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[コラム]尹錫悦、ハン・ドンフン、そして検事たち=韓国

登録:2024-04-28 23:42 修正:2024-04-29 11:23
チョン・ファンボン|法曹チーム長
尹錫悦大統領が3月22日、京畿道平沢の海軍第2艦隊司令部で行われた第9回西海守護の日記念式を終え、国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長と握手している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 総選挙が終わった。国民の力が獲得したのは108議席。残りの192議席には無所属も親与党も存在しない。どれも「尹錫悦(ユン・ソクヨル)審判」を掲げた野党だ。検察出身の尹錫悦大統領と、検察出身のハン・ドンフン「国民の力」非常対策委員長がツートップとして立ち、受け取った成績表だ。2人は悲劇に終わった「バディームービー」の主役だ。しかし、主役だけでは映画は完成しない。立体的なストーリーには、もっともらしい世界観と脇役が欠かせない。

 尹とハンの「ツートップ」は検察なしでは説明できない。検察は今回の総選挙の結果を生んだ世界観であり、重要な脇役だ。尹大統領の名が知られるようになったのは2013年だ。彼は朴槿恵(パク・クネ)政権時代に「国家情報院コメント事件」の特別捜査チーム長として捜査を引っ張り、左遷された。そして国政壟断特検の捜査チーム長として華麗に復活した。文在寅(ムン・ジェイン)政権ではソウル中央地検長と検察総長を相次いで務めて勢いに乗ったが、いわゆる「チョ・グク捜査」を起点として与党(民主党)の標的となった。陣営を選ばない公正さを武器に、彼は2022年3月、第20代大統領に当選した。ハン前非常対策委員長は、国政壟断特検から尹大統領と同じ道を歩み、栄光も苦難も共にしてきた。

 元特捜検事の2人はいずれも検察の主流だった。かつての軍部独裁時代には、時局事件を専門に扱った公安検事の力が強かった。しかし民主化後は特捜検事がその座についた。政権が変わる度に前政権に対する捜査が行われた。これは、過去の権力が腐敗していたため、権力交代は正当だったという説得力を与えた。その役割を担ったのが特捜検事だった。前政権に対する捜査には批判がつきものだ。特捜検事たちは相手がどれほど悪いかをメディアなどを通じて知らしめ、この難関を突破してきた。

 特捜検事は政権の安全のための捜査ばかりをしてきたわけではない。検察庁法には、検事は「国民全体に対する奉仕者」として「政治的中立」を守らなければならないと記されている。現在の権力の好みに沿った捜査を行えば、批判は避けられない。だから最小限のバランスを取ってきた。だが、権力に対する捜査は甘かった。いわゆる「チョン・ユンフェ文書」に触発された朴槿恵政権の「陰の実力者」疑惑に対して、検察は2015年1月に「実体がない」とする捜査結果を発表した。2007年には、大統領選挙まで2週間を残し、李明博(イ・ミョンバク)候補(当時)の当選が有力な中、「株式会社ダースの実質的な所有者」疑惑で李候補に嫌疑なし処分を下した。しかし、両事件とも特検と検察によって結果が覆された。

 このような点で、文在寅政権時代の大統領府と政権中枢を標的とした捜査は異例だった。そして、その捜査に対しては様々な評価があるだろうが、国民は先の大統領選挙で尹大統領を選んだ。尹大統領は当選とともに、相棒を法務部長官に指名した。

 韓国社会で最も力の強い権力者となった2人は、この時に検察の世界観と決別すべきだった。だが2人は、反対勢力を「犯罪者」と決め付けることばかりに集中した。最も大きな権力は最も強いけん制を受けるべきだが、自らに対する批判は「陰害(密かに他人を害すること)」とおとしめた。

 この2年間、検察は2人とひとつであるかのように振る舞ってきた。文在寅政権と共に民主党に対する捜査は終わる兆しが見えない。一方、株価操作事件に関与し、ブランドバッグ授受が明るみに出たキム・ゴンヒ女史は捜査する気配がない。検察が現政権の不正を捜査するという話も聞いたことがない。検察に対する問題提起はすべて「陰害」だと決め付けている。口惜しさを感じているのかもしれない。犯罪容疑が明らかになったから捜査しているだけだとの反論もしうる。しかし、批判されれば反省もすべきだ。権力を握った「自分たちの先輩」の過ちはわざと見ないようにしていたのではないか、その批判勢力の過ちは誇張しているのではないか、振り返ってみるべきだ。犯罪を断罪したからといって、自らが常に正義の側に立っているわけではないからだ。

 だから、今回の総選挙は検事たちにも問いを投げかけたわけだ。「全員が尹とハンの仲間」として残るのか、「国民全体に対する奉仕者」として残るのか。どうか正しい選択をしてくれることを願う。

//ハンギョレ新聞社

チョン・ファンボン|法曹チーム長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1138478.html韓国語原文入力:2024-04-28 18:48
訳D.K

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