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[コラム]トランプに公開の場で聞くべきこと

登録:2019-11-14 02:55 修正:2019-11-14 07:49

トランプ大統領は、北朝鮮核問題で意味ある進展を実現するよりも、韓国政府を圧迫して防衛費分担金を多く得ることの方が、有権者の票を得るうえでずっと効果的という政治的計算をしているように見える。米国にとって何が本当に重要なのか明確に問わなければならない。

トランプ米大統領が8日(現地時間)、選挙遊説のためジョージア州に向かう直前、ホワイトハウスのサウスローン(南の庭)で取材陣の質問に答えている=ワシントン/ロイター・聯合ニュース

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が述べた朝米協議の「年末期限」が近づいてきているが、協議を再開するための水面下での接触の努力はこれといって見られない。大統領府のチョン・ウィヨン国家安保室長は先週末、「米国が非常に積極的に北朝鮮を説得していると聞いている」と明かしたが、朝米間で真剣な対話が行われている兆候は見いだせない。むしろ北朝鮮は機会あるごとに「時間が無駄に費やされている」として、米国と韓国への非難を強めている。

 ドナルド・トランプ米大統領は来年11月の米大統領選挙前に北朝鮮の核問題で明確な成果をあげ、歴史的な朝米関係の正常化を実現する意志を持っているのか、大変疑わしい。金正恩との「個人的信頼」を強調し、見せるための協議は維持していくが、北朝鮮が先に譲歩しない以上、交渉の突破口を開くほどの真剣な提案をするつもりはないように見える。

 一時、北朝鮮の非核化行動、例えば保有中の大陸間弾道ミサイル(ICBM)をデモンストレーション的に解体するなどの行事がトランプの再選キャンペーンに大きく役立つという観測があったが、今の雰囲気では米大統領選に北朝鮮問題を活用する可能性はそれほど大きくない。むしろ韓国政府を圧迫し、在韓米軍の防衛費分担金を大幅に引き上げた方が、有権者の票を得るのにはるかに効果的という政治的計算をしているように読める。

 トランプ大統領は、北朝鮮の核問題を現状のまま引きずってもそれほど悪くないと判断しているようだ。核と大陸間弾道ミサイルの実験を中止させ、象徴的ではあるが豊渓里(プンゲリ)核実験場を閉鎖することで、過去数十年間どの米国大統領も果たせなかった「さらなる状況悪化」を阻止したと主張している。しかし、北朝鮮の核問題に「現状維持」はない。より良くなるかより悪くなるかだけで、状況はそこに止まってはいない。現状維持を望んだ瞬間、北朝鮮核問題は悪化の一途をたどりやすい。まさに今こそが、その危険が顕在化する時期ではないかと思う。このような状況にもかかわらず、トランプ政権が北朝鮮核問題に真剣にアプローチせず、韓国政府は遠くからこれを見守るように立っているだけなのは、非常に危険に思える。

 近ごろ毎週のようにソウルを訪れるトランプ政権の外交安保高官らが「北朝鮮の核」問題ではなく「防衛費分担金」と「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」ばかりに言及しているのは、明らかに正常ではない。年末の時限は近づいているが、朝米協議の突破口をどのように切り開くか、これについての韓米協議は一体どこで行われているのか。もちろん、ソ・フン国家情報院長が主導して両国の情報当局間の水面下での議論が行われているだろうという推測はできる。しかし、情報収集と政策判断を厳格に分ける米政府のシステムのもとでは、国情院が前面に出る北朝鮮問題の協議は限界を持たざるを得ず、ホワイトハウスと国務省の政策樹立に決定的な影響を及ぼすことは難しい。

 米国は昨年の5倍にものぼる年50億ドル(約5兆8千万ウォン)の在韓米軍防衛費分担金請求書を韓国政府に突きつけた。単なる「交渉カード」と片付けることはできない。ニューヨークタイムズは最近、「過去数十年間の米軍の海外駐留は人材と財源の莫大な浪費であり、(平和のための)交渉が終わるまで待つのは災いの延長にすぎないというのが、トランプ大統領の基本的な考え方」と報じた。クルド族に対する何の保護装置もなしにシリア駐留米軍を簡単に撤退させたように、韓国が莫大な防衛費を払わなければ、いつでも在韓米軍削減カードを切ってくると見るのが現実的だろう。「同盟の価値」が単に金に換算される時期に入ったのが「トランプ時代」の特徴だ。

パク・チャンス論説委員室長//ハンギョレ新聞社

 これまで韓国政府は、朝米協議の進展を助けるために、独自の主張をするというよりも静かに後方から支援する役割を自らすすんで担ってきた。数日前に開かれた文在寅(ムン・ジェイン)大統領と5党代表の大統領府晩餐会で「韓国政府は南北問題により主導的に取り組むべき」という正義党のシム・サンジョン代表の発言に、文大統領は「朝米協議が完全に決裂したならば処置しただろうが、朝米会談が進み、米国が足並みを揃えてほしいというから、ここまで来た」と語った。

 いまや韓国政府が声を出すべき時だ。北朝鮮の核問題ではなく「50億ドルの分担金」に没頭するトランプ政権に、いま本当に重要なものは何なのかを公開の場で問わなければならない。過度な「防衛費分担金増額」要求は韓米同盟を危うくし、北朝鮮核問題の解決を困難にするだけだということを、明確にトランプ政権に悟らせる必要がある。

パク・チャンス論説委員室長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/916908.html韓国語原文入力:2019-11-13 17:53
訳D.K

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