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[コラム]検察改革は“時代精神”、ユン検察総長が逆戻りさせることはできない

登録:2020-12-21 09:29 修正:2020-12-24 08:03
ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏 
 
2017年の大統領選挙、民主党の「権力機関改革」公約に注目 
「捜査権と起訴権を分離し、検察と警察の牽制と均衡を調整」 
「検察は起訴・公訴維持のための2次的・補充的捜査権を持つ」 
他の全ての候補も「強力な検察改革」を約束
ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏//ハンギョレ新聞社

 停職2カ月の懲戒処分を受けたユン・ソクヨル検察総長に対し、裁判所は22日の審問を経て、執行停止の可否を決定する。裁判所が執行停止を受け入れれば、ユン・ソクヨル総長は直ちに復帰する。受け入れなければ停職のまま裁判が進められるだろう。ユン・ソクヨル総長が自ら検察総長職を辞任する可能性はあるだろうか。ユン総長は懲戒委員会の発表直後、「憲法と法律に定められた手続きに従って過ちを正す」と宣言した。自分が退けば検察が政治権力に屈服することになり、今後検察は「生きた権力」を捜査できなくなると考えているようだ。

 ところが、ユン・ソクヨル総長が一つ勘違いしていることがある。それは、自分が最後まで耐えてこそ検察の政治的中立性と独立性を守ることができると確信していることだ。

 ユン・ソクヨル総長の進退と文在寅(ムン・ジェイン)政府が推進する検察改革は、何の関連もない。ユン・ソクヨル総長に対する処分と高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の発足を巡るごたごたは、偶然時期が重なっただけで、二つの事案の間には因果関係はない。

 共に民主党は、公捜処の発足に続き、捜査と起訴を完全に分離する内容の「2段階検察改革」案づくりに乗り出す方針だ。検察改革の焦点を「人」ではなく「制度」に合わせているのだ。

 ユン総長が検察総長に復帰しようがしまいが、検察総長職を辞任しようがしまいが、文在寅政権と共に民主党の検察改革は予定された手順に従って着実に行われるものと予想できる。

 文大統領は2017年の大統領選挙で「高位公職者不正捜査処を設置して検察の権力の顔色をうかがう捜査を遮断」し、「捜査権と起訴権を分け、検察と警察の牽制と均衡の原理がきちんと作動するよう、検察・警察の捜査権を調整」すると公約した。また「検察は原則的に起訴権とともに起訴と公訴維持のための2次的・補充的捜査権を持つ」と約束した。検察が1次捜査権、直接捜査権を持てないようにするという意味だ。

 他の候補たちも一様に「強力な検察改革」を公約に掲げた。ホン・ジュンピョ候補(当時、自由韓国党)は「検察と警察を対等な捜査機関として認定し、相互監視を体系化」すると述べた。「政治検察を撤廃し、改憲を通じて警察に令状請求権を付与する」ことを約束した。「特別監察官の権限強化で大統領周辺の不正を徹底的に遮断する」とも述べた。

 アン・チョルス候補(国民の党)は高位公職者不正捜査処の新設を約束した。「検察の恣意的な起訴権行使に対する統制を強化する」と述べた。ユ・スンミン候補(当時、正しい政党)は高位公職者不正捜査処を設置すると約束した。検察の捜査権と起訴権を分離し、捜査は第三の機関である捜査庁が担当するとした。シム・サンジョン候補(正義党)も高位公職者不正捜査処の設置と検察・警察の捜査権調整を約束した。

 5人の声が一致したのは、検察改革が大韓民国の時代精神だからだ。

 検察改革が時代精神になったのは、検察の“黒歴史”のためだ。独裁や権威主義政権の時代、公安部の検事たちは国家安全企画部(国家情報院の前身)や警察が被疑者に過酷行為をするという事実を知りながらも目をつぶった。特捜部の検事たちは、大統領府の民情首席室や警察庁刑事局調査課から降りてくる「下命捜査」を行いながらも、恥ずかしく思わなかった。

 検察はむしろ、政権の機嫌を取るためにあらゆる仕事をいとわなかった。民生経済侵害事犯という名目で物価の取り締まりをした。ラーメンに工業用の鉄油を使ったと主張し、ラーメン会社の社長らを多数拘束した。「子どもを安心して学校に通わせる運動」という名分で未成年者を雇った風俗店を取り締まった。検察は政権の忠実な下僕だった。「我々は犬だ。噛めと言われれば噛む」と嘆く検事たちもいた。

 1997年12月に政権交代が起こり、雰囲気が少しずつ変わった。大統領の任期は5年だったが、検察権力は特に任期がなかった。検察は大統領が代わるたびに「過去の政権の不正捜査」と「生きた権力に対する捜査」を交互に掲げ、絶対的な既得権を維持する技を発揮した。

 時間が経つにつれ、徐々に検察権力が政治権力より優位に立ち始めた。まさに今がその頂点と言える。しかし、頂上は下山の始まりでもある。

 2022年3月9日の大統領選挙に出馬する野党候補が、高級公職者犯罪捜査処を廃止し検察・警察捜査権を過去に戻すと公約できるだろうか。できないだろう。検察改革は始まったばかりで、誰もその方向を逆戻りさせることはできないからだ。

ソン・ハニョン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/polibar/975116.html韓国語原文入力:2020-12-21 02:30
訳C.M

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