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[コラム] 「慰安婦合意」の行方

登録:2017-12-28 22:53 修正:2017-12-28 23:29
チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 4月に特派員として日本に来て、市民団体や活動家が主催する「慰安婦」被害者関連セミナーや映画上映会に参加することが何度かあった。被害者が慰安所で体験したことを証言する姿や声を、映像を通じて見て聞くたびに、慰安婦問題について活字で接することとは次元が異なる惨憺たる印象を受けた。率直に言えば、あまりに残酷で、どこかに活字で書くことさえも負担に感じるほどだった。

 在日同胞の朴壽南(パク・スナム)監督が秋に東京の渋谷でマスコミ試写会を開いたドキュメンタリー映画『沈黙―立ち上がる慰安婦』を観た時もそうだった。『沈黙…』は、日本軍「慰安婦」被害者問題が韓日間に本格的に懸案として登場した1990年代に、被害者ハルモニ(おばあさん)が日本に来て行った闘争とイ・オクスンさんの最近の暮らしを扱った映画であった。映画の中で彼女は、1990年代に日本で開かれた集会で「日本軍が乳房を刃物で切った」というような証言をしたが、聞いているだけでも苦痛だった。だが、これも証言の中では比較的強度の低い事例であった。あまりにも苦痛なことが多かったので、それ以上は今でも文字で書くことはできない。

 韓国外交部直属の「慰安婦合意検討タスクフォース」が27日、2015年韓日政府が結んだ慰安婦合意は被害者中心ではなかったという要旨の報告書を出した。日本政府は報告書の発表から僅か数時間後に河野太郎外相名義の談話を出して「合意を変更しようとすれば、日韓関係はマネージ不能になる」という強度の高い警告まで出した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日「先の合意が両国首脳の追認を経た政府間の公式的約束という負担はあるが、私は大統領として国民と共にこの合意で慰安婦問題が解決されることはないという点を今一度明らかにする」と述べた。

 慰安婦合意検討タスクフォース報告書の結論のように、2年前の12・28慰安婦合意は、被害者の声にまともに耳を傾けたものではなかったということに同意する。被害者の苦痛をまともに見回さずに行われた合意の代価は、今きわめて大きな形で迫っていると考える。韓国政府はまだ慰安婦合意を破棄するとか再交渉するとか言っていないが、合意には決定的にヒビが入り、破局に向かっているように見える。

 タスクフォース報告書が発表された以後、すでに悪化している韓日関係の改善はもちろん難しい。苦痛が伴うだろう。平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックに安倍晋三首相が参加する可能性はますます低下しており、日本は韓国にますます非協調的な態度を見せるだろう。韓日間の協力は、北朝鮮の核・ミサイル対応の範囲に限定されることもありうる。

 韓日関係の改善だけに焦点を合わせるならば、慰安婦合意に手をつけないことが韓国にとって現実的な選択であろう。韓国が慰安婦合意の再協議方針を決めるならば、日本は「歴史問題と韓日関係を分けて接近する」という韓国政府の“ツートラック”の立場も拒否しようとするだろう。

 だが、韓国社会が慰安婦被害者の苦痛に耳を傾けず、手も差し伸べないならば、そのことを代行する所はどこにもないだろう。被害者の傷を治癒するための仕事をすると考えた以上、先ずは韓国社会ができることから積極的に推進していく必要がある。国際社会に対して慰安婦問題を提起する市民の運動を、韓国政府が積極的に支援していくことも必要だ。政府は韓日関係が極端に悪化することを防ぐための努力をもちろんしなければならないが、関係悪化にともなう対策も用意しなければならない。困難と苦痛を伴わずに慰安婦被害者の傷を治癒する方法はどこにもない。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/825471.html韓国語原文入力:2017-12-28 19:09
訳J.S

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