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[寄稿]国立大学と専門大学の学費を無償化しよう

登録:2020-06-23 21:52 修正:2020-06-24 10:19

 コロナ禍、第4次産業革命も、韓国の大学の垂直序列構造を緩和できないだろうし、学閥地位世襲構造を揺さぶらることもないだろうし、最上位圏の大学進学を賭けた競争も決してなくすことはできないだろう。

 過去20年で大学の垂直序列は深刻化し、それは首都圏への人口集中と重なった。ソウルの名門私立大が、概して所得5分位出身の学生で満たされる教育不平等がさらに深刻になった。閉校になる大学の後処理に没頭するのでなく、大学教育の質的向上のための策を出さなければならない。

 未来統合党のキム・ジョンイン非常対策委員長が「大学教育を根本的に変えなければならない」として、教育課程改編のために国会に「高等教育審議委員会」の設置を主張した。経済的効率性の観点で高費用低効率の韓国の大学教育改革の必要性を論じた。高等教育政策は、文在寅(ムン・ジェイン)政府の最大弱点だ。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は、大学改革と学閥主義打破の刃を振るったが、結局入試制度の変更という龍頭蛇尾に終わり、文在寅政府は刃を振るいもしなかった。

 大卒者の半分が自分の専攻を生かせていないという調査結果を見ると、韓国の大学教育は社会的要求と深刻に乖離していて、一流大学入学に向けた過度な競争は国民皆に苦痛を与えている。新型コロナの災難のために非対面講義が一般化され、「すべての大学がサイバー大学になった」という自嘲が交わされ、大学の存在自体に対して懐疑が広がっている。実際、コロナ禍がなかったとしても、10年以内に地方と首都圏の小さな大学は門を閉める可能性が大きい。

 しかし、コロナ禍、第4次産業革命も、韓国の大学の垂直序列構造を緩和できないだろうし、学閥地位世襲構造を揺さぶらることもないだろうし、最上位圏の大学進学を賭けた競争も決してなくすことはできないだろう。過去20年で大学の垂直序列は深刻化し、それは首都圏への人口集中と重なった。ソウルの名門私立大が、概して所得5分位出身の学生で満たされる教育不平等がさらに深刻になった。首都圏はすでに“優秀な”20~30代の青年を真空清掃機のように吸い込み、企業も地方で良い人材を得ることができず首都圏にさらに集中している。

 過度な私教育費負担、高等学校の教室崩壊、青少年の危険なメンタルヘルスなど、初等・中等教育で発生するすべての問題は入試と関連していて、入試は完全に大学垂直序列構造の支配を受ける。垂直序列化は、優秀性促進教育ではなく、逆に大学と学生の実力競争を阻害している。すべての大学が教育部や報道機関の大学評価に血眼になっているが、その評価は10等が9等になる程度の変化にすぎず、入学成績ではなく教育投資によって世界に認められる大学や学生が出てきたという証拠もない。

 研究中心の大学育成のためのブレイン・コリア21(BK21)事業、地方大学育成のための各種支援も20年間続いているが、研究中心の大学が果たして構築されただろうか?むしろ全国の学生数の2%程度にしかならない国立のソウル大、私立の延世大、高麗大の3大学に対する政府支援金が、高等教育支援総額の10%を占めるほどに、政府は一流大学選好、首都圏集中をさらに強化する役割を果たしてきた。非公立大学にこれほどの集中資源を投与して、国家は公教育をどうしようというのか?

 高等教育政策は教育政策の次元を超越する。西欧国家が大学教育を無償化し、私立大学中心の米国ですら韓国より公立大学数が多く財政支援も多い理由は、大学教育が国家のインフラと連結されていることを知っているからだ。4次産業革命と人工知能がすべての働き口をなくすという主張も疑わしいが、青少年の能力を発揮させる機会の保障、不平等緩和、学閥地位世襲の遮断、国土バランス発展などの価値は依然として有効で、だからこそ国家と政治家は教育問題に、単なる苦情の解決、付け焼き刃の処方で対処してはならない。

 高等教育の80%を私学に依存し、国家と社会のために必要な人材を首都圏最上位の私立大学に預けてきた現在の高等教育体制を変えなければならない。新型コロナ時代に製造業の重要性が再浮上したので、地方大学-企業クラスターの再構成の観点で、地方のすべての国立大学を無償化し、優秀な人材を誘致して就職も保障しなければならない。産業政策と技術人材の育成に対する長期ビジョンにより、高熟練技術者養成のための専門大学学生の学費も国家が負担しなければならない。学歴別賃金格差を縮小し、年功序列ではなく職務給制に転換し、技術者優待政策を展開し、大学の看板の需要をより減らさなければならない。多くの私立大学は、統廃合あるいはネットワーク構築をして生きる道を探すよう誘導しなければならない。

 コロナ禍は質の低い韓国の大学教育全般を揺さぶるだろうが、新しい高等教育体制は外からのショックによって自動的に得られるものではない。優秀な学生と教授陣が、地方の拠点都市ごとに産業需要、未来の社会的需要に応じる学習、研究単位に構築されてこそ、高等教育の生態系が生き返る。公正、民主主義、公平性、合理的競争などすべての価値は、大学垂直序列構造、学閥地位世襲構造とは両立できない。閉校になる大学の後処理に没頭するのでなく、大学教育の質的向上のための策を出さなければならない。

//ハンギョレ新聞社
キム・ドンチュン聖公会大学NGO大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/950639.html韓国語原文入力:2020-06-23 19:36
訳J.S

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