登録 : 2017.10.13 23:12 修正 : 2017.10.14 07:53

イラスト=キム・デジュン//ハンギョレ新聞社
 アウシュビッツを経験した結果、人類は誰も非人間化ないし悪魔化してはならないという教訓を得たかに見えた。だが、最近の欧米圏や日本ないし韓国の保守マスコミの北朝鮮報道を見れば、ホロコーストの悲劇は人類に何も教えられなかったのかとさえ思える。

 現在進行中の北朝鮮と北朝鮮の人々に対する悪魔化は、結局平壌(ピョンヤン)や元山の民間人を大量殺傷する爆弾を何らの呵責もなく落とす潜在的戦犯を育てている。一つの社会を、世界を威嚇する悪魔的指導者に従属する洗脳されたゾンビの群れとして描くということは、非倫理的であり同時に犯罪的だ。

 何日か前、私は息子の学級を引率してアウシュビッツを見学した。息子の学校で実施するホロコースト教育の一環でアウシュビッツを訪ねたのだ。ガス室や被害者の切られた髪で作られた織物を見た時に感じた感情は、言葉で描写することさえ難しい。そのような事を犯すことができる人類に属するということ自体が気まずく感じられるほどだった。人間があそこまで極悪非道になるならば、果たしてこの地球が人間の存在をいつまで持ちこたえられるだろうかとさえ思った。被害者の最後の瞬間を想像すれば、今ここで気楽に贅沢三昧していることが申し訳なく感じられた。

 私にも忘れられない瞬間だったが、私の息子の級友にとっても戦争と虐殺という単語の意味を体験させる希有な機会だった。韓国の子供たちも平和、反戦、非暴力教育の次元で長期休暇にあわせて大邱(テグ)の嘉昌ゴルのように“国父 李承晩”の下手人が保導連盟虐殺という韓国史上最悪のジェノサイドを犯した現場を訪ね、悲痛に亡くなった方々の霊を慰め、国家暴力の醜悪な姿をありのままに見る機会を持つべきではないだろうか?アウシュビッツの一枚の立て札に書かれたジョージ・サンタヤーナの「歴史を記憶できない者、その歴史を再び生きることになるだろう」という名言は真実であるためだ。

 しかしアウシュビッツを見学した時、被害者の苦痛の他にもう一つ私の頭を離れなかったのは加害者の心理だった。アウシュビッツ訪問の前後に私が手に入れられるアウシュビッツ収容所のナチ親衛隊所属看守、管理者の手記や日記、インタビュー記事をすべて読んだ。最も信じられなかったことは、彼らの中には晩年まで「罪悪感はあまりない」と答えた人が想像以上に多いということだ。アウシュビッツ勤務当時には、大多数が罪悪感はもとより問題意識さえも別に感じなかったという。その理由の一つは、彼らがユダヤ人や“アカ”、そして“あえて味方に抵抗する”ポーランド人などの“劣等なスラブ民族”らは人間ではないという教育を徹底的に受けたために、それを信じたということだ。彼らにとって特にユダヤ人の“殲滅”は、人間の姿をしてはいるが実際には害虫に過ぎない存在に対する“清掃”であった。ユダヤ人に対する非人間化、悪魔化はこうして結局虐殺者を産んだのだ。

 アウシュビッツを経験した結果、人類は誰も非人間化ないし悪魔化してはならないという教訓を得たかに見えた。だが、最近の欧米圏や日本ないし韓国の保守マスコミの北朝鮮報道を見れば、ホロコーストの悲劇は人類に何も教えられなかったのかとさえ思える。第1~2次世界大戦の間の戦間期(1918~39年)における欧州極右派のユダヤ人非人間化に劣らない北朝鮮人の非人間化が、メディアで幅をきかせている。ユダヤ人がそうだったように、北朝鮮人が自分たちの生活を送っている正常な人間ではない、一つの“脅威”としてのみ描写される。北朝鮮の国民総生産は米国の軍費の35分の1に過ぎず、北朝鮮が核を持つと言ってもその保有量は米国の核の20分の1にも達し得ない。北朝鮮の核開発が誤った選択だと見ることもできるが、とにかく自己防御のための選択であることは間違いない。力学関係やこれまでのパターンから見ても、北朝鮮が米国とその同盟国を威嚇するというよりは、むしろ米国とその同盟国から脅威を受けていると認識する余地の方が多い。ところが、世界主流メディアの叙述を見れば、北朝鮮は今すぐにでも韓・米・日を攻撃する怪物であるかのように描写される。これが悪魔化ではなければ果たして何か?

