大統領府が新型コロナウイルスワクチンの導入に後れを取っているという批判に連日敏感に反応している。22日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が4月からワクチン・治療剤開発および物量の確保を13回も指示したという内容を公開した大統領府は、23日にも「ワクチンTF(タスクフォース)から大統領府が手を引いた」というあるメディア報道に反論した。事実関係が異なったり、過度な批判と疑惑が多い点を考慮しても、大統領府のこのような対応は不安になった民意をなだめるには不十分であるとみられる。結果的に手元に確保したワクチンがないというのが問題の核心だ。何をどこから誤ったのだろうか。
1.制度・予算の不備、結局大統領府が決断すべきだった
韓国政府はこれまで、ワクチン導入に向けた交渉と確保の過程で困難を繰り返し説明してきた。ファイザー、モデルナなど多国籍製薬会社がワクチン開発に失敗したり、ワクチンの副作用が現れても責任を負わないという条件を要求したため、政府がこれを受け入れられなかったという。ワクチン開発製薬会社が絶対的に有利な立場である状況で先行購入するためには、仕方なく高い金額で契約を結ばなければならないが、韓国にはこうした不確実さを甘受してまで積極的に判断し、責任を負う法的根拠と予算がなかったと、政府は主張している。与党関係者は「法と予算がないため、結局大統領府が司令塔になるしかない構造だ」と述べた。つまり、大統領府がこのような制度的限界を先に認識し、不確実なワクチンでも戦略的に購入する決定を下すべきだったということだ。各省庁が“後始末”を懸念し躊躇した場合、最終責任を負う“司令塔”の役割を果たせるのは大統領府しかないからだ。専門家たちが早くから新型コロナの冬季大流行の可能性を警告し、ワクチンが「ゲームチェンジャー」だと主張したにもかかわらず、耳を傾けなかったことも残念な点だ。
2.K-防疫への過度な期待感
与党関係者の話によると、政府はこれまで「社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)」など防疫指針を強調する一方、韓国産の治療薬の開発を督励することに力を注いできたという。治療薬が開発されれば、効果的に感染病被害を減らせると判断したからだ。文大統領は今年10月、SKバイオサイエンスを訪問した際、「治療薬の開発も早い成果を見せている」とし、「セルトリオンは抗体治療剤を開発し、臨床最終段階である第2相と第3相を同時に進めており、GC緑十字が開発した血しょう治療剤も臨床第2相に入り、今年中に患者治療に常用できることを期待している」と述べた。いわゆる「K-防疫」とともに「K-バイオ」への期待があったわけだ。「K-バイオ」は治療薬を国内で開発し、多く輸出しようというビジョンに近い。
しかし、保健医療専門家らは、治療薬よりはワクチンの方が感染病の終息にはるかに効果的だとみている。共に民主党のある保健政策専門家は「ワクチンは予防策だが、治療薬はすでに感染した患者のためのものであるため、医療スタッフの人員確保など社会的費用が引き続き投入される問題がある」と述べた。すなわち、新型コロナの感染拡大に歯止めをかけ、ソーシャル・ディスタンシングのレベルを引き下げるためにも、政府がワクチンの確保という優先的な目標を明確にすべきだったという指摘だ。
3.マスクの品薄状態に似ているが、爪痕はより深い可能性も
今回のワクチン問題は、今年2月のマスクの品薄による混乱を連想させる。当時、文大統領はマスクが手に入らず困っている様子を見て、「きちんと準備もせずに購入できると国民に知らせてどうする」と参謀陣を強く叱責した。ワクチンの確保も似たような様子だ。大統領府の主要関係者は「(大統領の指示後)ワクチン4400万人分の確保につながった。まだ契約する物量が残っており、スピードを上げて物量を確保するためにあらゆる努力を傾けている」と述べた。大統領の叱責を受け、急いで収拾に乗り出したわけだが、問題が浮き彫りになってから事前の予測と判断に問題があったことが明らかになる形が10カ月前とあまり変わらない。
しかも、マスク不足は政府の積極的な生産奨励で短時間に混乱を鎮めることができたが、ワクチンは催促したからといって簡単に成果を出せる領域ではない。大統領府がもっと深く考えなければならない点だ。