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[寄稿]競争的試験を考え直す

登録:2017-12-05 23:03 修正:2017-12-06 09:41
11月23日、仁川国際空港公社の西館大講堂で開かれた'仁川空港の非正規職の正規職への転換方策に対する公聴会'で、発表者と討論者たちが発言している=チョイルジュン記者//ハンギョレ新聞社

 試験は正規職たちが主張したように、「土の匙をくわえて生まれてきた人々」が受容できる正当性と客観性のマジノ線だった。しかし、試験が果たして最善の方法だろうか?成功した正規職たちの主張とは異なり、機会は決して平等でない。競争的試験に通った人が、必ずしも公共業務に最適な人物だという保障もない。

 文在寅(ムン・ジェイン)政府の1号政策である仁川空港の非正規職の正規職転換が暗礁に乗り上げた。非正規職の正規職化討論会の席で、正規職職員たちは「苦しい就職準備生の時期を経て数百倍の競争率を突破して今の席に立っているのに、なぜこうした過程を経ていない非正規職がきわめて容易に正規職になろうとするのか」として「公正社会」のスローガンを叫んだ。ソウル地下鉄の正規職化方針も難関に突きあたった。「20代の青春をすべて抵当に取られた」正規職職員たちは、「客観的基準なき正規職化」に反発し、自分たちが「逆差別」を被る一般職への転換は中断しろと叫ぶ。

 常時的業務に従事する公企業の非正規職労働者の正規職化! 政府の原則と意志は正しいものだったが、実際に蓋を開けてみると「機会の平等」、「正当な差別」という談論の前に「不公正な」、「密室野合」の一種になってしまった。公企業が私企業と同じように経費節減だけのために間接雇用と非正規職採用を乱発してきた過去20年余りの“積弊”が問題の原因だ。もちろん、公企業入社のための試験準備を合理的“投資”と感じ、“犠牲の対価”の補償を受けようとする公企業の青年正規職労働者に連帯の精神だけを説くことはできない。

 公企業の正規職化には種々の争点があるが、私たちは今回の件で採用・昇進過程での試験制度を考え直すようになった。単に機能だけが要求されるものならば、確かに資格試験こそが必要な職員を選抜する最善の方法だろう。しかし、公共的マインドが若干でも必要な職場ならば、試験と短時間の面接だけで職員を選抜できないだろう。入社以前の教育、および社会活動経歴、仕事に対する熱意や公益マインドも重要だろう。しかし、利潤の追求とは距離がある私たちの社会のいかなる公組織も、試験以外の採用・昇進評価方法を用意できていない。実際、試験をなくした場合には、力を持つ者の特恵とコネが強く作用して、一層良くない結果を産んだ。

 だから、試験は正規職たちが主張したように、「土の匙をくわえて生まれてきた人々」が受容できる正当性と客観性のマジノ線だった。しかし、試験が果たして最善の方法だろうか?過程の「客観性」が、以後のすべての成果を保障できようか? 事実、試験はすべての人に公正な機会を与えはしない。大学もそうだが、ロースクールや公務員試験も経済的に苦しい人には準備する余裕がない。すなわち、成功した正規職たちの主張とは異なり、機会は決して平等でない。そして、教員採用試験以後の教師と、過去の割当時期の教師を比較する時にしばしば議論されることだが、競争的試験に通った人が必ずしも公共業務に最適な人物という保障もない。試験は単に制限された“機能”だけを評価するもので、熟練や業務適合性がさらに重要な資格条件になることもありうる。

 そして試験を通過した正規職たちが機能面で優れるとしても、同一業務に従事する正規職と非正規職の賃金格差が必ずしも正当なものではなく、その格差が十年、いや一生続くことにはいかなる根拠もない。そのうえ、公企業の費用削減の必要のために非正規職を増やしたが、正規職の高賃金と特権はその相当部分が非正規職の犠牲上に立っているという点も明らかだ。

 競争的試験は採用と昇進のための一つの評価方法に過ぎないが、韓国ではそれが絶対的で唯一の方法になった。そのため試験に通った人は過度な特権意識を持ち、失敗した人は敗北感を持って生きていく。公務員、公企業には必要な機能と共に公共マインドも備えた人がなるべきなのに、高い報酬と職業安定性が保障された結果、その業務に適合していないのに機能だけが優れた人々で満たされる傾向もある。その結果「試験共和国」の勝利者は全国を「競争」と「能力」の論理で埋め尽くしてしまった。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長//ハンギョレ新聞社

 就職と昇進で平素の業績と資質を評価するためには、多くの時間と費用、討論が必要だ。韓国で国家主導の一度きりの競争的試験が合理性のマジノ線になった理由も、企業など民間組織での評価基準と哲学がなく、合理的評価のための費用を国家や企業が惜しんだ結果だ。私たちの社会のすべての領域で、敗者復活の機会を開くためには、業績評価体制の全体に手を入れなければならない。試験に1、2回失敗した人も、業績と熱意を見せることにより再挑戦できる機会を持てるようにしなければならない。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/822160.html韓国語原文入力:2017-12-05 19:15
訳J.S

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