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[コラム]経済で見せた尹政権の「危機助長能力」

登録:2022-11-29 05:44 修正:2022-12-09 10:53
輸出こそが経済危機を乗り越えるための解決策という尹錫悦政権が、輸出の血脈である物流に影響を与える貨物連帯の問題をなぜ放置したのか。レゴランド、興国生命、韓電債事態が相次ぐ間、尹政権が見せたのは経済危機管理ではなく危機助長能力だった
行政安全部のイ・サンミン長官が28日、政府ソウル庁舎のソウル状況センターで開かれた貨物連帯ストライキ関連の中央災害安全対策本部会議を終え、ウォン・ヒリョン国土交通部長官、ユン・ヒグン警察庁長官などと共にブリーフィング室に向かっている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領就任後の6カ月間、大統領夫妻の舌禍と奇行に政界と大衆の注目が集まっていた中、最も重要な問題が見落とされていた。経済危機の問題だ。

 最近の貨物連帯のストライキがそれをよく物語っている。尹大統領が就任した直後の6月、貨物連帯はストライキを行った。当時、貨物連帯は「安全運賃制を持続的に進め、品目拡大などを議論する」ことで政府と合意し、ストライキを解除した。しかし、この5カ月間、政府はこれらを議論したことがない。これに反発した貨物連帯が再びストライキを予告すると、2日を残した22日、政府は「サンセット条項の3年延長、品目拡大不可」という事実上の合意破棄案を示した。

 貨物連帯が掲げた要求の正当性の如何にかかわらず、尹錫悦政権はこれまで一体何をしてきたのか。尹大統領は就任後、口を開けば輸出こそが経済危機を乗り越えるための解決策だと強調してきた。

 尹大統領は23日、第1回輸出戦略会議を主宰し、「我々の生きる道は輸出だ。国務委員全員が企業の海外進出と輸出を最大限後押ししなければならない」と強調した。また、10月27日の第11回非常経済民生会議でも「保健福祉部は社会サービス産業部、国防部は防衛産業部にならなければならない。国土交通部もインフラ建設産業部になるなど、全省庁が国家戦略産業を支援し促進する役割を果たす必要がある」とし、「全省庁が産業と輸出に邁進するという考え方で臨むべきだ」と語った。チュ・ギョンホ経済副首相も「複合経済危機の突破と韓国経済の再跳躍という二兎を得るためには、サービス産業など内需も重要だが、輸出の活性化がカギになると言える」と述べ、尹大統領の発言を後押しした。

 バブルがはじけ、物価が急騰している世界的な複合的経済危機の状況で、果たして輸出が解決策なのかも問いただすべき問題だが、百歩譲って彼らの言う通りだとしよう。ところが尹政権は「国防部も兵器を売る省庁にならなければならない」というほど輸出を強調しながらも、輸出の血脈となる物流に最も大きな影響を及ぼす貨物連帯の問題はなぜ放置したのか。

 尹大統領は24日、フェイスブックへの書き込みで「国民と企業、そして政府が一丸となって危機の克服に専念している状況で、貨物連帯が無期限集団運送拒否に突入した」と嘆いた。本当に嘆かわしいのは「この2日間、輸出戦略会議を通じて輸出増進戦略を点検した」という本人と韓国政府だ。キム・ジンテ江原道知事の発言がレゴランド事態をもたらした後、市場で起きたことを見る限り、尹政権に備わっているのは危機管理能力ではなく、むしろ「危機助長能力」かもしれない。

 レゴランド事態で社債と企業手形の金利が急騰し、企業が危機に追い込まれているのに、チュ・ギョンホ経済副首相は問題が勃発してから2週間たった後、米国でのんびりと「江原道で対応する必要があるかもしれない」としたうえで、「(市場全般に不安心理が)広がる段階ではなさそうだ」と述べた。結局、江原道はレゴランド債権の保証をすることに再び方針を変えた。

 似たような事態がまた起こった。興国生命が永久債のコールオプション行使を放棄し、韓国企業の海外発行債権金利が急騰した時も、政府は事態が悪化してからようやく乗り出し、興国生命に決定を撤回させた。

 二つの事態で債権市場が非常事態になったにもかかわらず、韓国電力が韓電債を大量発行して市場の資金を集めているのを、尹政権は手をこまぬいて眺めていた。韓電債発行の根本的な原因である電気料金問題の解決については政治的負担を感じて極力避けつつ、韓電債の大量発行は文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の原発放棄政策が原因だと尹政権の関係者らは言う。景福宮に火事が起きれば、大院君や太宗李芳遠(イ・バンウォン)に責任を問うべきと言うようなものだ。電気料金赤字の根本原因が尹政権発足以降のエネルギー価格の急騰にあるという事実には目をつぶっている。

 今、世界経済は岐路に立たされている。米国の10月の消費者物価指数は対前年同月比7.7%で、今年に入って最も上昇幅が少なくなり、物価上昇がピークを迎えたとみられる中、連邦準備制度理事会(FRB)の今後の利上げのスピードも緩和されると期待されている。フィナンシャル・タイムズの報道によると、これに伴い、米国企業債ファンドには今月160億ドルが投資され、米国企業の資金状況が好転する見通しだ。2020年7月以降最大の資金流入だ。

 一方、韓国企業の状況は好転しているのか。韓国銀行が27日に発表した「2022年下半期システムリスクサーベイ結果」によれば、1年以内に短期的に金融システムの安定性を阻害する恐れがあるという回答は、尹大統領が就任した5月の26.9%より31.4ポイントも増えた58.3%に達した。

 先進国を含む来年の世界経済は、インフレの緩和を前提に景気低迷の強弱の岐路に立たされている。韓国経済にとってはまた別の金融危機の有無の方が当面の不安要素だ。尹錫悦夫妻がこの半年間、様々な舌禍と奇行で論議を呼んでいた間、尹政権が経済で見せたのは危機管理なのか、それとも危機助長なのか。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ウィギル|国際部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1069204.html韓国語原文入: 2022-11-28 20:23
訳H.J

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