 戦間期の欧州極右派は、ユダヤ人を宗教ないし共産主義の“狂信徒”として責め立てた。“狂信徒の群れ”であるユダヤ人が、ヨーロッパの文明を脅かしているという論理であった。今日の世界のマスコミは、北朝鮮人を洗脳教育をされたロボットとして描写したりもする。マスコミだけだろうか? 何年か前にスキャンダルを起こした米国映画『インタビュー』では、北朝鮮の指導者を守る軍人は容赦なく殺してかまわない、考えない機械として形象化された。もちろんいかなる悪魔化も、たとえ誇張された表現を使ってでも現実に存在する一部の事実を理念的に与えられたフレームに当てはめる方式で読者や視聴者の信頼を得ようとする。あえて調べてみれば、特にユダヤ人に対する偏見と敵対が多かった東欧では、ユダヤ人同士の集団結束は原理主義的宗教の形態を取る場合が多かったということまでは事実だった。同じように米・日・韓の敵対や中・ロの相当な覇権主義的形態から自己防御を図ろうとする北朝鮮は、主体思想という一種の強硬左派民族主義を基調とする徹底した理念教育を実施していることまでは事実だ。

 原則上、国家によるいかなる理念強要も決して良いことではない。ところで、果たして大韓民国には国民儀礼など皆に無条件に強要される国家主義的儀礼はないだろうか?日本の進歩的教師たちが、今でも日の丸、君が代に対して苦しい闘争をしているではないか?米国の多くの学校では、毎日の教育課程を星条旗に対する忠誠の誓いで始めているではないか?あえて国家的理念強要を批判するのならば、北朝鮮だけでなく世界中の各国の理念強要形態を同じように批判してこそ正当だろう。北朝鮮という特定集団だけを理念で洗脳されたロボットとして描写することはまさに悪魔化だ。

 ユダヤ人に対する非人間化“メニュー”から絶対に欠かせなかった部分は、ユダヤ人社会の指導者や名望家、有名人に対する個別化された敵対宣伝だった。通常、ナチは“全世界に対する支配を狙うユダヤ人資本家”を非難し、ロスチャイルドなど著名なユダヤ人富豪を名指したりした。『シオン賢者の議定書』などの反ユダヤ主義古典(?)でも、ユダヤ人社会指導者が“世界支配陰謀”を企んでいると叙述されたりする。ナチズムのもう一つの重要な源泉は反共産主義だったが、ユダヤ系ソ連共産党指導者や東欧共産主義者などはもれなく“欧州の未来を威嚇する”怪物として描写された。ナチの想像の世界では、一般ユダヤ人はこうした“大物悪漢”らに無条件に従属するゾンビのような非人間的存在に過ぎなかった。ところで、果たして北朝鮮人に対して世界主流マスコミの消費者が抱かせられる構図はどうだろうか?米国の元大統領であるジョージ・ブッシュは、金正日(キム・ジョンイル)を“小人”と呼んだし、現職大統領のドナルド・トランプは金正恩(キム・ジョンウン)を“リトル・ロケットマン”(little rocket man)と嘲笑する。一つの主権国家の指導者に対して、他国の指導者が身長などの身体的特徴を持ち出して人種主義的色彩の強い名称を使ったケースは戦後の世界史で前例さえ見いだせない。

 韓国の内外を問わず保守マスコミは金正恩を“挑発”ばかりを日常的に繰り返す“悪漢”として描写する。かつてナチにとってロスチャイルドやトロツキーのような資本主義的あるいは共産主義的“悪魔”が“すべてのユダヤ人”を代表したように、主流欧米圏、日本、韓国のマスコミにとって“すべての北朝鮮人”は“魔王金正恩”の単なる下手人に過ぎない。もちろん、世襲権力ということ自体、良いことではない。サムスンの世襲権力も北朝鮮の世襲権力も同じだ。ところで金正恩は本当に単なる“悪魔”なのか?2年前に北朝鮮からの離脱者を対象に実施されたアンケート調査によれば、回答者の63%が多くの北朝鮮住民たちが金正恩を支持していると考えていることが明らかになった。家族農制度を事実上導入するなど合理的経済政策で多くの国民の暮らしを改善させたからということだ。果たしてマスコミはこのような話を各種の“北朝鮮挑発”に比べてどれほど扱っているだろうか?

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学//ハンギョレ新聞社
 悪魔化、非人間化は、結局ジェノサイドにつながる、他者に対する最悪の接近法だ。ユダヤ人に対する非人間化は、ホロコーストという人類最悪の犯罪の一つを準備するうえで重要な役割を果したし、同じ方法で現在進行中の北朝鮮と北朝鮮人に対する悪魔化は、結局平壌や元山の民間人を大量殺傷する爆弾をなんらの呵責もなく落とす潜在的戦犯を育てている。一つの社会を、世界を脅かす悪魔的指導者に従属する洗脳されたゾンビの群れとして描くということは、非倫理的であり同時に犯罪的だ。私たちが新たなホロコーストを防ぐためには、まず相手が私たちと同じ尊厳と理性を持った人間であるという点を認めることからしなければならない。

朴露子(パク・ノジャ、Vladimir Tikhonov) ノルウェー、オスロ国立大教授・韓国学

韓国語原文入力:2017-10-10 19:13
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/813945.html 訳J.S(3966字)

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