本文に移動

[社説]ユン検察総長、捜査庁設置への反発に「法治の抹殺」発言は行き過ぎだ

「捜査・起訴の分離」グローバルスタンダードさえ否定 
「過激発言」連発は政治的意図を疑われる 
与党も捜査庁設置に慎重にアプローチすべき
2日付「国民日報」1面に掲載されたユン・ソクヨル検察総長のインタビュー記事。同紙はユン総長のインタビューを4面にわたって掲載した//ハンギョレ新聞社

 与党の一部で、捜査・起訴権を完全に分離し、検察の直接捜査機能を切り離して、重大犯罪捜査庁(捜査庁)を設置する案を推進していることに対し、ユン・ソクヨル検察総長がマスコミのインタビューで「民主主義の後退であり、憲法精神の破壊だ」と強く非難した。検察改革の当事者として意見を述べることはできるが、捜査・起訴分離という先立つ刑事司法の原則さえ否定し、過激な発言をすることは、公職者として不適切な態度だ。そのうえ、政府与党が捜査庁の設置についてまだ結論を出していないだけでなく、検察の意見を収れんする公式な手続きが進められている状況で、検察総長が類例のない特定マスコミのインタビューで意見を表したことも、政治的行為という批判を避けられない。

 捜査・起訴分離がグローバルスタンダードだということには多くの専門家が同意する。しかしユン総長は「法執行を効率的に行い、国民の権益を守るためには、捜査と起訴が一体となるべきだ」と正反対の主張を展開した。検察が客観的な位置として捜査機関をけん制するよりも、自ら捜査機関というアイデンティティを固守したことで、人権侵害や証拠捏造がふるいに掛けられず無理な起訴の末、無罪と判明した事件は数知れない。捜査・起訴の分離こそ国民の権益のために考案された刑事司法体系だ。ユン総長が強調する「社会的強者と既得権の反則行為に対する断固たる対応」も、捜査・起訴を担当する複数機関の健康なけん制・協力関係を通じて効果的に行われる。捜査・起訴を独占した検察がかつて、友好的な政権や財閥捜査で甘い捜査を行なっても何らけん制手段がなかった。権限独占の最大の受恵者は不正を働いた検事たちだったという指摘まで出ている。

 もちろん、ユン総長の主張の中には真剣な討論が必要な部分もある。知能化・大型化する重大犯罪に対応するには捜査・起訴の緊密な連携が必要だという主張だ。しかし、これも巨大な単一組職である検察が、広範囲な捜査権と起訴権をすべて持たなければならない根拠にはならない。ユン総長自らも「肥大化した検察権が問題なら検察を分割しろと言ってきた」と述べた。捜査庁の設置もこのような脈絡と同じだ。ただし、腐敗・経済・麻薬など特定犯罪捜査を担当する機関が捜査・起訴権を同時に持つか、それさえも分離するかは、外国の経験など多角的な検討が必要だと思われる。

 与党の一部で十分な検討と議論なしに捜査庁の設置を無理に推し進めたことが、ユン総長の反発の口実になった面もある。チュ・ミエ前法務部長官とユン総長の対立が物語るように、検察改革は何よりも国民的共感が重要だという点を忘れてはならない。

 にもかかわらず、ユン総長が「憲法精神の破壊」や「法治の抹殺」や「刑事司法体形の崩壊」などと言い、「中南米諸国で腐敗した権力がいかに国民を苦しめるのか、我々皆がはっきりと見てきた」「職をかけて防ぐことができるなら、100回でもかける」などと、与党との対立の姿勢から入るのは正しくない。合理的な世論形成よりも、政治的扇動効果や存在感の誇示を狙ったのではないかと疑われるに足りる。退任後の政界進出の可能性を残しているなど、現職の検察総長が政治行為をしていると指摘されるユン総長だからこそ尚のことだ。

 捜査庁の設置問題は、刑事司法体系に大きな変化をもたらす事案であるため、政界と検察いずれも慎重で節制された姿勢を失ってはならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/985134.html韓国語原文入力:2021-03-02 18:58
訳C.M

関連記事