第22代総選挙で野党側が圧勝をおさめ、今後の国会では「検察改革」がふたたび議論されるものとみられる。検察の権限を縮小・調整する法案が次の国会で通過しても、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が拒否権を行使する可能性がある。しかし、政府に対する怒りの民意が選挙を通じて確認されただけに、尹大統領の「権限行使」は以前ほど容易ではなくなるだろう。
祖国革新党は10大政策の1番目に「検察改革」を挙げた。特に「検察庁を起訴庁に転換」するという鮮明な公約に、検察官たちは衝撃を受けた様子だった。チョ・グク代表が二審で実刑判決を受けた被告の立場であることから、「私的報復」だとする批判が出ており、公約自体に懸念される部分がないわけではない。しかし、24%の国民の支持を得た祖国革新党の公約を単に「恨み返し」とみなすのは難しい。最大野党「共に民主党」も「捜査・起訴権を分離」するという公約を出した。
祖国革新党の検察改革の公約のなかで最も目につく部分は、検察を「起訴権担当および警察の捜査の適法性の統制機関に役割を調整」するという点だ。チョ代表が大統領府の民情首席だった時期に推進した捜査権の調整によって消えた検察の司法警察捜査統制の機能を復活させ、残りの直接捜査の機能はなくすという意味と読み取れる。この法案は、ムン・ムイル検察総長時代の検察や、クム・テソプ前議員などが主張した内容に近い。文在寅(ムン・ジェイン)前政権は、捜査権(警察)と起訴権(検察)の分離を推進したが、検察の反発などによって曖昧に妥協した。2021年に施行された検察・警察の捜査権の調整によって、政府は検察の警察に対する捜査指揮権を廃止する代わりに、6大重大犯罪に対する検察の捜査開始権を維持した。その後、重大犯罪捜査庁を設置し、6大重大犯罪の捜査権を移管しようとしたが、当時の尹錫悦検察総長の反発によってスピードを調節した。2022年の刑事訴訟法と検察庁法の改正でも、検察は2大犯罪(腐敗・経済)に対する直接捜査権を死守した。「巨悪に対する捜査」のためには検察が必要だという支持世論も背景となった。
検察改革の先鋒に立ったチョ代表が国会に入ることで、検察捜査権をめぐる論議は再燃されるだろうが、今回も国民が検察側に立つかどうかは未知数だ。これまで検察が直接捜査権を持ってみせた行いのためだ。現政権発足後の2年間に、検察内で最大の特別捜査部署であるソウル中央地検の反腐敗捜査1・2・3部は、野党側の捜査ばかりに取り掛かる姿をみせた。民生事件を処理する刑事部は縮小し、反腐敗捜査部はさらに増員された。共に民主党の全党大会で「金一封」が配られた問題に対する捜査などの成果はあったが、政権によって対象が変わる捜査は、検察の政治的中立性を疑わせる。検察は「捜査対象に制限を設けていない」と抗弁しているが、与野党が入れ替わっていれば、共に民主党のイ・ジェミョン代表の夫人であるキム・ヘギョン氏ではなく、大統領夫人のキム・ゴンヒ女史が検察に出頭したであろうという点は、だれもが知っている。ハン・ドンフン前検事長に向けてチャンネルAの記者を捜査した検察は、いまでは進歩メディアの記者たちを捜査している。検察が本当に狙うのは、彼ら自身が背後と信じる共に民主党の大統領選挙陣営だという推測が出回っている。
政界も検察を改革の対象としてだけみなすのではなく、「改革の主体」の一つと認定して一緒に議論する必要がある。2022年に改正された刑事訴訟法と検察庁法は、相当部分が施行令の改正によってあっけなく形骸化された。法は国会で作られるが、その法を維持するのは検察官たちだ。反対に検察も、自ら改革主体にならなければならない。そうでなければ、今後も改革の対象として議論されるだけだ。権力交替のたびに検察庁が病む悲劇は、もう終わらせなければならない。