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[寄稿]アジアの緊張と安倍政治

登録:2017-02-19 18:30 修正:2017-02-20 07:52

 安倍首相のトランプ大統領との会見について、日本のメディアは称賛一色である。トランプ大統領が日本に対する安全保障、経済に関する強硬論を控えてくれたとか、ゴルフを通して首脳同士の信頼関係を作ったという評価が特にテレビのニュースショーにあふれている。トランプ大統領が安倍首相を歓待するのは、極めて単純な話である。中東・アフリカの特定国からの入国を禁止する大統領令が内外から批判を浴び、孤立の様相を呈している大統領にとって、ひたすら恭順を示してくれる日本の首相はありがたい存在に違いない。

 このように見え透いた日米友好の演出ではあったが、日本国内の世論に対しては効果てきめんだったようである。首脳会談の直後に行われた報道各社の世論調査では、内閣支持率は上昇し、アメリカ大統領の日本重視の姿勢を人々は高く評価している。2月12日に、日米首脳会談に合わせるように、北朝鮮がミサイルを発射したことも、安倍政権の外交・安全保障政策への支持を高める効果を持った。

 安倍政権が常に高い支持率を維持している原因として、アジアにおける緊張の持続と、中国や北朝鮮の脅威の増加が存在する。そして、安倍首相が頻繁に外国首脳との会談を行い、世界各国から信頼を得ているように見えることが、安倍氏が指導力を持っているような印象を与えている。ということは、北朝鮮が核開発を続け、中国が南シナ海への進出を続ける限り、安倍政権は安泰ということになる。

 安倍首相は友好国の外国首脳と会う時、自由、民主主義、法の支配という価値観を共有すると誇らしげに言う。独裁国家の見本のような国がすぐ近くにあるので、それらと比べれば日本は民主主義の国と言える。

 しかし、そのことが日本の権力者に民主主義を骨抜きにする大きな力を与えている。民主主義体制の名のもとに、安倍政権は国内では自由や法の支配を掘り崩すような政策を次々と進めようとしている。今の国会には、政府は犯罪の実行ではなく、共謀を罰する新たな法案を提出しようとしている。政府は、テロ対策のために、そして2020年の東京オリンピックを安全に開催するために共謀罪が不可欠だと主張している。これらは強弁というしかないが、NHKの世論調査では国民の46%がテロ対策立法という名前にくるまれた共謀罪の必要性を理解しているとされる。

 共謀罪は現代の治安維持法ともいうべき法案である。これが実現したら、警察はテロリストの疑いのある人物の範囲をどんどん拡大し、政府に批判的な運動を行う人々の行動に目を光らせ、共謀の名目で弾圧を加えることも起こりうる。これは取り越し苦労ではない。現に沖縄では名護市辺野古における米軍新基地建設への反対運動に対して警察が厳しい弾圧を加えている。この運動のリーダーは些細な罪状で昨年10月から4か月にわたって逮捕、勾留されている。

山口二郎・法政大学法学科教授 //ハンギョレ新聞社

 民主主義に対して極めてシニカルな権力者が、近隣の独裁国の存在を口実に、国際的には民主主義の擁護者としてふるまい、国内では民主主義の崩壊が進む。なんとも陰鬱な構図である。しかし、これを食い止める方法は今のところ見つからない。日本を取り巻く安全保障環境の悪化という呪文を取り除くことなしには、この政治状況を転換する作業は始まらない。対話よりも力を重視するアメリカ、トランプ政権は安倍政権にとって好ましい国際環境をさらに強めることになるだろう。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2017-02-19 17:28

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/783255.html 原文:

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