朴槿恵(パク・クネ)大統領が罷免され、韓国経済は政治的リーダーシップが空白期を迎える危機に直面した。ちょうどTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備の影響による中国の経済報復、米国の保護貿易主義の圧迫と加速する金利引き上げなど、対外リスクまで現実のものとなった状況だ。経済の司令塔は今後2カ月にわたり、対外リスクを安定的に管理して推進力を失った「朴槿恵流経済政策」を整理する手続きに入り、次期政府が景気低迷に対応する政策の余力を高めなければならない課題を抱えるようになった。
現在、経済チームの当面の課題は高まった対外リスクに対応するものである。まず、THAAD配備が実行段階に入り、中国との経済対立があらゆる方面に拡大している。また、トランプ米政権が保護貿易主義の動きを強めて、韓米自由貿易協定(FTA)の再交渉を要求する可能性が少なくないうえ、4月に発表される予定の米財務部の「為替報告書」も大きな負担だ。
また、米連邦準備制度(Fed)が今週に基準金利の引き上げに乗り出すのもほぼ確実視されるうえ、年内2~3回と予想されていた金利引き上げのスピードが速くなる可能性も排除できない。国内の景気低迷が長期化し、家計負債が増えている状態で、米国の金利引き上げの加速は相当な負担にならざるを得ない。
このような対外危機を管理するとともに、現経済チームは、「創造経済」、「増税無き福祉」など、朴槿恵流経済政策の基調も整理していかなければならない。朴前大統領が掲げた創造経済は大企業を事実上強制動員した上、目立った成果を出せなかったという批判にさらされてきた。与野党を問わず、福祉の強化が主要大統領選挙公約として登場する状況で、朴槿恵政権が掲げた「増税無き福祉」も限界を示したのは同じだ。現経済チームはこのような政策からは手を引いて、余力を残す一方、財政政策の方向転換などに対する検討を進めていかなければならない状況だ。これと関連し、企画財政部の関係者は「当面は2017年経済政策のうち、優先順位によって政策を推進するが、長期的に財政政策の方向変化にも備えなければならない」とし、「新政権初期に内需を下支えできるよう、財政余力を準備する手続きを踏むものと見られる」と話した。
これに政府は、週末の11~12日にも相次いで関係省庁会議を開催し、国内外の経済懸案点検に力を注いだ。ユ・イルホ副首相兼企画財政部長官は12日午後、政府ソウル庁舎で経済関係長官懇談会を主宰した。ユ副首相は弾劾決定が現在まで金融市場に及ぼした影響はわずかであり、輸出入・投資など、実体経済でも特異な動向は見られなかったと評価しながら、「非常経済対策の体制を確実に維持し、リスク管理と民生経済の回復に寸分の揺らぎもなく邁進しなければならない」と強調した。
イム・ジョンリョン金融委員長は12日、THAAD配備と関連して、中国の旅行制限報復措置で困難を強いられている観光、中小企業に2千億ウォン(約199億7千万円)の政策資金を支援すると発表した。ユ副首相も15日、ドイツのバーデン・バーデンで開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相会議に出席し、米中との2カ国間会談を推進するなど、山積した対外経済懸案に対応することにした。
延世大学のソン・テユン教授は「国内景気の悪化と対外環境の不確実性のため、マクロ経済の危険管理の面からユ・イルホ副首相を中心にした経済チームの責務が大きくなった」とし、「THAAD問題、米国の金利引き上げ、為替報告書、大宇造船海洋の資金調達問題など、重要な問題を新政権発足前までうまく管理しなければならない」と指摘した。