最近ある外信を読んで驚いた。国際投資家への影響力が大きい英国のファイナンシャルタイムズが1面トップ記事(3月9日付)で、朝鮮半島の状況を伝えながら「コリア・クライシス(危機)」と表現したためだ。「危機」が日常化された国で長い間暮らしているためか、危機に鈍感になっていたのではないかと驚いたことはもちろん、この新聞を読む外国人が、現在の朝鮮半島の状況をどのように受け止めているかを考えて恐ろしくなった。
他の主要海外メディアも同じだ。最近米国のCNNは、朝鮮半島イシューを中東イスラム国家(IS)との戦争以上に大きく扱っている。これらのメディアは朝鮮半島が「危機モード」に入り込んだと診断する。
最近は経済専門家に会えば、外交・安保問題をより強く心配している。外交・安保が不安ならば、輸出はもちろん消費心理にまで悪影響を与えるためだ。韓国経済が「雇用絶壁」「内需絶壁」に続き「安保絶壁」に直面している。
中国のTHAAD経済報復が韓国経済に及ぼす影響を誇張したくはない。「経済は心理」という言葉もあるように、これを過度に浮き彫りにすれば弊害が生じかねないためだ。しかし、最近一部の保守マスコミの報道どおり「この事態の経済的波紋が制限的」という診断は、状況を過度に安易に見るものだ。中立的と言える国内外の民間経済研究所(IBK経済研究所、クレディスイス)は、中国の報復が本格化すれば韓国の国内総生産(GDP)が0.5%前後下落するという警告まで出した。今年、韓国の経済成長率が2.5%程度という展望だが、ややもすれば1%台の成長率に墜落しかねないという暗鬱な話だ。
最近の米中の動きを見れば、このような悲観的シナリオも無視できない。G2は今、THAAD韓国配備を巡って激しい攻防を行っている。中国は自国経済も被害をこうむることが明らかなのに、韓国に対する報復を全方位的に拡大している。米国もほとんど“必死”と感じられるほど、これに執着している。米国は2年前まで「同盟国(韓国)防御」に必要だと主張していたが、反対世論が続くといつの間にか「在韓米軍防御」のために必要だとして韓国を圧迫した。そして、配備の時期も「年内」から「今年前半期」に操り上げ、既に一部の装備は搬入した。韓国の新政権がスタートする前に混乱に乗じて先占するという態度だ。反米感情を刺激しかねないことが分かっていながら、米国はゴリ押ししている。朝鮮半島がアジアにおける覇権競争を行っている二つの強大国の代理戦場になったわけだ。
こうした米中の対決構図は、ゼロサムの性格が強い国際政治で典型的に現れる「安保ジレンマ」を端的に見せる。安保ジレンマは、一方の国家が武力を拡張して防御的だと強弁しても、相手国家は威嚇的行為と受けとめる現象をいう。特にこれは相互不信を強め衝突につながりかねない。
問題は、米中の利害により韓国の主権的事案が決定されているにもかかわらず、韓国の声は聞こえてこないということだ。当初からTHAAD配備は軍事的有用性が疑われているうえに、中国にまで影響を及ぼして、十分な公論過程が必要な事案であったのに朴槿恵(パク・クネ)政権によって拙速決定された。今、中国の態度から見れば、この問題によって中国との「戦略的協力パートナー関係」がややもすれば「準敵対的関係」に急変しかねない爆発性も抱いている。韓国の最大貿易相手国である中国の消費者が、韓国に対して持つ悪感情も決して無視できない。
これほど論争的で国家の運命に大きな影響を及ぼす事案は、当然に国会批准を経なければならない。黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行は、THAAD配備に関する追加的措置をここで中断し、被害を最小化して、新政権にすべての決定権を渡さなければならない。