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[寄稿]朝鮮半島という鏡

登録:2018-01-21 19:17 修正:2018-01-22 07:56

 平昌オリンピックが迫る中、朝鮮半島では緊張緩和のための様々な努力が続いている。万一戦端が開かれた時に最大の犠牲を払うことになる韓国と北朝鮮両国の政府が戦争を回避するために動くことは当然である。北朝鮮が核兵器とミサイルの開発をすぐに止めるというのは楽観的過ぎるだろうが、戦争をさせないために政治と外交があることは常に確認しなければならない。

 日本から事態を見ていて不思議に思うのは、日本政府とメディアが朝鮮半島における戦争回避の努力に対してきわめて懐疑的で冷笑的であることだ。北朝鮮は核を持った邪悪な独裁国家であり、話し合いのポーズも核ミサイル開発を進めるための偽装にすぎないというのが日本政府の見方である。北朝鮮に対しては圧力あるのみという安倍政権の政策を主要なメディアも支持している。

 しかし、万一戦争が始まった時に日本を守るための現実的な備えがあるわけではない。ミサイル迎撃システムを増強しても、北から飛んでくるミサイルをすべて撃ち落とすことはできない。来年度予算では、自衛隊に長距離巡航ミサイルを導入するための費用が計上される。これにより敵基地攻撃も可能になる。しかし、北朝鮮のミサイルに対しては敵基地を先制攻撃してもすべてを破壊することは不可能であり、この種の軍備増強が日本の安全を高めることにはつながらない。理由は何であれ、核兵器を使う戦争が起これば、日本でも百万を超える死傷者が出る可能性がある。軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は、日本政府とそれを支持するメディアを「平和ボケのタカ派」と表現している。戦争の現実を考えないまま、戦争の危機を煽るという意味である。

 アメリカにとっては朝鮮半島における軍事力行使は1つの選択肢かもしれない。韓国に駐留する米軍人、民間人の犠牲は許容範囲なのかもしれない。しかし、韓国には戦争はあり得ない選択肢であり、隣接する日本も韓国と同じ立場にある。日本の政治指導者は、自国の地理的位置を無視し、アメリカと同じ発想で朝鮮半島危機を見ている点で、決定的な錯誤があると言わざるを得ない。

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 相手が北朝鮮ならどんな暴言を吐いてもこちらが正しいという傲慢も日本政府に蔓延している。河野太郎外相は、国際会議で各国に北朝鮮との国交断絶を呼びかけた。これは外交という活動そのものを否定する奇妙な発言である。また、アメリカの国務長官に対して北朝鮮の粗末な漁船が日本海で遭難し多くの死者を出していることを経済制裁の効果と述べたこれは人命に対する思いやりを書いた非人道的な発言である。

 朝鮮半島は日本の政治家やメディアを映す鏡になっている。政治家たちは正義を追求するヒーローを見ている気になっているが、そこに映っているのは北朝鮮への憎悪に凝り固まり、そのことで自分は正しいと思い込んでいる傲慢な権力者である。まもなく日本では国会審議が始まる。日本の安全と品性に関して正気を取り戻すための議論を期待したい。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2018-01-21 17:09

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/828705.html原文:

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