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[寄稿]韓国は“IMF管理体制”から抜け出したか?

登録:2017-11-08 00:13 修正:2017-11-08 07:52

 ろうそくデモは「政治的主権」喪失に対する怒りの噴出だった。本当に幸いなことに肯定的な信号だ。しかし1997年にIMFが強要した論理と、それに便乗して利益を手にしてきた“現地人”らは健在だ。市場、競争をあたかも自然の法則であるかのように説明してきた論理の下で、大衆は“経済主権”喪失状態にある。

 1997年の外国為替危機、国家の経済主権喪失という大金融恐慌から20年の歳月が流れた。金大中(キム・デジュン)政府は最も短期間にこの為替危機から抜け出したという賛辞を受けた。果たしてそうだろうか。韓国は確かに急病は治ったが、慢性疾患を抱いて暮らす患者になったのではないだろうか。今日の韓国は、富の両極化、不平等、そして階層固定化と新世襲社会の症状を深刻に病んでいて、この病は主に外国為替危機とその後の構造調整で始まった。

 資産格差や所得格差で韓国は米国に次ぐ世界最高の不平等国家になった。韓国は上位10%が所得の47%を持つ国、上位1%が全国の土地の半分を占める国になった。非正規雇用の一般化、青年失業、30~40代の大都市居住者の住居貧困の相当部分はすべて私たちが国際通貨基金(IMF)の要求事項に従った結果であった。その上、韓国は青少年の半分が両親の能力が自身の未来を左右すると考える新世襲社会になった。

 事実、外国為替危機は天から落とされた罰ではなかった。危機の兆候は、金泳三(キム・ヨンサム)政府前後の資本自由化、開放、自律、民営化、グローバル化のスローガンが騒がしい時から現れていた。経済協力開発機構(OECD)への加入で先進国になったと考えた金泳三政府は、その重要な転換期に状況を読み対処する能力を持ち合わせていなかった。脱工業化、後期開発独裁時代、中国と後発国の追撃に対抗し、既存の生産体制を全面再編しなければならなかったのにそうできなかったし、北朝鮮との対話を続けて北方政策を押し進めなければならなかったのに“金日成(キム・イルソン)弔問波動”を口実にその門を閉ざし、労組のストライキを“体制転覆”行動だと攻撃し、下からの経済民主化要求を遮断した。

 それだけだろうか。人口の絶壁と高齢化のリスク、学齢人口の減少、首都圏集中の強化と地方消滅の兆候が見え始めたのに、そのどれにもまともに備えることはできなかった。87年から97年までの10年間は、韓国の資本主義と民主主義が質的な変身を敢行すべき決定的な転換期だったが、韓国の政界、官僚集団、学者は国家未来のためのプロジェクトを稼動できず、財閥の経済力集中と無責任な外貨過多借入を傍観していた。

 政治指導者と同じくらい責任を持っている集団は経済官僚だった。米国の経済学者ジョセフ・E・スティグリッツは、韓国の優秀なエリート官僚らが傲慢で無理なIMFの要求に対し反論提起すらせずに100%受け入れた、苦々しい場面を知らせてくれた。一部の経済官僚は、国民の資産である公企業を海外の投機資本に譲り渡す過程で莫大な利益を手にした。

 誰もがよく知っていることだが、経済主権を喪失した代価はきわめて悲惨なものだった。金大中、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の民主化措置や福祉政策は、大衆の「経済主権喪失」状態を挽回するには力不足だった。金融機関をはじめとする韓国の主要大企業の株式は外国資本の手に渡り、彼らに莫大な配当を用意する財閥経済システムが強化され、半失業者や非正規職として生きていくほかない労働者は苦痛の責任を誰にも問えなくなり、普通の国民は政権の交替が自身の暮らしを改善できるわけではないことを実感した。

 韓国だけの現象ではない。今やグローバル化と新自由主義は勢いを失い、再び国家の時代が来た。米国のトランプの当選、日本の安倍の勝利、英国のブレグジット、ドイツでの新ナチ党の議会進出など、世界的右翼ポピュリズムは経済主権を喪失した中下層民の怒りの表現だ。彼らは愛国主義という“毒薬”を飲んだものの、国家はまだ彼らのものではない。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院院長、新たな百年研究院長//ハンギョレ新聞社

 

 韓国のろうそくデモは、「政治的主権」喪失に対する怒りがこれらの国とは異なる方向に出てきたものだ。本当に幸いなことに肯定的な信号だ。しかし、1997年にIMFが強要した論理と、それに便乗して利益を手にしてきた“現地人”らは健在だ。市場、競争をあたかも自然の法則であるかのように説明してきた論理の下で、大衆は“経済主権”喪失状態にある。

 過去20年間、韓国は事実外国為替危機の陰の下にあった。今私たちは、国家情報院による権力壟断の歴史に毎日接し「政治主権」回復の期待を持っている。しかし、国際金融資本-財閥-経済官僚が持ち去った「経済主権」をどのように取り戻すのかに対する集団的議論はまだ始まっていない。新しい社会経済システム構築のための議論を再び始めなければならない。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院院長、新たな百年研究院長

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/817936.html 韓国語原文入力:2017-11-07 19:07
訳J.S(2157字)

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