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[コラム]政治の門外漢を政治指導者と仰ぐ奇怪さ

登録:2021-08-12 03:41 修正:2021-08-12 10:45
政治の門外漢を政治指導者と仰ぐ政治家の姿ほど奇怪なものが、この世にあるだろうか。ユン・ソクヨルとチェ・ジェヒョンの選対に参加した国民の力の議員たちは、党内に立派な資質を持った大統領選候補が複数いるということを知らないのだろうか。知りつつも無視しているのだろうか。
先月29日、ソウル汝矣島の国民の力の党本部で開かれた「第20代大統領選挙党内選挙候補懇談会」を前に、イ・ジュンソク代表と候補たちが記念撮影している。ユン・ソクヨル候補は30日に入党したためこの場にはいない=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 大韓民国の歴代の大統領のうち、国会議員をせずに大統領になったのは朴正煕(パク・チョンヒ)、崔圭夏(チェ・ギュハ)、全斗煥(チョン・ドゥファン)の3人だけだ。朴正煕、全斗煥は軍事クーデターで政権を握った。崔圭夏は1979年の朴正煕大統領の死後、統一主体国民会議で大統領となった。

 いま刑務所にいる李明博(イ・ミョンバク)大統領は第14、15代国会議員を務めた。2002年から2006年まではソウル市長を務めた。朴槿恵(パク・クネ)大統領も15代から19代まで、5期連続で国会議員を務めた。

 国会は民意の殿堂である。国会議員は国民の代表である。「政治をする」という言葉は国会議員になるということを意味した。地方選挙が始まると、「政治をする」という言葉の意味は、自治体の首長または地方議員になるということにまで拡大した。政治家は選出職の公職者だ。

 政治は簡単なように見えるが、簡単ではない。サッカーを見る我々の目はプレミアリーグなのに、実力は町内サッカーにも及ばないのと同じ理屈だ。サッカーもそうだが、ましてや政治だ。何にしても長くやってこそうまくなるもの。政治も同じだ。

 どこかの政党に党員として加入するだけでも自動的に政治の学習が始まる。成長が重要なのか分配が重要なのか、普遍的福祉が正しいのか選択的福祉が正しいのか、南北が平和に共存して発展する方策とはいかなるものなのかに関心を寄せるようになる。どうすれば「味方」が選挙で勝って政権を獲得できるのか、どうすれば「我が党」が民意を得られるのか苦悩するようになる。

 政務感覚とは、すべての事案を選挙に有利か不利かで判断する浅はかな能力ではない。共同体の未来に対する関心であり、国家と民族を思う愛国心だ。

 ユン・ソクヨル前検察総長は、これまでは検事だけをしてきた。チェ・ジェヒョン前監査院長はこれまでの人生のほぼすべてで判事だけをしてきた。政治を全く知らない人々が、政治の最高峰である大統領になると言い出して立った。なぜなのか。

 ユン・ソクヨル前総長は世論調査を信じたのだろう。チェ・ジェヒョン前院長は啓示を受けたようだ。申しわけないが2人とも資格不足だ。大韓民国の大統領は生半可に担える地位ではない。

 この2人よりも理解しがたいのは、2人の周りに寄り集まる国会議員たちだ。政治の門外漢を政治指導者と仰ぐ政治家の姿ほど奇怪なものが、この世にあるだろうか。

 ユン・ソクヨル陣営にはユン・チャンヒョン、ユン・ハンホン、イ・ヨン、イ・ジョンベ、イ・チョルギュ、チャン・ジェウォン、チョン・ジョムシク、チョン・チャンミン、ハン・ムギョンの各議員が参加している。クォン・ソンドン、イ・ヤンス、チョン・ジンソクの各議員はユン・ソクヨル大統領を生み出すために動いている。

 ユン・ソクヨル陣営は最近、李明博、朴槿恵両政権に参加していた人々を中心とする大規模な政策諮問団まで発足させた。ユン・ソクヨル陣営からは食べ物を見て本能的に飛びつく動物の匂いがする。ユン・ソクヨル前総長が大統領になれば、彼らの宴会が開かれるだろう。

 チェ・ジェヒョン陣営にはキム・ミエ、パク・デチュル、パク・スヨン、ソ・ジョンスク、イ・ジョンソン、チョン・ギョンヒ、チョ・ミョンヒ、チョ・テヨン、チョ・ヘジンの各議員が参加している。チェ・ジェヒョン前院長に似ているからなのか、大半が「善良で純真な」人たちだという評価だ。しかし政治は「善良で純真な」人がうまくやれるわけではない。

 とにかく不思議だ。ユン・ソクヨル、チェ・ジェヒョン陣営に参加した国民の力の議員たちは、党内に立派な資質を持った大統領選候補が複数いるということを知らないのだろうか。知りつつも無視しているのだろうか。

 ウォン・ヒリョン前済州道知事は、「首席」という単語を名前のようにぶら下げて歩いていた済州のプライドだ。保守政党に身を置いているものの、常に改革の象徴的人物だった。ソウル陽川甲(ヤンチョン・カプ。選挙区名)で第16、17、18代議員を務め、2014年に済州道知事となった。立法経験と広域自治体首長としての行政経験を兼ね備えているのだから「準備のできている大統領選候補」だ。

 ユ・スンミン前議員は経済の専門家だ。第17、18、19、20代国会議員を務めた。改革保守の信念が非常に強く、成果を出す政治家だ。2015年の公務員年金改革はユ・スンミン院内代表がいなければ不可能だった。その過程で朴槿恵大統領から「背信の政治」との烙印を押された。

 ホン・ジュンピョ議員は第15、16、17、18代国会議員を務め、その後、慶尚南道知事を務めた。派閥を作ったり力のあるものに媚びへつらったりせず、個人技だけで院内代表、党代表を務めた。「再挑戦者が強い」韓国の大統領選挙においては、2017年の出馬経験はかなりの強みだ。見かけのイメージとは異なり実用主義者だ。政策では理念性を問わない。

 国民の力には、3人のほかにも良い大統領選候補がいる。詩人のキム・テックン氏は最近、「京郷新聞」に「良い政治家は急には湧いてこない」というコラムを書いた。全面的に共感する。

//ハンギョレ新聞社

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1007277.html韓国語原文入力:2021-08-11 15:18
訳D.K

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