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[コラム]尹錫悦次期大統領の「スピンドクター」、ハン・ドンフン法相候補

登録:2022-04-25 06:37 修正:2022-04-25 07:42
[ハンギョレプリズム]キム・テギュ|政治チーム長
尹錫悦次期大統領が4月13日、ソウル鍾路区通義洞の政権引き継ぎ委員会のブリーフィングルームで、第2回内閣発表を行っている。右側はハン・ドンフン法務部長官候補=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 最高検察庁が共に民主党の検察捜査権廃止立法に反対意見を出した8日夕方。ソウル通義洞(トンウィドン)の政権引き継ぎ委員会事務室を出た尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領に記者団が意見を聞くと、彼はこのように答えた。

 「もう検事を辞めて久しいし… 刑事司法制度は法務部と検察とこうやって進めればいいし、私は国民の暮らしに集中したいと思います」

 尹次期大統領は昨年3月4日に辞任した「前検察総長」だ。辞任前日には大邱(テグ)高・地検を訪問し、「『検捜完剥(検察の捜査権完全剥奪)』は腐敗の温床を作る『腐敗温作』だ」と述べた。検捜完剥立法を辞任の名分に挙げた尹氏が、民主党の立法再開に言いたいことがないはずがない。依然として検事の血が流れる利害当事者として、大統領にまでなったのに、出口のない泥沼の争いに巻き込まれるわけにはいかないという意味だったろう。「言いたいことは山ほどあるが言わない」ということだ。

 この日から1週間後の15日、ハン・ドンフン法務部長官候補は、「検捜完剥立法」について、「5年間、何があってこのように名分のない夜逃げ劇まで繰り広げているのか、国民は大いに気になっているだろう」と述べ、民主党を強く批判した。まさに尹次期大統領が言いたかったはずのことで、尹氏が「最側近」と言われる人たちにも相談せず、「ハン・ドンフン法務部長官」を独自で指名した理由が明確になった瞬間だった。ハン氏は尹氏の「スピンドクター」(広報活動などを通じて情報操作を行う「スピン」に長けた人のこと)として活躍する可能性が高い。

 尹大統領の就任前から「小統領」として注目されているハン氏は自信に満ちている。今月13日の人選記者会見で、同氏は「側近人事、捜査の公正性毀損」という指摘に対し、「私が行ってきた大型捜査でコネや陣営論に頼ったり、外圧を受けて社会的に力のある者を大目に見たりした事件があるなら、そのような懸念も理解できる。(だが、そのような事件は)ないと思う」とし、「あるなら持ってきてくれて構わない」と述べた。

 本人はそう思うかもしれない。検察が大型捜査を進めると「伝説の特捜通」として尊敬されていた元検事たちも後に弁護士になって大型法律事務所や財閥の手先になって検事たちの懐柔に乗り出す。それがうまく行かない場合、「大先輩検事」は「いつか○〇検事も弁護士になるんだろう」という「最終兵器」を取り出す。このような懐柔に対し、ハン氏は「弁護士になるつもりはありません」と請託を断ったという。検事出身の大物弁護士の脅しにも屈しなかったのなら、拍手を受けるべきかもしれない。しかし、このような相対評価で本人の業務処理が「完全無欠」だと自負するのは傲慢だ。起訴が正当だったかどうかは裁判所の判決で検証されるが、公訴権を独占した検察が起訴すらしなかった事件は、外部の目にさらされないからだ。

 国会法制司法委員会の国会議員が、裁判中の知人を寛大に処分してほしいと最高裁事務総局に請託し、法廷に立った国会議員に最高裁事務総局が裁判戦略をコンサルティングした「裁判取引」疑惑は厳正に処理されたのだろうか。検察は、彼らに職権乱用の疑いで捜査を進めたが、同事件の最終結論は発表されておらず、捜査線上に上がった数人はいまも現役議員として活動している。同事件の捜査責任者は、ハン・ドンフン当時ソウル中央地検3次長だった。「(忖度捜査が)あれば持ってきても構わない」と言うのだから、この際聞いてみたい。この事件はまともに処理したのか、と。

 ハン氏は生活領域での議論に対しても堂々とした態度を示している。タワーパレス(江南の高級マンション)の伝貰(チョンセ。契約時に賃借人が多額の保証金を所有者に預け、月々の賃貸料は発生しない不動産賃貸方式)の保証金は賃貸借3法に基づき、5%引き上げた金額で支払った一方、本人所有の三豊アパートの伝貰保証金は43%引き上げたことについて、同氏は「(三豊アパートに住んでいた)賃借人が相場通り再契約したいと提案」したため、「賃貸借保護法違反ではない」と説明した。賃借人としては賃貸借3法の恩恵は享受しながらも、賃貸人として法律を無視した結果になったが、実に堂々としている。違法でない限り問題にならないというふうに物事を捉えるのが法曹界の限界だが、尹次期大統領とそのスピンドクターであるハン氏もその点においてはあまり変わらないようだ。文在寅(ムン・ジェイン)政権の危機は文大統領のペルソナであるチョ・グク元長官から始まった。傲慢は災いを招く。

//ハンギョレ新聞社
キム・テギュ|政治チーム長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1040181.html韓国語原文入力:2022-04-2502:40
訳H.J

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