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[寄稿]デモより政治、政治より政策

登録:2018-02-27 23:37 修正:2018-02-28 12:06
キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長

 今、韓国は一段階質的な変化を敢行しなければならない。それは社会経済政策インフラの構築だ。現在のような脆弱な政策インフラ状況では、不平等、高齢化、脱産業化、地球温暖化、東アジア安保不安といった途方もない内外からの挑戦に対抗することはできない。

 平昌(ピョンチャン)冬季五輪の感動的な多くの場面と南北交流の薫風は、朝鮮半島の平和と統一も韓国の力で勝ち取ることができるという自信を持たせた。しかし、祭りが終わって外国人が自国に戻った今、私たちは冷厳な日常と再び向き合う。

 経済指標が好転したという便りが聞こえるが、青年たちは相変らず失業、住居不安、そして既成秩序の壁の前で憂鬱だ。韓国GMの廃業脅迫とトランプの貿易報復圧迫にすべての国民は不安だ。今から1年前、寒い冬の冷たいアスファルトの上で朴槿恵(パク・クネ)弾劾を叫んだ1700万人の市民が文在寅(ムン・ジェイン)政府を誕生させ、この政府が変化の希望を与えているが、その2倍の3千万人が街頭に出てきたとしても、青年失業、両極化、住居貧困問題を解決することは容易でないだろう。

 革命の情熱と祭りの歓喜は瞬間だが、現実の権力関係、法と制度は避けられない厳酷な日常だ。財閥オーナーの反社会的犯罪は犯罪ではないという判事、この政府が行なうすべてのことに“理念”をかぶせる第一野党、国民を“犬豚”と考える高位官僚らが治める国は、デモだけでは変わらないだろう。

 だから制度政治の変化がどうしても必要だ。失業青年、企業リストラの被害者、住居貧困市民の苦痛を最も敏感に受けとめられる人々で国会が満たされなければならない。だからデモは権力の変化に必ず結びつかなければならない。しかし、制度政治は選挙工学により動く傾向があるので、政治家や政党も票を貰えるテーマに群がりやすい。すなわち、政権が力を持っても、本来の構造的課題は後送りされる可能性が大きい。そして、政党と政治家に意志や力があっても、それがビジョン、正確な現実認識、そして精巧な方法論に基づかなければ当初の意志とは反対の結果を作り出すこともある。

 したがって政策基盤のない政治は非常に危険だ。政策は政治に大きく左右されるが、それ以上のもの、すなわち“国家のもの”だ。少子化、高齢化社会への備え、大学教育、自殺防止政策などの社会政策の例を見れば、比較的政治性が弱い政策でも過去20年余りの間に数百兆ウォンの予算を支出しても、状況をさらに悪化させた事実がある。4大河川に数十兆のカネをばら撒く過程で協力した公務員や専門家を問責することは容易だ。しかし、社会経済事案は原因も非常に複雑なので、誰かに責任を問うことは難しい。こういう複雑だが将来の国家の運営を左右する重要な懸案を処理する能力が、すなわち国家の能力だ。

 政策が政治より重要な理由は、政策樹立の根拠になる国家の資料が整理・蓄積されるシステムがなければならず、それに基づいて政策を樹立する公共心ある専門家がいなければならないためだ。資料のインフラが構築されて、公共心ある専門家が育まれるためには、長い“蓄積の時間”が必要で、教育が正しく成り立たなければならない。政治家本人が政策専門家なら最も良いが、そのような可能性は大きくないため、こうした集団は別途育成されなければならない。

 ろうそくデモをはじめとする過去の韓国における大衆抵抗は民主化の動力だった。しかし、抵抗運動が問題解決意志を持つ政治勢力と政策代案を作り出すことはできなかった。既存の国家官僚、学者などの専門家は、腐敗して無責任で創意性と専門性にも大きな欠陥があった。そのために大衆の抵抗は概して最終責任主体である政権に対する失望に帰結された。

 輸入した技術と理論に依存して韓国がこれまで来ただけでも偉大なことだ。しかし今、韓国は一段階質的な変化を敢行しなければならない。それは社会経済政策インフラの構築だ。現在のような脆弱な政策インフラ状況では、不平等、高齢化、脱産業化、地球温暖化、東アジア安保不安といった途方もない内外からの挑戦に対抗することはできない。政権の意志だけで、この複雑で挑戦的な課題を解決することはできない。過去の二つの民主政府の経験、政府部署、国策研究所、大学、民間の政策インフラ、知識生産実態に対する総体的な点検が至急必要だ。

 外交安保もそうだが、社会経済政策は外国のものを輸入・加工して使うことはできない。それは必ず韓国の歴史や国内の資料を動員し、独自の理論、すなわち創意的な“概念樹立”能力を備えた専門家がいてこそ可能だ。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/833961.html韓国語原文入力:2018-02-27 19:23
訳J.S

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