安倍晋三首相が起こした“経済挑発”の目標は何だろうか。安倍政権の「半導体材料輸出規制発表」が、先月末に大阪で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議の閉幕直後に出てきたという事実が示すことは明確だ。安倍首相は、G20開催の成果を国内政治の好材料として活用しようとした。しかし、力を入れて主催したG20は、閉幕の翌日に南-北-米首脳の電撃的な板門店会合にスポットライトを奪われ、全世界の耳目は朝鮮半島に集まった。安倍としては、出し抜かれた気持ちだっただろう。安倍政権は直ちに“報復”の刃を抜いて韓国に向かって駆け寄った。
朝鮮半島の急速な冷戦体制瓦解は、安倍政権にとっては災難のようなものだ。2012年、二度目の政権についた安倍首相が戦後最長期政権を継続しているが、朝鮮半島の緊張がその決定的な役割をしたことは言うまでもない。安倍政権は、政治的危機の度に北朝鮮の核・ミサイル試験で造成された緊張局面を活用し、苦境を脱出し支持率を引き上げてきた。それが、昨年の平昌(ピョンチャン)五輪以後にはっきり感じられた朝鮮半島の緊張緩和で、政治的に使う“外生変数”を永久になくす境遇に置かれた。安倍の夢は、平和憲法を変え、日本を“戦争する国”にすることだ。明治維新以後、常勝疾走しアジアを支配した過去の栄光を再現することが安倍の夢だ。その目標を成し遂げるには、平和憲法改正に反対する国内世論を制圧しなければならない。世論の流れを変えるには、北東アジアの緊張と葛藤の持続が欠かせない。
ところが、昨年の南北首脳会談と朝米首脳会談以後、このような葛藤構造が解体される兆しが高まっている。そのうえ、今度は板門店で3カ国の首脳が一度に会った。安倍政権としては、決して歓迎できない構造的変化だ。何としてでも朝鮮半島を対決局面に戻すことこそが、安倍政権には死活がかかった問題だ。安倍首相が今月4日“経済報復”の理由として「戦略物資の対北朝鮮流出」を掲げたことは意味深長だ。文在寅(ムン・ジェイン)政府の強力な反発に一歩後退したが、この発言は、安倍がはるか先まで見通していることを見せてくれた。安倍政権は、今後南北和解が進展し経済協力が本格化する場合、南北経済交流が北朝鮮の武器開発につながるという論理を前面に出し、南北協力を妨害しようとする可能性が高い。
この点に日本右翼と韓国保守の戦略的利害関係の一致があらわれる。韓国の保守勢力は、南北の対決と朝鮮半島の緊張を存立の根拠としてきた。北朝鮮の脅威を前面に出し、韓国国民の安保不安を刺激して、そうすることで作った不安感を利用して既得権を維持し育ててきた。朝米対話と南北和解は、その安保既得権の土台を揺さぶっている。韓国の保守勢力は、このような流れを何としてでも阻止し、逆転させようとしている。日本右翼と韓国保守の関心は、デカルコマニーのように似ている。韓国保守のイデオロギー機関紙である朝鮮日報をはじめとする既得権勢力が、安倍の経済挑発を糾弾するどころか、反対に肩を持ったりそそのかして、その波紋の責任を文在寅政府に押し付ける理由がそこにある。
安倍政権が経済挑発で韓国経済に打撃を与えることは、日本経済にとっても打撃とならざるをえない。安倍政権の経済挑発は、一種の自害恐喝だ。損害を甘受しても、文在寅政府を揺さぶることが自分たちの長期戦略に役立つと見ているわけだ。しかし、安倍政権の自害恐喝は成功しえない。韓日経済はもちろん、世界経済が鎖のように絡まっていて、どれか一つを切り離せば、その波紋がすべての所に及ぶ。しかも巨視的観点で見れば、朝鮮半島の冷戦解体はもはや後戻りのきかない必然的経路を踏んでいる。日本右翼と韓国保守は、この巨大な変化を阻止しようと、想像できるあらゆる手段を動員するだろう。数日前、フジテレビの論説委員が文在寅大統領弾劾に言及したことは、日本右翼の本心がそっくりあらわれたケースだ。韓国保守の胸の内も違わないだろう。反動の力は、新しいものを創造することはできなくとも、創造を遮ったり破壊する力はある。歴史を後戻りさせようとする日本右翼と韓国保守のこの苦闘に、すべての国民が目を大きく開いて対処しなければならない。