尹次期大統領、追加立法・拒否権を検討する可能性も
「検捜完剥（検察の捜査権完全剥奪）は腐敗の温床を作る」と反発し、検察総長の職を辞して大統領になった尹錫悦（ユン・ソクヨル）次期大統領が、検察捜査権の廃止を前提とする与野党の合意案に賛成の意向を表明すると、検察内部からは「体よく裏切られた」という怒りの声が上がっている。検察内部からは「すでに政治家となった次期大統領は、検察を使い捨てのカードとして利用している」という激しい反応も出てきた。
尹次期大統領とハン・ドンフン法務部長官候補が後に立場を表明したが、検察の反発はおさまっていない。法曹界からは、検察組織を意識せざるをえない尹氏が、大統領就任後に追加の立法事案などに影響力を行使するか、拒否権を検討する可能性もあるという見方が出ている。
22日、検察の捜査・起訴権分離の与野党合意案について、政権引き継ぎ委員会を通じて「尊重する」という意向を表明した尹氏側は、2日後の24日には「懸念する」という立場を示した。ペ・ヒョンジン次期大統領報道担当は会見で、「次期大統領は一連の過程を、国民が懸念する様子とともによく聞き見守っている。（次期大統領の）就任後、国民が心配する憲法の価値の守護について、責任感を持って努力する」と明らかにした。与野党合意の当日には何の立場も示さなかったハン・ドンフン法務部長官候補も、翌日の23日午後、「悪影響と問題点が懸念される」という立場を遅れて示した。検察内部からは、与党「共に民主党」をはじめ検察出身である二人に向けて予想外の激しい批判を浴びせられたためだと思われる。
尹次期大統領が昨年3月に検察総長の職を辞した理由は、共に民主党が検察捜査権の廃止を目標に重大犯罪捜査庁を設置しようとしたためだった。当時、尹氏は「重大犯罪捜査庁の新設は、民主主義の退歩であり、刑事司法システムを破壊する拙速な立法」であり「腐敗の温床を作る」と述べていた。ある検察幹部は、「検察総長出身の尹氏が、なぜこの合意案に賛成したのか理解できない。（野党の）国民の力が反対したのであれば、最後まで反対できた」と虚脱感を示した。首都圏の検察庁のある部長検事は「検察内部では、法務部長官候補者だけでなく、尹氏に対しても不満が強い。検察から『反対する』と言って出ていったのに、逆に今では当時よりさらに深刻な方向に進んでいるにもかかわらず、何の立場も示していない。政治家になってしまったということを表立っては言わなくとも、そう思っている人々はいる」と述べた。
「政治家尹錫悦」が最小限の「尹錫悦系の人物」だけを連れ、一定期間、検察を直轄統治しようとする意図だという見方もある。また、別の検察幹部は「尹氏には（この懸案を防ぐ）意志はなかったとみられる。むしろ、主犯は共に民主党ではなく、尹氏とハン氏の二人」だと述べた。また「権力の属性だ。どのみち検察はいつでも使い捨てできるカードだったわけだ。長期的には捜査権廃止の方向に進むだろうが、すぐには実行できないのではないか。法務部長官を通じて、牽制されることなく検察の人事を行うことになるだろう」と述べた。ある法曹界の要人は「検察は全員が尹錫悦支持派なのではない。残りの検察官が辞職の覚悟で（政権に）反発すれば止められないことを誰よりも尹氏がよく知っている。政治家として自分で計算したのだろう」と述べた。
法務検察の責任を負うとして示したハン氏の一足遅れの立場表明についても、批判が出ている。尹氏と歩調を合わせようとしたために、時期と内容いずれも非難の対象になったというわけだ。彼の責任問題を取りあげた検察幹部は、「ハン氏は夜逃げ発言でむしろ共に民主党を刺激し、この状況を加速化させた側面がある」と述べた。さらに、「キム・オス検察総長が後輩たちに非難されたのを見たはずだから、あの程度の立場表明でもしなければ、検察の後輩たちの攻撃に耐えられないという判断があったのだろう」と述べた。これについて、ハン氏の聴聞会準備団のクォン・スンジョン公報チーム長は、「多くの懸念や意見を幅広く聞き、翌日すぐに立場を表明した」と述べた。
一方、合意案に反発し辞表を出したものの、まだ受理されていないキム・オス検察総長は25日午前、記者懇談会を開き、合意案に対する立場を明らかにする。
訳M.S
