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ワクチン確保の遅れで不安高まる中…「遅れてもいい」という韓国政府

登録:2020-12-24 02:54 修正:2020-12-24 09:09
十分な量を早期確保できていない政府 
安全性を盾に、責任回避に汲々 
専門家「導入はまず攻撃的に 
安全性は接種時期を決める際に問題とすべき」
22日(現地時間)、セルビア・ベオグラードのウイルス研究所の関係者が、初荷となるファイザー-バイオエンテックのコロナワクチンを車から降ろしている=ベオグラード/ロイター・聯合ニュース

 韓国政府は、新型コロナウイルス感染症の流行初期にワクチン確保に向けた交渉を急がなかった。そのせいで十分な量のワクチンが韓国に導入される時期が不明確なのではないかという不安が高まっている。ついにはこれが大統領府と政府与党の責任を問う政争へと拡大している。これについて政府は「ワクチンの安全性」を確認することが最優先課題だとして、積極的な防衛に乗り出した。しかし感染症の専門家は、ワクチンの安全性は導入時ではなく接種時に問題とすべきだとし、「対応が遅い」との批判が高まっていることに対し、政府が責任逃れにばかり汲々としているのではないかと指摘している。

 23日、中央事故収拾本部(中収本)のソン・ヨンネ戦略企画班長は定例ブリーフィングで「最近、ワクチンを世界で最初に接種しなければならないかのように競争するような社会的雰囲気が作られつつあることに対し、防疫当局として大きな憂慮を表する」と述べた。続いて「コロナワクチンは開発過程がかなり短縮されているため、安全性(の検証)が重要だ。先に接種を開始した国で発生する問題を1、2カ月観察する機会を持てたことは非常に幸いだと思う」と付け加えた。ワクチンの国内導入時期をめぐり疑問が大きくなっている中で、「接種はやや遅れてもよい」という「的外れな回答」を行ったのだ。

 政府は先に、ワクチンの共同購入のための国際機関「COVAXファシリティ」と、国外の製薬会社アストラゼネカ、ファイザー、モデルナ、ヤンセンファーマを通じ、4400万人分のワクチンを確保したと発表している。しかし購入契約を済ませ、国内への導入時期が来年2~3月と特定されているワクチンは、アストラゼネカのものだけだ。政府は、ファイザー、ヤンセンとは今月中に、モデルナとは来年1月中に実際に契約を結ぶ予定だが、導入時期については各製薬会社との守秘義務条項などのため、公開は難しいと語った。一部のメディアが「アストラゼネカのワクチン1000万人分のうち、2~3月に供給されるのは75万人分にとどまる」と報じたことについても、同じ理由で語っていない。

 このような状況にもかかわらず、政府は米国や欧州と韓国の状況は違うということのみを再度強調し、非難をかわそうとしているようだ。ソン班長は「米国などでは、事実上ワクチン以外にとれる防疫戦略があまりない状況のため、ワクチンにほとんど全力投球してきた」とし「このような国を韓国が反面教師とするのは、やや不適切」と一蹴した。しかし今は第3波のピークがいつなのか分からない状況であり、政府が「安全性の確認」ばかりを強調しても、国民の不安を鎮めることは難しいと思われる。

 高麗大学安山病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は「現在までに、国外での接種の過程でワクチン接種を中止するほど深刻な副作用の事例は報告されていない」とし「(政府が強調する)安全性はもちろん重要な問題だが、それは導入時期ではなく接種時期を分ける問題で、導入は積極的に行うのが正しい」と指摘した。そして「最近、政府を批判する側がアストラゼネカのワクチンの安全性を、政府与党側が他の製薬会社のワクチンの安全性を問題視するような様子がよく見られる」とし「ワクチンをめぐる政争が安全性に対する信頼の低下につながると、特定のワクチンに対する忌避現象が生じ、結果的にようやく手に入れたワクチンも使い切れない可能性がある」と述べた。

 政府がこれまでの対応に対する評価をしっかりと行い、今後のワクチン導入計画はより積極的に打ち出すべきだという提案もなされている。嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授(感染内科)は「開発中のワクチンを果敢に先行購入するための政府内の意思決定構造や法制度的装置、予算確保権限などを今からでもしっかりと確保しておかなければ、今後のワクチン導入交渉は順調にはいかない」と述べた。

チェ・ハヤン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/975669.html韓国語原文入力:2020-12-23 20:29
訳D.K

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