本文に移動

[寄稿]教育に対する欲望と戦えば負ける

登録:2018-01-30 23:32 修正:2018-01-31 07:52

 金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政府の教育“公共性”の理想と価値は「優秀性と競争力」の談論の前に大きく揺らぎ、この巨大な“需要者”らの欲望の前に結局崩れた。欲望は、法と制度、正確に言えば権力構造の産物だ。欲望と正面から対抗せずに、冷却させて出口を開かなければならない。

 今年3月から小学1~2学年の放課後英語授業が禁止される。幼稚園や保育園での英語教育も禁止しようとしたが、父母の反発で1年猶予した。小学1~2学年の英語授業禁止は、2014年3月に制定された公教育正常化法に従ったもので、2018年2月で猶予期間が満了するために本格適用されるという。しかし、禁止措置を撤回してほしいという父母の要請が大統領府の請願掲示板に押し寄せている。直ちに英語講師が失職することになり、かえって私教育負担だけが増えるという憂慮も提起される。

 李明博(イ・ミョンバク)政府で英語没入教育が強調され、それに先立ち世界化ブームが起き始めた1995年の6次教育課程で小学校での英語教育が始まったので、今の政府が過去のすべての遺産を背負うことになったわけだ。英語早期教育が良くないという学者の批判も十分に提起されたし、公教育課程に私教育の要求を引き込むことが正しくないことも事実だ。ところが、今回のことは過去20余年間、特に参与政府(盧武鉉政府)の教育公共性強化のための三不政策(寄付入学・高校序列化・大学別入試の禁止)、すなわち“禁止”基調の政策と大学および父母間の鬼ごっこが再び思い出され、非常に心配だ。

 韓国における教育熱はごうごうと燃え上がる溶鉱炉のような欲望の塊りであり、崖から落ちまいとする必死の苦闘なので、どんなものでも溶かしてしまう力を持っている。父母の欲望は、大学入学、すなわち学閥問題に集約される。教育政策に関するいかなる理想も価値も、この欲望の前では“現実”を知らない高尚な談論になり、いかなる入試制度の変更も当初の理想や目標を達成したことがない。その理由は、韓国において教育は“教育”ではなく、社会的地位獲得、階層移動、そして就職問題であるためだ。教育は子どもを“労働者”ではない“士”の字の職業、あるいは管理者にさせるなり、世間から軽蔑されずに生きていけるようにさせたい父母の戦場だ。すなわち教育は、政治そのものだ。

 過去の金大中、盧武鉉両政府の教育“公共性”の理想と価値は、「優秀性と競争力」の談論の前に大きく揺らぎ、この巨大な“需要者”らの欲望の前に結局は崩れた。革新学校拡大など若干の進展がなかったわけではないが、この間に「金の匙」たちの名門大学独占を通した富と地位の承継現象は一層強固になり、私教育費負担はさらに増え、学校はさらに荒廃し、父母の絶望は強まった。高校学点制の実施など今の政府の試みは良いが、“大学入試”という巨大な障壁の前でそれは隔靴掻痒に終わるだろう。

 すべての入社試験に英語の成績を必須にしておいて、小学校での英語教育禁止とはどれほど不適当な代案か?「大学の看板」以外にいかなる社会的評価基準もない状態で、私教育先行学習を禁止して、特別目的高校、自律型私立高をなくそうということが、どれほど無力な代案か?深刻な学閥差別構造をそのままにして、大学序列化を緩和しようということがどれほど見込みのない理想か? 低学歴労働者が毎日労災事故で死んでいくのを見ている子どもたちに、「大学がすべてではない」という“進歩”派の人々の主張はどれほど遠い国の話か?

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長//ハンギョレ新聞社

 欲望はもとから存在するものではなく、法と制度、正確に言えば権力構造の産物だ。欲望と正面から対抗するのではなく、冷却させて出口を開かなければならない。社会政策関連制度は、すべてが互いに絡まっているので、一つだけを引き出して施行しても問題は解決されない。すべての関連制度の束は、緻密な準備を経て同時に推進されなければならず、確固たるビジョンとロードマップが必要で、「この道に沿って行けばこのような結果につながる」ということを見せるべきだ。ビジョンと制度改革の束が同時に提示されなければ、官僚たちは慣行どおりにするだろうし、父母は大混乱に陥って政府を恨むだろう。

 すべての“禁止”政策は臨時処方だ。大学入試制度には決して答がない。大学改革の展望を先に提示しなければならず、大学改革は必ず労働市場改編、すなわち賃金格差の縮小と新しい人材養成問題と結びつかなければならない。これを同時に推進するビジョンがまだ準備されていないならば、まずは教師たちを行政から引き離し、“教育”だけに専念できるようにして、学校で疎外された子どもたちに希望をあたえる諸般の支援をしなければならない。そうすれば改革の動力が下から形成されるだろう。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長、新たな百年研究院長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/830087.html韓国語原文入力:2018-01-30 18:53
訳J.S

関連記事