自由韓国党が北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)労働党中央委員会副委員長の平昌(ピョンチャン)五輪閉幕式出席を猛烈に批判し、極端な言葉を吐き出している。北朝鮮の代表団長である彼を「天安艦襲撃事件」の主犯と目名指ししているからだ。「韓国の地を踏むと同時に即射殺しろ」とか「連続殺人犯を緊急逮捕しろ」などの険悪な発言と「肉弾阻止」という言葉まで出てきた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対しては「反逆行為」 「利敵行為」 「北朝鮮と共犯」という表現まで使った。野党が南北関係懸案で政府を批判することはできるが、こうした形の無責任な態度は良くない。感情におぼれた極端な対応が、薄氷を踏むような朝鮮半島情勢の役に立つだろうか。
もちろん、閉幕式の“お客様”の資格であっても、金英哲の訪問を不快に思う国民も相当いるだろう。金英哲が天安艦襲撃当時、「偵察総局長」だったことも事実だ。しかし、彼を天安艦事件の「主犯」と断定する根拠は明らかでない。民軍合同調査団は、天安艦の沈没が「北朝鮮の魚雷によるもの」とは明らかにしたが、どの機関、どの人物が主導したかまで特定することはできないと結論を出した。国家情報院も23日、国会情報委で「(背後にいたという)推測は可能だが、明確に金英哲が指示したとまでは言えない」と明らかにした。米国と韓国の政府が、彼を独自制裁の対象に上げた時も、天安艦事件と直接連係させてはいない。彼に対する制裁は金融制裁であって旅行禁止ではなく、今回の訪問自体が問題になることでもない。
朴槿恵(パク・クネ)政府が2014年の南北軍事会談当時、北朝鮮側の首席代表だった彼を拒否しなかったのも同じ理由からだろう。セヌリ党も当時には、彼を天安艦事件と連係させなかった。むしろ南北対話の進展を期待すると論評した。自由韓国党は「その時は正しかったが今は間違い」という二重定規を使ってはならない。北朝鮮の意図が「韓国内の葛藤助長」にあるとも言うが、それなら一層冷静で超党派的に対処することが公党の姿勢であろう。自由韓国党はこの問題と関係のない国会司法改革特別委まで空転させたが、そうした態度こそが北朝鮮の意図に巻き込まれたという指摘を避け難い。
金英哲副委員長は、現在北朝鮮で南北関係の最高責任者だ。朝鮮半島問題と南北関係の進展について、具体的で実質的な対話ができる人物という話だ。自由韓国党の要求どおり、確実でない過去の行跡を問題視し始めれば、北朝鮮と対話することはまったく不可能になる。南北関係の発展と朝鮮半島の緊張緩和に役立つならば、どんな人物とも顔を合わせることを拒否する理由はない。