来月7~8日に訪韓予定のドナルド・トランプ米大統領の非武装地帯(DMZ)訪問をめぐり、ホワイトハウスが衝突する考慮事項のため決定を下せずにいると、ワシントン・ポスト紙が18日付で報じた。
非武装地帯はロナルド・レーガン大統領(在任1981~89年)時代から、1人を除いては訪韓した米大統領全員が訪問した場所だ。その一つの例外である父親のジョージ・ブッシュ大統領は、レーガン大統領時代に副大統領として非武装地帯を訪れた。1993年当時のビル・クリントン前大統領は「帰らざる橋」まで歩いており、北朝鮮が核兵器を用いれば、「彼らの国の最後になるだろう」と警告した。当時、クリントン大統領の警護チームはひそかに小銃を所持し、停戦協定を違反したという。
北朝鮮の核とミサイルに対し、強い警告メッセージを送ってきたトランプ大統領も前例に従うものと予想されていた。米軍指揮官と共に非武装地帯を見回ること自体が米国の決意を誇示するもので、メッセージ発信にも最適の場所だと思われていたからだ。マイク・ペンス副大統領は4月に訪韓の際、韓米連合司令官などと共に板門店(パンムンジョム)を訪れた。
しかし、同紙は一部の補佐陣が米国大統領の訪問が最高潮に差し掛かった朝米間の緊張をさらに高めかねないと懸念を示していると伝えた。トランプ大統領は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長を「ロケットマン」と嘲弄し、金委員長は「老いぼれの狂人」と応酬し、両指導者の個人的感情の対立も深刻な様相を見せてきた。ホワイトハウスと行政府はトランプ大統領の安全も考慮しているという。日本人拉致被害者家族との面会や韓国国会での演説で、対北朝鮮メッセージを出すこともできるのに敢えて危険な場所に行く必要があるのかという認識だ。
ワシントンポスト紙は、前・現職の政府高官らの間では北朝鮮に対しても、米軍や韓国軍に対しても、明確なメッセージを送るのに非武装地帯よりいい場所はないという意見が多いと伝えた。ダニエル・ラッセル元国務省東アジア太平洋担当次官補は「非武装地帯は増幅機のような役割を果たす」とし、非武装地帯の警戒所から送るメッセージが北朝鮮をさらに恐怖に震えあがらせると話した。
非武装地帯でこれまで通りに荒っぽい言語を駆使した場合、かえって状況を悪化させる恐れもあるという反論もある。息子のブッシュ大統領時代にホワイトハウス国家安保会議アジア担当先任補佐官を務めたマイケル・グリーンは「北朝鮮を相手に予防戦争を考慮するとまで暗示する状態で、米国の大統領が非武装地帯に行ったことはない」と話した。彼は息子のブッシュ大統領が北朝鮮をイラン、イラクとともに「悪の枢軸」と名指ししてから、1カ月も経たないうちに非武装地帯を訪問した際、演説補佐官が強いメッセージを用意しようとしたと伝えた。しかし、過度に挑発的に受け止められる恐れがあるという懸念から、南北鉄道連結と北朝鮮の開放を促す程度の水準に止まったと話した。ワシントンポスト紙は韓国政府側もトランプ大統領の非武装地帯の訪問が北朝鮮の判断を誤らせ、軍事的な対立が激化すれば、平昌(ピョンチャン)冬季五輪に支障を来す可能性を懸念していると報じた。
トランプ大統領は16日の記者会見で、非武装地帯を訪問するかどうかについて細部日程が決まっていないとし、「状況をもう少し見守ってみよう」と話した。