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[コラム]金正恩と4人の側近

登録:2017-09-07 23:27 修正:2017-09-08 07:14
北朝鮮の朝鮮中央TVが今月3日に公開した労働党中央委員会政治局常務委員会の様子=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の6回目の核実験を報道した朝の新聞で、一枚の写真が目立った。金正恩(キム・ジョンウン)と4人の「側近」が労働党政治局常務委員会をしている場面だ。水素爆弾の実験が合理的な決定だったことを強調するために北朝鮮が示したものだが、そうは見えなかった。危なげに見えた。

 労働党委員長の金正恩(33)は指図しながら話し、最高人民会議の常任委員長金永南(キム・ヨンナム)(89)、内閣首相のパク・ポンジュ(78)、軍総政治局長のファン・ビョンソ(68)、党中央委員会副委員長のチェ・リョンヘ(67)は手帳に書き取っている。政治局常務委がとてもみじめだ。祖父、父の歳である彼らが「最高の尊厳」の言葉を黙々と書き取っている。

 ゴルバチョフは回顧録で、旧ソ連の没落の序幕だったアフガニスタン侵攻をマスコミを通じて知ったと書いた。政治局候補委員であり農業書記だったゴルバチョフも分からないほど、ごく少数が戦争を決定した。全体主義ヒトラーは何の内部統制もなく個人技であらゆる悪行を犯した。

 国際政治から見れば、一文無しの金正恩が米国に対抗して核にしがみついているのは合理的かつ首尾一貫していると見ることもできる。だが、北朝鮮内部が本当に合理的に回っているのだろうか。歴史に照らしてみると、そうでないというのが常識だ。統制を受けない権力は逸脱する。叔父の張成沢(チャン・ソンテク)が処刑され、異母兄弟の正男(ジョンナム)が殺害される場面がこれを雄弁に語る。

 南の対話の努力が足りず金正恩が核実験を強行したといった類の内在的アプローチは自己卑下的だ。北朝鮮は、ヒトラーや旧ソ連のように表はもっともらしいが、内心虚妄きわまりなく転がっているのかも知れない。金正恩が軌道を離脱しないだろうと油断してはならない。

 小説『南漢山城』で斥和派と主和派はことごとく対立する。金尚憲(キム・サンホン)は「戦いで対抗してこそ、和睦も開かれる」とし、崔鳴吉は「退く場から退くのが道理」という。仁祖はその間に旧正月を迎え、明の天子に向かってお辞儀する礼をする。北朝鮮核関連の事が起きるたびに、片方は強攻せよと言い、もう片方は対話せよと分裂するのは今と大きく変わらない。

 この20年の間、10年は北朝鮮と対話もし、その後10年は戦うように圧迫もした。三番目の10年はどうすべきか。金正恩はヒトラーのように誰彼かまわず当たり散らして来るのに、私たちは20年間使ってきた手を繰り返しているのではないか。対話であれ圧迫であれ、見え据えた手では難しい。10年の太陽政策が必ずしも有効なようには見えず、その後の10年の圧迫は何の結実があったのかわからない。

 すべてのオプションをテーブルに乗せ、原点から冷静に考えてみなければならない。事実これといった手はあまりない。保守側では戦術核の導入程度が、実現可能性に関わらず、カードとして議論してみる価値があるかもしれない。進歩側は局面の転換のための特使派遣程度だ。特使の派遣は時が熟さなければならない。対話するなら土台を変える大きな手を使わなければならない。

ペク・キチョル論説委//ハンギョレ新聞社

 政権が中心になり、圧迫であれ対話であれ、決断力をもって推し進めなければならない。あちこち顔色をうかがいながら、何かやっているふりをするだけでは困る。ややもすると、周辺4強にあちこちへ押され、内部では支持層が離反しかねない。外交に政権の命運をかけなければならない。ただし、戦争をしてはならず、南北の共同繁栄を追求するという大原則は守られなければならない。これは昨年の大統領選挙で国民が文在寅(ムン・ジェイン)政権に託した大義に当たる。

 明・清の交代期に鋭敏に対処した光海君が遼東に出兵した将軍に与えた密旨は「観変向背」であった。変化の推移を綿密に見て方向を定めよという意味だ。何かの主義・主張に縛られるのではなく、現実の情勢を詳しく調べ、朝鮮半島の安寧と民族の繁栄に向けて果断に進まなければならない。

ペク・キチョル論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/810097.html 韓国語原文入力:2017-09-07 20:55
訳M.C(1804字)

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