4月7日実施の再・補欠選挙で、野党が圧倒的な票差で勝利した。中央選挙管理委員会の開票集計の結果、ソウル市と釜山市の市長補欠選挙で野党「国民の力」のオ・セフン、パク・ヒョンジュン両候補が共に民主党のパク・ヨンソン、キム・ヨンチュン両候補を大差で抑えて当選した。昨年4月15日の総選挙で民主党に180議席を与え、野党を審判した民意が、わずか1年で覆されたのだ。隔世の感がある。
野党の圧勝は住宅価格の暴騰に帰結した文在寅(ムン・ジェイン)政権の不動産政策に対する市民の失望と怒りが、韓国土地住宅公社(LH)の職員による投機問題をきっかけに爆発したためと分析される。ここに、庶民の住居権を守るといって伝貰(チョンセ。保証金を預ける形式の賃貸制度)価格上昇を抑える賃貸借保護法を発議したにもかかわらず、当の大統領府政策室長と民主党議員たちが法案可決直前に“賃貸料引き上げ”をしていたという「表裏不同」が、“審判論”の噴出を触発した。民主党はオ・セフン、パク・ヒョンジュン両候補の道徳性の問題を集中的に浮き彫りにして反撃したが、票にはほぼ影響を与えられなかった。
再・補欠選挙の結果は、政権与党の民主党に対し、民意の警告を骨を削って受け入れ変わるよう求めている。今回の再・補欠選挙の民意の底流には、政権勢力の言葉と行動が異なるという偽善的行動に対する怒りがあるという事実を忘れてはならない。2019年のチョ・グク元法務部長官問題を契機として、政権勢力の公正性に疑問を提起した20~30代がはっきりと背を向けたのも、キム・サンジョ前大統領府政策室長とパク・ジュミン議員らの伝貰価格の引き上げを、典型的な「他人の過ちには厳しく自分の過ちには甘い」態度と受け止めたからだ。断固たる倫理的刷新なしには、民主党が国民の信頼を取り戻すのは難しいということを物語っている。
民主党は現在、国民権益委員会に依頼して進めている民主党議員の不動産投機の全数調査などを厳しく実施し、容疑が明らかになれば誰であれ厳しく責任を問う特段の対処に乗り出さなければならない。過半数政党を放棄してでも、政権与党内で投機と腐敗の芽は必ず摘み取るという覚悟で臨まなければ、1年も残されていない大統領選挙も難しくなる。
再・補欠選挙の敗北により、任期約1年を残す文在寅(ムン・ジェイン)大統領のレームダックが現実化する可能性は大きくなった。文大統領は、全面的な内閣改造を含め、大々的に刷新することを躊躇してはならない。大統領府と内閣をはじめ、公職社会全般の道徳的綱紀を引き締めなければならない。これを基盤として、国を滅ぼす不動産投機との戦いでは必ず成果を出さなければならない。不動産政策は住宅価格の安定と住居権の実現を願う民意に応える方向で揺るぎなく推進しつつ、意図とは違い市場でまともに機能しない政策は現実に合わせて再調整する必要がある。ただし、投機根絶と住宅価格上昇対策にふさわしい保有税強化、公共主導の住宅供給拡大という政策基調までむやみに手をつけることがあってはならない。
公職者の投機を源泉遮断できる利害衝突防止法の制定など、改革立法でもう躊躇してはならない。民主党は、中道層だけでなく与党支持層からもかなりの離脱が発生した理由を深く考えるべきだ。民主党は圧倒的な議席を持ちながらも、重大災害処罰法などの民生改革立法からは一歩引くような姿勢を見せてきた。支持層が民主党に票を投じ続ける理由と大義名分を失わせた点も、今回の選挙の敗北の主な要因であることを自覚しなければならない。
国民の力は、2016年の総選挙以来、全国規模の選挙4連敗の末に蘇生のチャンスをつかんだ。だからといって、今回の再・補欠選挙の勝利を自分たちの能力で国民の支持を得たと考えているなら誤算だ。冷静に言えば、有権者は政権勢力に対する警告と審判の方法として国民の力の候補を支持したと見るのが妥当だ。国民の力が代案勢力として国民に認められるためには、不断の自浄と刷新の努力を尽くさねばならないことを肝に銘じなければならない。
オ・セフン、パク・ヒョンジュン両候補は、選挙過程で絶えず道徳性に対する疑惑が提起された点を深く自省する必要がある。今後1年2カ月余りの市政を率いる中で、万が一にでも再・補欠選挙の民意を我田引水式に受け止めて不動産政策の根元を揺さぶることがないよう留意してほしい。特にオ候補は、ソウル都心の再建築規制を緩和し、大規模な民間再開発事業を活性化するという公約を掲げたが、不動産価格の暴騰を招きかねない危険な発想だ。国民の力のチュ・ホヨン院内代表も、江南地区のマンションの伝貰保証金を1億ウォン(23.3%)も一気に引き上げておきながら、「(相場より)安くしたらほかの賃貸人に被害を及ぼすこともあり得るではないか」と強弁するなど、恥知らずな姿を見せた。このような形態を改めなければ、国民の力の勝利が例外的な突出で終わらないと断言することは難しくなる。
今回の選挙は、1年後に迫った第20代大統領選挙の前哨戦の性格を帯びる。国民の力は勝利したが、今回の再・補欠選挙の結果が大統領選挙までそのまま続くとは、誰も断言できない。誰がより市民の生活を守る代案を出し、正義・公正の価値に符合する姿を見せるかが、次期大統領選挙を左右することになるだろう。与野党いずれもまもなく新指導部を立ち上げ、大統領選に向けた党内選挙を準備することになる。再・補欠選挙に込められた民意を正しく読み取り、謙虚な姿勢で実践する責任は、勝利した野党と惨敗した与党の両方にある。