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[寄稿]空想的現実主義

登録:2017-12-24 13:49 修正:2017-12-24 19:31

 北朝鮮の核兵器、ミサイルの開発は、日本にとっての脅威である。しかし、この脅威を政治的に利用して、日本の平和国家という路線を変更しようとする動きに対しては、きちんと反論しなければならない。

 来年度予算では、政府は長射程巡航ミサイルを導入する方針を決め、関連経費約22億円を計上した。この政策の背景についての毎日新聞の記事(12月22日)を引用する。

「防衛省は導入の根拠を練り直し、「北朝鮮の脅威からイージス艦を守るため」との「目的」を追加した。核・ミサイル開発を加速化する北朝鮮と関連づければ「世論の理解を得やすい」(防衛省幹部)との狙いだった。実際には北朝鮮のミサイル艇の対艦ミサイルの射程は100~200キロ程度。「イージス艦の脅威にはならず、長射程ミサイルの導入理由としては不十分だ」(防衛省幹部)との指摘もあるが、「北朝鮮の脅威」という金看板が慎重論を抑え込んだ。」

 従来、日本の安全保障政策の基本は専守防衛であった。他国に対する脅威にはならない、他国を攻撃するような軍事力は持たないというのが、憲法9条の下で可能な防衛政策であった。実際には攻撃用兵器と防御用兵器の区別が難しいだろうが、ミサイルの射程距離は重要な基準である。日本が防衛の意思を持って長射程ミサイルを導入しても、こうした市営の転換は東アジアの緊張を増すだろう。

 憲法9条の改正を求める人々の中には、敵国が日本を攻撃するまで何もできないのはおかしい、敵基地攻撃能力が必要だ、先制攻撃も防衛のためなら可能だという主張がある。しかし、日本にとっての脅威である北朝鮮がどこにどれだけの兵器を置いているか、日本は正確に把握できない。第一撃で敵の能力をすべて破壊することができなければ、こちらからの攻撃は敵国からのさらに大きな反撃を招くだけである。北朝鮮が核ミサイルを開発した今、敵基地攻撃は日本に取り返しのつかない破滅をもたらす可能性を伴う。

 そもそも戦争、武力行使は朝鮮半島危機の解決策にはならないのである。北朝鮮と国境を接する韓国では、このことは常識であろう。日本では、武力行使を選択肢と考える観念的、空想的な防衛論がある。こうした空論を唱える人々は現実的と呼ばれ、政治的解決を求める人々は平和ボケといわれる。そうしたレッテルは逆である。高性能の武器を買い込み、攻撃力を強化すれば安心と思う人々こそ、非現実的である。

 年明けから日本の国会では来年度予算の審議が始まる。最大規模に膨れ上がった防衛予算の中身を精査し、憲法9条をなし崩しに破壊するような装備の拡大について歯止めをかけるような野党の追及を期待したい。

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 また、安倍晋三首相は憲法改正について具体的な議論を始める意欲を明らかにしている。来年の通常国会の中で憲法改正発議に向けた議論が加速する可能性もある。この点については、深く、幅広い議論が必要である。安倍首相は憲法改正をそれ自体目的にしているように思える。首相の個人的な趣味で憲法をいじられることは、国民にとって迷惑である。戦後70年続いてきた日本の国の姿を変えるのかどうか、熟慮すべき時である。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2017-12-24 18:00

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/824884.html

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