最近、国会国防委員会国政監査では、先月23日に米軍の長距離爆撃機B-1Bが東海の北方限界線(NLL)を越えて武力誇示を行ったことを政府が事前に知っていたかどうかをめぐり、舌戦が繰り広げられた。自由韓国党など野党議員らは「政府がB-1B爆撃機の作戦を予め知っていたのか。米軍が韓国政府にも知らせず、作戦を行ったのではないか」と問い詰めた。米軍が朝鮮半島で韓国政府を差し置いて単独で戦争する可能性を示したことに対する政府の対策は何かと追及したのだ。国防部と合同参謀本部は「米軍から事前通知を受けて緊密に協議した」と防御網を張ったが、議論の火種は残っているようだ。
野党が国政監査でこの問題を取りあげた背景に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「韓国の同意なしに朝鮮半島で戦争を決定できない」と述べたことを狙った政治的意図にあるのは疑いの余地がない。だとしても、野党の問題提起を政治的に偏ったものとして無視するわけにもいかない。米軍が朝鮮半島で韓国政府と協議もなしに独断で対北朝鮮先制攻撃など戦争をする可能性があるかどうかは、私たちの生存と直結する敏感な問題であるからだ。もしかしたらこの地で数十万人または数百万人が犠牲になる戦争の惨劇が私たちの意向と関係なく起きる恐れもあるのだ。
米軍が単独に朝鮮半島で戦争を決定できるかどうかについては、微妙なところがある。在韓米軍を動かして北朝鮮を攻撃するためには、韓国と米国の両国の合意がなければならない。在韓米軍司令官が兼職する韓米連合司令官は、両国の大統領と国防部長官の戦略指針を受け、作戦統制権を行使できるようになっている。しかし、朝鮮半島の外の米軍はこのような制約を受けないという見解が多い。北朝鮮が米国本土を脅かす場合、米国の自衛権行使は国際法的に容認されているということだ。バーウェル・ベル前在韓米軍司令官が先日「米国が北朝鮮から明らかな脅威にさらされ、海外にいる軍事資産を利用して北朝鮮を攻撃する際には、韓国の承認が必要ない」と述べたのもこのためだ。
最近、朝鮮半島の戦争危機説は「北朝鮮の完全破壊」と「史上最高の超強硬対応措置」など、米朝の最高権力者の激しい舌戦とかみ合っている。これに加え、リ・ヨンホ北朝鮮外相はB-1B爆撃機の武力誇示に「撃ち落とせる権利」を主張し、米国では「対北朝鮮軍事オプションの検討」説が絶えず流れている。にもかかわらず、実際の軍事行動が容易ではないというのは1994年第1次北朝鮮核危機当時、ビル・クリントン政権が一時は北朝鮮への爆撃を検討したが、結局あきらめた事実からも推測される。それでも米朝の対決構図が強化された状況が放置されて、韓国が傍観者のようになっている現実は残念だ。
約60年前、朝鮮戦争を控えて、米国側は戦争が起これば「昼食は平壌(ピョンヤン)で取って、夕食は新義州(シンウィジュ)で取る」と豪語したという。1950年6月から3年間続いた戦争はそのような豪語がどれだけ根拠のない妄想だったのかを如実に示した。今も事情はそれほど変わっていない。南北間の力の均衡が過去とは全く異なると言う人もいるかもしれない。しかし、朝鮮戦争が多くの人々が犠牲を強いられただけで、朝鮮半島の腰を折って横切る分断線を消すことができなかったのは、当時南北の力学関係とは無関係である。
その時、朝鮮半島の統一を妨げた分断の地政学は今なお健在だ。不幸にも、朝鮮半島は米中の対決構図または韓日米と朝中ロの両勢力の冷戦的対決構図に依然として包摂されている。どちらも朝鮮半島で勢力基盤または緩衝地帯を失いたくと思っている。戦争は最悪のシナリオだ。