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[社説]辞任したユン・ソクヨル検察総長、政界進出は「検察の中立」の否定だ

登録:2021-03-05 05:36 修正:2021-03-05 08:34
議論開始段階の捜査庁、辞退の名分にはならず 
政治的な計算をともなう用意された手順に映り 
辞任の口実を与えた与党も謙虚に反省を
ユン・ソクヨル検察総長が4日午後、辞任後にソウル瑞草区の最高検察庁を去りながら挨拶の言葉を述べている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 ユン・ソクヨル検察総長が4日、突如辞任した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領はユン総長の辞意を受け入れ、検察人事でパク・ポムゲ法務部長官との対立を引き起こしていた大統領府のシン・ヒョンス民情首席の辞表も受理した。与党の一部で推進中の捜査・起訴権の完全分離と重大犯罪捜査庁(捜査庁)の設置が、ユン総長の辞任の理由だ。ユン総長は「この国を支えてきた憲法精神と法治システムが破壊されている」と述べた。しかし、ユン総長のそのような認識は実際とは異なるだけでなく、検察総長が任期途中で辞任する理由にはならない。すでに、ユン総長の大統領選挙出馬が既定の事実として受け入れられている状況は、「検察の中立性」を根底から揺さぶりかねないという点で、強く懸念される。

 検察の捜査・起訴権の独占による弊害は、私たちの社会に累積してきた。最終的には権限の分離を通じてこの問題を解決しなければならないという点は、ユン総長自身も同意したことがある。いつどのような方式で制度を改善するかは、社会的な議論を経て立法府が決める領域だ。しかも、捜査と起訴権の分離はまだ議論が始まった段階だ。検察も正式な手続きを経て立場を表明し、議論に参加できる。与党も検察の意見も聞き十分な検討を経るといっている状況で総長が辞任までするのは、説得力が落ちる。

 ユン総長の辞任をみると、政治的な計算に従ったのではないかという疑いさえ生じる。ユン総長は「今後も私がどのような地位にいようと、自由民主主義と国民を保護することに全力を尽くす」と述べた。明示的な言及ではないが、事実上の政治活動宣言だと受けとめられる。ユン総長は検察総長としては異例のメディアとのインタビューで注目を受けた後、わずか2日で公開的な辞任宣言をした。前日には野党「国民の力」の支持基盤である大邱(テグ)を訪問した。老獪な政治家顔負けの行動という印象を消すことはできない。捜査と起訴権の分離を争点として可能な限り浮上させた後、辞任の名分として活用したのではないかという疑念がぬぐえない。

 ユン総長は「検事が政治的に偏向するのは、腐敗するのと同じだ」とし、検察の政治的中立を強調してきた。そのような彼が任期途中で辞任し、政治に飛び込むのであれば、二律背反に異ならない。現職時の権限行使が政治的な意味合いでなされたという疑いから逃れることはできず、今後の検察の行方にも政治的な不信感を持たれざるを得ない。検察の信頼性には致命的だ。捜査と起訴の分離以上に、検察の政治的中立を確保するための大々的な手術が不可避だと思われる。

 与党も、これまで丁寧ではない手法で検察改革を推進し、ユン総長に辞任の口実を与え、国民の疲労感を高めてきた点を、謙虚に反省しなければならない。検察改革は国民的な共感を基に推進しなければ成功は難しい。改革に対する抵抗にはきっぱり対処しなければならないが、国民的な支持を広げることもより一層努力しなければならない。大統領府は検察の内外で幅広く信用される人物を後任の総長にすみやかに任命し、検察組織を安定させてほしい。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/985482.html韓国語原文入力:2021-03-05 02:13
訳M.S

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