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[寄稿]北朝鮮核仲裁者の条件、南北関係の自律性

登録:2019-04-07 21:34 修正:2019-04-08 07:48
カン・ギョンファ外交部長官とマイク・ポンペオ米国務長官が会って握手している=ワシントン//ハンギョレ新聞社

 2回目の朝米首脳会談決裂後、膠着状態に陥った非核化交渉が重大な局面を迎えている。今週、平壌とワシントンでそれぞれ開かれる北朝鮮の最高人民会議第14期1次会議と韓米首脳会談が、交渉の再開と状況悪化を分ける分岐点になりそうだ。この重大局面で、韓国の仲裁者としての役割が改めて注目されている。一部には、韓国が仲裁者の役割をすることが適当なのかとの疑問を提起する声がある。

 北朝鮮から「韓国も当事者ではないのか」という主張が出てきた。もっともな話だが、韓国が北朝鮮核問題の当事者だとしても仲裁者の役割をできないということにはならない。南-北-米3者間の非核化議論過程で、朝米間の意見の差異が発生したので、これを解消するために韓国が仲裁に立つのは自然なことだ。多者交渉で、特定国家や集団、あるいは個人が根本的には当事者の位置にあっても特定局面では仲裁の役割を遂行するケースは珍しくない。

 米国側からは「韓米は同盟である以上、米国側に立って北朝鮮を説得するべきなのに、なぜ仲裁しようとするのか」という不満も出ている。これまた穏当な主張ではない。完全な非核化のための米国の対北朝鮮提案が合理的で現実性があるならば、当然韓国政府は米国案に従うだろうが、そうでない部分があると判断すればその案を調整するために米国と協議するのは主権国家として当然だ。その協議が時には北朝鮮との折衝のための対米説得になることもありうる。

 事実、現在の非核化交渉で韓国の役割に対する真の疑問は「仲裁者概念」ではなく「韓国が仲裁者の役割を遂行できるだけの力量を持っているのか」だろう。皆が周知しているように、韓国の仲裁者の役割は北朝鮮を説得できてこそ可能だ。簡単に言えば、韓国政府が北朝鮮に対して言ったとおりにうまくはかどればいいのだが、それは南北関係の発展を通じて蓄積した相互信頼があってこそ可能な話だ。

 しかし現実は、南北関係が韓米関係に過度に従属していて、韓国が北朝鮮を説得できるかは心配だ。今日の南北関係は、韓米間の徹底した対北朝鮮制裁共助が必要だという名分の下に束縛されており、発展の契機を見いだせずにいる。国連の対北朝鮮制裁に抵触しない南北交流分野ですら、ブレーキがかかっている。さらに開城(ケソン)工業団地入居企業が過去3年間にわたり放置された自分の工場の状態を確認するために北朝鮮を訪問することさえも、米国の反対で実現できずにいる。工場の機械を稼働させようということでもない単純訪問なのに、それすら許されないのだ。北朝鮮に対する人道的な医薬品支援も、米国が「ノー」といえば不可能な状況だ。果たして、私たちに南北関係の自律空間が存在するのかを自問しなければならない状況だ。そのような状況では、北朝鮮が韓国を見つめる理由がなくなる。

 果たして、このような状況で韓国政府は何を元手に北朝鮮を説得できるのか? 南北関係を韓米関係の枠組みの中に拘束しようとする米国の意図は、南北関係が非核化議論や朝米協議より一歩たりとも先んじてはならないという米国の強迫観念を見せる。しかし、私たちが記憶喪失症にかからなかったとすれば、1年前の経験を忘れはしなかっただろう。1年前、戦争の暗雲が垂れこめた朝鮮半島で、韓国政府は平昌(ピョンチャン)冬季五輪を契機に劇的に南北関係の発展を成し遂げ、それを踏み台として非核化交渉の出口を開き、朝米首脳会談まで実現するのに重大な貢献をした。

 このように南北関係の優先的な発展が、非核化交渉を促進し朝鮮半島の平和を進展させてきたのが昨今の歴史だ。しかし今、南北関係は韓米関係の捕虜になって自己の役割をまともに果たせなくなっている。こうした中で、韓国政府は膠着状態に陥った非核化局面を突破するために、仲裁の重い役割を再び引き受けた。今回は、トランプ大統領が文在寅(ムン・ジェイン)大統領に金正恩(キム・ジョンウン)委員長に対する説得を依頼して引き受けた仲裁役だ。しかし、米国は口先だけで北朝鮮の説得を注文してはならない。トランプ大統領は、まず文大統領が金委員長を説得できる条件を提供しなければならない。その条件とは、すなわち韓国政府が南北関係の発展を主導できる自律性だ。

イ・ジョンソク元統一部長官・世宗研究所首席研究委員//ハンギョレ新聞社

 しかし、韓国政府の立場としては、南北関係の対米自律性は米国の恩恵による措置を通じて確保すべき対象ではない。そもそも南北関係は、韓国政府が自律的に判断する領域だ。政府はこの点を確実に留意しなければならない。政府は必要に応じて、米国と緊密に協議したりもするが、国益増進と朝鮮半島の平和のためにどんな選択をするかは韓米ワーキンググループではなく、韓国の国家安全保障会議(NSC)が決めなければならない。政府が文在寅大統領が明らかにした新しい朝鮮半島体制を大胆に推進する意志が本当にあるならば、困難でも南北関係の発展に対する自主的決定権を回復することに取り組まなければならない。

イ・ジョンソク元統一部長官・世宗研究所首席研究委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/889066.html韓国語原文入力:2019-04-07 19:09
訳J.S

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