尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領は5日、大統領秘書室の秘書官級の第1次人選を発表した。いわゆる「尹錫悦師団」と呼ばれる検察出身の最側近が配置された。特に、「ソウル市公務員スパイでっち上げ事件」で懲戒されたイ・シウォン元水原地検刑事第2部長が公職綱紀秘書官に内定したことは、尹次期大統領が強調してきた公正と常識という価値とも相反する。
5日に発表された秘書室長直属の7人の秘書官のうち、3人は検察出身者だ。大統領室の「番頭」である総務秘書官に内定したユン・ジェスン氏は、尹次期大統領が検察総長在職中、最高検察庁の運営支援課長を務めた人物だ。公職綱紀秘書官と法律秘書官は特に問題が大きい。公職綱紀秘書官に内定したイ・シウォン氏は、検事時代に「ソウル市公務員ユ・ウソンさんスパイでっち上げ事件」に関与し懲戒された前歴がある。当時、国家情報院の証拠でっち上げを知らなかったという理由で懲戒は停職1カ月にとどまったものの、その後の検察過去事委員会による再調査では、検察は記録の偽造の事実を知っていた可能性が高いと結論付けられている。その後、ユ・ウソンさんが誣告・捏造容疑でイ氏を告訴したが、検察は不起訴処分とした。このことは代表的な「検察の身内びいき」の実例だ。証拠でっち上げを「見て見ぬふり」したという疑惑が持たれていた元検事が、大統領の参謀たちの綱紀の緩みを引き締める秘書官に内定したことは二律背反だ。
民情首席室を廃止したことで権限がさらに強まる法律秘書官には、チュ・ジヌ元ソウル東部地検部長検事が内定した。尹次期大統領の「腹心」であるチュ氏は、大統領選の期間中にネガティブ対応および逆攻勢を主導した。現在は公職候補の人事検証チームを率いており、手抜き・拙速検証の責任が問われている。
何よりも彼らが大統領室に配置されたことで、尹次期大統領が廃止を約束した民情首席室の業務が、側近を中心として復活する可能性が高くなった。大統領に対する法律補佐機能や大統領室の監察業務などはチュ・ジヌ氏が中心となって担い、査定や人事の検証を担うことになる法務部は、ハン・ドンフン氏を通じた尹次期大統領の直轄体制へと再編されるとみられる。結局、民情首席室の廃止は形式的な宣言にとどまり、実際の業務は民情首席室より強大な尹次期大統領の「親衛隊」が中心となって担う公算が高い。
ただでさえ大統領室の縮小で首席・秘書官に対する権力の偏り現象が以前より深刻化するとの懸念が提起されている。検察出身者に囲まれた元「検察総長」の大統領が、国民にどのように映るか、尹次期大統領はよく考えるべきだ。