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[社説]ILO公式書簡も気にとめない尹大統領、このままでは韓国が「労働後進国」に

登録:2022-12-05 03:09 修正:2022-12-05 08:38
1日午後、仁川市中区の三票セメント仁川事業所前で、貨物連帯の組合員がプラカードを掲げて警察官と対峙している/聯合ニュース

 国際労働機関(ILO)が、貨物連帯のストライキに対する韓国政府の労働基本権侵害疑惑について公式の書簡を韓国政府に送っていたことが4日に明らかになった。政府の超強硬対応が国際的に憂慮されていることが示されたわけだが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は同日、セメントだけでなく精油、鉄鋼などに対しても直ちに業務開始命令の発動を準備するよう指示してすらいる。ILOの最重要条約批准と今年4月の発効によって評価を受けた韓国が、わずか数カ月でまかり間違えば「人権と労働の後進国」と呼ばれかねないということを、政府は悟らなければならない。

 ILOは民主労総に2日に送った書簡で、貨物連帯のストへの政府対応について「直ちに(immediately)政府当局に介入(intervene)」し、「関連条約に記されている結社の自由の基準および原則に関する監督機関の立場を韓国政府に想起させた」と述べている。貨物連帯のストに下された政府の業務開始命令と代替輸送人員投入は、ILOの「結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第87号)」と「強制労働に関する条約(第29号)」に違反するとして、民主労総などが先月28日に緊急介入を要請したことに伴うものだ。ILOの監督機関「結社の自由委員会」は、韓国が第29号、第87号、第98号などの最重要条約を批准する以前の2011年と2015年にも、貨物労働者の結社の自由、団結権、団体交渉権を保障するよう勧告している。

 ILOがわずか4日という迅速さで返答したのは、それだけこの事案をよく把握し、かつ注目していることを意味すると言える。だが政府は原文を公開せず、ILOの書簡は「介入」ではなく民主労総の要請に通常どおりに答えた「意見照会」に過ぎないとして、その意味を矮小化している。そのうえ、このような事実が報じられた日に開かれた関係長官会議で、尹大統領は「違法・暴力行使勢力とはいかなるケースであっても妥協しない」と述べ、よりいっそう強硬な姿勢を示した。尹大統領の指示によって、6日の国務会議では業務開始命令が他の分野へとさらに拡大する可能性が高くなった。政府は、輸送を「拒否」する貨物労働者に対しては燃料価格補助金支給を制限し、高速道路通行料減免からも除外するという方針も明らかにしている。

 尹大統領は、自らの言う「法と原則」が国際規約とどのように衝突するのか気にもとめない姿勢を示している。最重要条約批准を先送りする韓国政府に対して、欧州連合(EU)が自由貿易協定(FTA)上の規定を掲げて圧力をかけてきたことも、現政権は覚えていないようだ。安全問題に対しては一言の対策も示さず、貨物労働者に「処罰」で脅しばかりを強める政府は、事態解決どころか、国際社会に後ろ指さされることになるのではないかと心配だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1070145.html韓国語原文入力:2022-12-04 18:21
訳D.K

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