財政支援減り、昨年3億ウォン余の赤字
ソウル市からも支援受けられず売却進行
卒業生「法改正してでも後押しを」
京畿道（キョンギド）坡州市（パジュシ）ヘイ里の〈リュ・ジェウン ベーカリー〉は全国から集まった人々でいつも込み合っている。 長い列を作って並んででも食べたいと思うのは、リュ・ジェウン(46)氏が作ったニンニクパンだ。 それほどその味はもっぱらのうわさだ。
リュ氏はソウル城北区（ソンブクク）三仙橋（サムソンギョ）にあるナポレオン菓子店で仕事を始めた。 ナポレオン菓子店を作ったカン・インジョン前社長はリュ氏にとってもう１人の“お父さん”に他ならない。 27年前、全北（チョンブク）南原（ナムォン）で高校を卒業したあと家の事情が悪くて何の当てもなく上京した彼を受け入れてくれた。 何よりも今の彼をあらしめたのは、韓国製菓学校だ。 カン前社長はリュ氏の誠実さに注目し、“製パン士官学校”と呼ばれる韓国製菓学校に行かせてくれた。 「体系的にパンを作る方法を習ってみなさい」という配慮に、二十歳になったばかりのリュ氏は製菓製パンの資格を取り、以後ナポレオン菓子店、リッチモンド菓子店など有名パン屋でパンを作る機会を得た。 「製菓学校でたくさんの良い先輩後輩に会いました。 その人たちがいなかったなら、今日の私はありえません」 彼は2009年ドイツ ベーカリーワールドカップで銅メダルを、2010年米国ワールドペストリーチャンピオンシップでベストチョコレート賞を受賞した。
韓国製菓学校は1972年に開校した1年課程の高等技術学校だ。 40年余りの間、リュ氏のような70人余りの製菓技能長検定合格者と1900人余りの製菓技能工を輩出した。 概して家の暮らし向きが良くない人々がここで技術を習ってパン職人になり、韓国製パン市場を牽引してきた。
このような“製菓士官学校”が今消滅の危機に立たされている。 最近の大型フランチャイズ パン屋の拡散のせいで、いままでこの学校に財政支援をしてきた中小パン屋が崩れ始めてからだ。 40代以上には思い出のパン屋であるニューヨーク製菓、高麗堂（コリョダン）、太極堂（テグクタン）、聖心堂(ソンシムダン)など全国の多くの“町内パン屋”が学校運営費を支援してきたが、これらの店が廃業したり経営に困難を来たすようになり、製菓学校まで存廃の岐路に立たされることになったのだ。
それでも最近数年間は委託教育や生涯教育による収入でかろうじて持ちこたえた。 しかし昨年3億5000万ウォン程の財政赤字に陥り、結局限界に至った。 学生数も定員50人の半分にもならない状況だ。 チョ・ソンワン校長は「この2年余りの間、支援を受けるためにソウル市や市教育庁などあちこち当たって歩いたが『支援対象でない』という返答ばかりだった」と言う。 正式学歴の認められない1年課程の技術学校であるために、支援できる法的根拠がないというのが関係機関の説明だった。
卒業生たちは「希望が見えない」と口をそろえた。卒業生でもあり2002年に韓国人として初めてベーカリーワールドカップに出場したキム・フンジョン(51)氏は、「学校の助けを受けた卒業生たちが今度は学校を支援するためにはフランチャイズ パン屋と戦って勝たなければならないが、それは不可能だ。 法を改正してでも政府や地方自治体の支援が必要だ」と話す。 大企業フランチャイズ パン屋の勢力拡大でパン職人としての未来が不透明になった現実も学校の没落をあおっている。
財政難に苦しめられているこの学校は現在売却作業を進めている。 早ければ今月中旬にも新しい主人が現れるものと見られる。 学校とともに解決法を模索してきたシン・ギョンミン民主統合党議員は「民間企業がこれを買収して、当初の学校設立趣旨どおり運営していけるかどうか心配だ。 40年の製菓名門が消えるのは私たちの社会の大きな損失だ」と語った。危うい状態にある学校では先月新学期が始まった。 町内パン屋が一つ二つと消えていく世の中で、“製パン王”を夢見る人々の憂いは深まっていく。
キム・ギョンウク記者 dash＠hani.co.kr
訳A.K(1990字)
