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[寄稿]少子化は総体的国家失敗の生きた教科書

登録:2018-08-14 23:38 修正:2018-08-15 07:29
キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長//ハンギョレ新聞社

 種々の調査によれば、有配偶出産率はそれほど低くなく、未婚・非婚が少子化のより根本的な原因だという。所得分布上、上位10%の結婚比率は82%だが、下位10%の青年のうち7%しか結婚していないというので、貧困と経済不安のために実際に青年が家族秩序の外部に留まっているわけだ。

 韓国の昨年の合計出産率は1.05人。新生児数は35万人台まで落ちた。韓国歴代最低を記録しただけでなく、OECD(経済協力開発機構)会員国家の中で圧倒的な最下位だ。産婦人科、幼稚園、結婚式場、学園が門を閉めるだけではなく、消費が死んで、市場が閉じられ、地方都市が消滅して、年金が早く枯渇するなど国家の大災難が迫っている。

 韓国はすでに1983年から合計出産率が人口の現状維持のために必要な2.1人以下に下がった。ところで、とんでもないことだが1995年まで政府は「産児制限」政策を展開し、外国の専門家たちの批判を受けて「出産奨励」政策に切り替えた。事実、出産奨励政策はすでに1980年代中盤に立てるべきだった。それでもそれから20年がさらに過ぎて、2005年になって少子化高齢社会委員会が設置され、政府次元で対処し始めた。

 ところで、2006年から昨年まで100兆ウォン(約10兆円)以上の予算を少子化対策に注いだが、その金はほとんど空に飛んで行った。政策効果で問い詰めれば、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府以後、歴代政府の少子化政策と財政支出こそが、李明博(イ・ミョンバク)政府の4大河川政策を凌駕する総体的失敗だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も少子化問題の深刻性を認め、「既存の考えと政策を乗り越えよう」と促した。しかし、現政権が出した仕事と生活の均衡、安定的で平等な女性の働き口、雇用・住居・教育改革などの政策も相変らず「靴を履いて足の裏を掻く」対策のようだ。

 少子化は、両性平等、保育と教育、雇用、住居など、ほとんどすべての社会・文化・経済問題が集約された社会問題の総合版だ。産業化と女性の社会進出が本格化した以後、西欧のすべての国はこの問題を体験したし、その過程である程度の解決法と成果を作り出しもした。深刻な職場の性差別、家族中心主義と婚外子出産を罪悪視する文化など、韓国の歴史文化的条件を除けば、韓国の少子化原因は他の国と大きく変わらない。

 韓国の少子化は、結婚忌避と結婚後の出産忌避の二つの原因が結びついたもので、一言で言えば、韓国の青年が「子供を育てて生きていく」未来を確信できない社会になったためだ。すなわち、保育負担、働き口不安、住居負担、私教育負担が複合累積的に作動する無限競争の韓国社会で青年たちが「個人的に」合理的な選択をしたので超少子化現象が現れたのだ。

 ところで、さらに決定的な理由は結婚忌避と結婚不能だ。既存の種々の調査によれば、有配偶出産率はそれほど低くなく、未婚と非婚が少子化のより根本的な原因だという。そして、所得分布上の上位10%の結婚比率は82%だが、下位10%の青年の7%しか結婚していないというので、貧困と経済不安のために実際に青年が家族秩序の外部に留まっているわけだ。結局、雇用、住居、教育での両極化、不平等の深化は、結婚および出産に非常に甚大な影響を与えるマクロ構造的条件であることが明らかだ。

 だが、過去20年間の政府の経済社会政策はその反対に進行された。特に不動産価格浮揚、保育と教育の私的負担拡大は、結婚を先送りさせあきらめさせる政策だった。従って出産支援、難妊施術支援、養育手当ての増額などの政策は、ほとんど「焼け石に水」だった。

 事実、今まで政府や政界は問題の核心に触れないのみならず、意図的にそれを見ないようにしてきた印象がある。そのために、もう少し早くまともに実行していれば数十兆ウォンで成果を見ることができたことを、今からでは数百兆ウォンの予算を注いでも解決がかなり難しくなり、ついには経済崩壊と国家崩壊を憂慮する状況まできた。これは国家の持続可能性と未来のためにどれほど重要な懸案だといっても、政治-政府-政策がまともに作動しなければみじめな失敗になりうることを見せる事例だ。

 すでに1930年代に少子化に直面したスウェーデンの執権社民党は、経済学者であり社会学者であるミュルダールを中心に党次元の対策を樹立し、結局社会構造全体の改善のための「予防的社会政策」の概念で児童手当て、住宅補助金、無償保育などの政策を施行した。その結果、スウェーデンは出産率の向上だけでなく福祉国家という“家”を作ることができた。政策政党、責任ある官僚集団、そして公益研究の生態系造成だけが問題解決の道だ。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/857601.html韓国語原文入力:2018-08-14 19:09
訳J.S

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