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[社説]「ワクチン議論」で核心をつかず的外れな答えをする韓国政府

登録:2020-12-24 06:18 修正:2020-12-24 07:45
ファイザーとビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンの資料写真/ロイター・聯合ニュース

 新型コロナウイルスのワクチンの導入に関する議論がますます広がっている。政府・与党の主張と野党や一部メディアの主張が大きく違ってみえ、これを見守る国民は心苦しく不安にならざるをえない。ワクチンの問題は、国民の生命と安全、そして日常の回復に直結する事案であるだけに、「政治的悪用」を警戒するのは当然だ。しかし、国民の不安を解消しなければならない責任のある政府が、国民感情からかけ離れた態度を示し、事態をむしろ悪化させている。

 中央災害安全対策本部は23日の会見で「最近、社会にワクチンを世界で最初に接種しなければならないかのように、1位を競争をするような雰囲気が形成されており、防疫当局としては強い懸念を示す」と明らかにした。他の国々のワクチン導入のニュースを中継放送するかのように報道する一部メディアの態度を批判したものとみられる。意味は分かるが、表現も現実認識も極めて不適切だ。韓国国民は政府に「世界発の接種」を要求したことはない。政府が安全性が検証されたワクチンを必要なだけ適時確保できるかを問うているのだ。国民の耳には“的外れな答え”に聞こえる。

 政府は、ワクチン導入の数量と時期について明確な答えを出せずにいる。この日も韓国が唯一契約を結んだアストラゼネカの1次供給量が75万人分にしかならないというあるメディアの報道について、「詳細な内容は製薬会社と(結んだ)秘密保持条項などにより公開は難しい」とだけ明らかにした。1次供給量が75万人分なのかどうかより重要なのは、全体の1100万人分の供給の日程だ。詳しい内容の公開が難しいのであれば、大まかな展望程度は示さなければならないのではないか。

 政府は最近、ワクチンの安全性を先に検証するのが重要だという言葉ばかりを繰り返している。専門家は、安全性の問題を過度に強調すると、ワクチン自体に対する信頼を損ね、接種回避につながりかねないと警告する。政府のこのような態度は、「導入は先制的にし、接種は慎重にする」というこれまでの態度とも異なる。安全性が確認されれば必要なだけ適時接種できるということなのか問わざるを得ない。

 ワクチン確保の競争で後れを取ったのであれば、これを明確に認め、より一層積極的にワクチン確保に乗り出すのが、国民の信頼を回復する道だ。今のように何度も責任を回避しようとするかのような姿勢を示せば、国民の不信と不安だけが強まることになる。それこそ「ワクチンの政治化」になる可能性があることを、政府は肝に銘じなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/975655.html韓国語原文入力:2020-12-24 02:42
訳M.S

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