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[インタビュー]『主戦場』の監督「日本の右翼は米国を通じて世界の認識の変化狙う」

登録:2019-07-23 06:32 修正:2019-07-23 08:27
慰安婦ドキュメンタリー『主戦場』のミキ・デザキ監督 
 
「自分の映画が慰安婦問題における“挑戦的映画”となることを望む」 
韓国人にも不都合だが考えるべき問題投げかける
慰安婦問題を取り上げたドキュメンタリー『主戦場』のミキ・デザキ監督//ハンギョレ新聞社

 「安倍政府は“人権”問題を“韓日両国の対決”にすり替えてきました。韓国に対する日本人の憎悪と敵対感が深まり、支持層が結集する効果を狙っています。しかし、日本人が強制徴用や慰安婦の歴史についてよく知っていたらこのようなことが可能だったのでしょうか。被害者の声を排除すると、人権蹂躙の問題は隠蔽され、国家間の外交問題へと観点が切り替わってしまう誤りが生じます。2015年、朴槿恵(パク・クネ)政権の韓日慰安婦協定がまさにそのような誤りの産物です」

 日本軍慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー『主戦場』(25日に封切り)を制作したミキ・デザキ監督(36)は17日、江南区CGV狎鴎亭(アックジョン)で行った約1時間のインタビュー中、“人権”という言葉を二十回以上使った。最近、安倍政府が韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決に対する報復措置と経済制裁を断行したことについても批判し、「慰安婦問題と同一線上にある人権問題」だと強調した。

 日系米国人で、日本で英語教師として働いたこともある彼は、「Racism in Japan 日本では人種差別がありますか?」というユーチューブ動画をアップロードしたことで、日本の右翼の攻撃を受け、その過程で日本軍慰安婦問題を初めて報道した植村隆・元朝日新聞記者に対する同様の攻撃について知った。「日本の右翼はどうしてこんなに慰安婦問題に敏感になるのか?」という疑問の答えを探すため、彼は日本の右翼関係者約30人を直接インタビューして映画に収めた。

慰安婦問題を取り上げたドキュメンタリー『主戦場』のミキ・デザキ監督//ハンギョレ新聞社

 日本の右翼は、彼のインタビュー要請に快く応じたのだろうか。「彼らが主催したシンポジウムに出席し、私が上智大学で勉強する大学院生だと言ってインタビューを要請しました。その後は電子メールのやり取りをしましたが、承諾を得るまで『映像を前もって見せてほしい』という要求をめぐり折衷したことを除いて、特に問題はありませんでした。彼らが問題を提起したのは、映画が公開された後でした」。これに先立ち、今年4月に日本で映画が公開された際、右翼らは上映反対記者会見を開き、訴訟を起こすと脅しをかけた。身の安全が危ぶまれるような状況だった。「ツイッターで私の住所を流出しようとするとか、私が反日だと噂を流し、韓国政府から金を受け取ったという陰謀論を展開して、配給会社に抗議の電話をするくらいでした。露骨な暴力はありませんでした。この映画を通じて社会的な知名度が上がったからかもしれません(笑)」

 『主戦場』は日本の右翼をはじめ韓米日の学者や活動家が互いの主張を反ばくし、また再反ばくする形で進められる“論争的映画”だ。日本人でも、韓国人でもない彼の“特別な立場”は映画の観点に大きな影響を及ぼした。「この問題に対して感情的利害関係がないという点が、適切な距離感を生んだようです。“歴史戦争”で誰が勝っても、私には関係ありません。ただし、慰安婦問題があまりにも広範囲な問題だから、両方の話を十分に聞こうというのが目標でした」

 「互いの主張を聞き、知らなかった新しい事実が分かれば、理解の幅を広げることができるのではないか」という願いを込めて作った映画だが、韓日の間に埋められない隔たりが存在することに気づいたという。「『性奴隷』や『強制動員』について、双方が全く異なる概念として捉えていました。それを裏付ける歴史的証拠についても、異なる解釈をしています。どっちにより説得力があるのか、観客が判断するように映画を構成しました」

慰安婦問題を取り上げたドキュメンタリー『主戦場』のミキ・デザキ監督//ハンギョレ新聞社

 映画は2013年、国外で初めて少女の銅像が設立された米カリフォルニア州グレンデール市の事例を通じて、慰安婦問題の主戦場が米国に拡大されていることを示している。「日本の右翼は、米国の見方を変えれば全世界の見方を変えることができると信じています。また、彼らはすでに歴史戦争で勝利したという自信を持っているため、日本の若い世代が慰安婦に対する英語の情報を探しても(すでに知っている情報と)矛盾しないことを望みます。英語のウェブサイトを作り、米国人の親日ユーチューバーを支援することも、そのためです」

 映画は「20万人と推算する慰安婦の数が不正確だ」と指摘するなど、韓国人にとっても100%穏やかではない内容も取り上げている。監督はこの映画が韓日両方で“問題作”になることを覚悟したという。「私なりには一つの結論に向かっていますが、誰もがそれに同意するわけではないでしょう。私はこの映画が挑戦的な映画になることを望んでいます。そのような点で、韓国人がどのような反応を示すか、とても楽しみです」

ユ・ソンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/902767.html韓国語原文入力:2019-07-22 20:30
訳H.J

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