくことも難しいのです。 家に帰って小学生、幼稚園生である二人の息子を見れば夜もよく眠れません。 お先真っ暗です。 政府は喫煙者たちから途方もない税金を徴収しているでしょう。 なぜ禁煙政策の被害は喫煙者でもない自営業者がみな我慢しなければならないのですか? 禁煙、結構ですが、なぜ私たちにだけこうするのか分かりません。" ユン・ヒョンジュン記者 hjyoon@hani.co.kr