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[寄稿]正しい危機感とは何か

登録:2017-09-03 23:18 修正:2017-09-04 07:54

 8月29日早朝に北朝鮮が北太平洋に向けてミサイルを発射したことは、日本国内にも大きな衝撃を与えた。北海道、東北、北関東などではミサイル攻撃の警報(Jアラート)が作動し、一部の鉄道は運行を停止した。安倍首相は当初、北朝鮮が我が国にミサイルを発射したと述べた。あたかも、日本が攻撃目標になったかのような騒ぎであった。テレビは通常の番組を中止して、ミサイル関連情報を流し続けた。しかし、日本政府および報道機関の過剰なまでの騒ぎ方には、国民に恐怖心を植え付けるためのプロパガンダではないかという疑問を感じる。

 日本上空を通過したと言っても、大気圏外の上空500キロメートルの高度を飛んだ。安倍晋三首相は、ミサイル発射について「発射直後から北朝鮮ミサイルの動きは完全に把握していた」と述べた。ならば当然ミサイルの軌道や大体の着弾位置もわかるはずである。日本国土を狙ったものではないにもかかわらず長野県以東の広範囲に警報を出したのはなぜか。北関東の3県には警報を出したのに、隣接する埼玉、千葉、東京に出さなかったのはなぜか。国民を恐れさせるためには警報を出す必要があるが、東京の朝のラッシュ時の直前に警報を出せば大混乱が起こるから警報対象から外したのだろうか。

 政府は、ミサイルが日本に害を及ぼす可能性はなかったので迎撃命令を出さなかったと説明した。撃ち落とさなかったのか、撃ち落とすことはできなかったのか、十分な説明はない。万一日本を狙った攻撃であるならば、北朝鮮からのミサイルは数分で着弾するのであり、警報が鳴ってから逃げたのでは間に合わない。また、数分のうちに地下室、地下街に身を隠すことのできる人はほとんどいない。つまり、ミサイル警報は本当の攻撃に備えるものではない。

 北朝鮮のミサイル実験、核兵器開発の動きに対応して、日本国内では「避難訓練」が各地で行われた。避難といっても、警報を聞いた人々が頭を抱えてしゃがみ込むという程度のことである。ばかばかしいとしか言いようがない光景である。太平洋戦争中、当時の日本政府は、国民の自由が奪われているのをいいことに、バケツリレーで焼夷弾の火を消す訓練や竹槍で敵と戦う訓練をさせた。頭を抱えてしゃがみ込めばミサイルの破壊力から守られると宣伝する政府は、太平洋戦争を戦った大日本帝国から何も進歩していない。要するに、日本の政府はミサイルから国民の生命を守ることについて真剣に考えているとは言えない。北朝鮮のミサイルの恐怖を煽ることは、政府に従順な国民を作るためと思われる。

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 もちろん、北朝鮮の核兵器やミサイルの開発は、日本にとっても脅威であり、その程度は高まっている。北朝鮮をインドやパキスタンのような核保有国として事実上容認することは、何としても避けなければならない。今の日本にとって必要なことは、いたずらに脅威を煽ることではない。朝鮮戦争以来半世紀以上北の脅威と向き合ってきた韓国の人々に、正しい危機感とは何か、教えを乞うことだと思う。狭隘な国土、首都への過度の一極集中、原発の立地など、日韓両国は同じ脆弱性を抱えている。本当に戦火が開かれたら、壊滅的な打撃をこうむる。したがって、日韓両国は戦争を起こさせてはならないという死活的な利益を共有している。こうした現実を踏まえて、日韓両国による真の安全保障に関する対話が必要だと痛感する。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2017-09-03 18:11

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/809458.html 原文:

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