5月9日、韓国民は文在寅(ムン・ジェイン)氏を新しい大統領に選び、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾、罷免という政治混乱に一応終止符を打った。新大統領の誕生について、日本から感想と今後の日韓協力の在り方について所感を述べてみたい。
まず、隣国の大統領選挙に関する日本の取り上げ方について、一言批判しておく。文氏について、一部の日本の新聞、テレビは、「親北、反日」という形容句を付けた。偏見に満ちた下品な表現に怒りを覚えるとともに、韓国民に対しては申し訳ないと思った。韓国は北との間で武力衝突を起こせば巨大な犠牲が出ることが必至であり、話し合いで事態の収拾を図るという方針を取ることも理解できる。これに対して親北と言えば、いかにも北の核開発に宥和的というイメージを振りまくこととなる。また、国と国の間で利害や見解が異なるのは当然であり、日本と異なる主張をぶつけてくる国を反日と称するなら、反日国は1つや2つではない。
こうした表現は、一部の日本人に見られる自己中心的な世界認識の表れである。特に、歴史認識に関して、安倍政権や保守的な言論人は世界標準に背を向けて、日本人は常に正しかったという天動説的な主張を臆面もなく繰り返している。これは、精神的な幼稚化というしかない。
ではこれからいかにして日韓関係を改善していくべきか。私は、日本政府による慰安婦問題への対応が不十分だと思う。しかし、韓国の指導者が慰安婦問題をめぐる日韓合意を即座に破棄することに、私は賛成できない。それは日本の保守派に韓国攻撃の格好の材料を与えるに過ぎない。また、今の合意以上の対応を日本政府から引き出すことは、政治的にあり得ない。
安倍首相はことあるごとに日本は人権と民主主義という基本的価値を擁護すると外に向かって宣伝している。ここは、安倍首相の発言を逆手に取る必要がある。安倍首相が国内の、特に首相周辺の保守派に対して、元慰安婦の人々の尊厳を擁護し、さらに在日コリアンの尊厳と人権を擁護するために明確な政治的メッセージを発し続けるよう、新大統領には働きかけてほしい。
日韓協力は朝鮮半島の危機を収束させ、両国の安全を確保するために不可欠である。大都市への過度な集中と日本海側に多数の原発を置く日本は、国境線近くに首都を置く韓国と同じく、戦争のできない国なのだ。万一北朝鮮の攻撃で国土の一部が被害を受けても圧倒的な軍事力で北を壊滅させることができるアメリカと、戦争になれば通常兵器による攻撃だけで国が壊滅的打撃を受ける日韓両国とでは、立場が全く異なる。日韓両国はアメリカの軽挙妄動を諫め、北の核開発について政治的な解決を求めるという共同戦線を張るべきである。安倍政権はあらゆる選択肢を検討するという米トランプ政権を全面的に支持すると言っているが、これは日本の国益に反する。国境を接する韓国民が冷静な対応を取っているという現実を直視し、日本国内でも戦争を回避する政治的な対処こそが安全確保の唯一の道であるという議論を高めていかなければならない。
思えば、金大中政権時代には日韓が未来志向的な友好関係を築くことができた。見解の相違はそれとして認めつつ、たがいに共有している利害関係を的確に認識し、東アジアの平和と繁栄のために協力する成熟した関係を作り出していきたいと願う。新大統領の構想力と情報発信を期待したい。
韓国語原文入力:2017-05-14 18:31