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[コラム] 同盟の代価

登録:2017-02-09 22:21 修正:2017-02-10 07:11
ドナルド・トランプ米大統領//ハンギョレ新聞社

 釜山少女像の撤去を要求して“嫌韓”を煽る日本主流マスコミの報道態度を見て、苦虫を噛みながら気持ちをなだめる日々が続いている。それでも、日本に“同病相憐”の痛みを感じる瞬間もある。ドナルド・トランプ大統領の出現に当惑する日本人の反応を見る時だ。

 トランプ大統領は昨年の選挙期間中に「日本が攻撃を受ければアメリカは助けなければならないが、アメリカが攻撃を受けても日本は私たちを助ける必要がない」という主張を繰り返し、米日同盟の意義を引き下げ、安倍晋三首相が心血を注いで推進した環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)を事実上破棄した。それだけではない。トランプ大統領は就任以後、待ってましたとばかりに日本の自動車産業と為替レート政策に対して攻勢的発言を続けている。こうしたトランプ大統領をなだめるために、安倍首相は10日に開かれる米日首脳会談で「日米成長雇用イニシアチブ」と銘打った両国間経済協力案を提示する予定だ。

 日本という生真面目で自尊心の強い国が、なぜこれほどまでに低い姿勢を見せるのだろうか。日本にとって「日米同盟こそが外交・安保政策の機軸」(1月20日安倍首相の施政方針演説)という判断を下したためだ。日本は「中国の浮上と米国の相対的衰退」に象徴される東アジア情勢の変化の中で、「日米同盟を強化して中国に対抗しなければならない」という方向で結論を下し、(前任の)オバマ行政府との同盟強化作業を終えた。一つのかごに“全てを託して”しまった卵を守るために、米国に対して途方もない同盟の代価を払っているわけだ。

 同盟の代価は日本人の暮らしのあちこちでその姿を変えている。先月21~22日、沖縄の嘉手納基地を上回る極東最大の軍事基地に新たに向かっている山口県岩国市を訪問した。岩国市民の長年の念願は、騒音被害が深刻だった米海兵隊岩国基地の滑走路を1キロメートル海側に移転する工事だった。この事業は1997年3月に始まり、埋め立てに使われる土は都市の中央にある海抜120メートルの愛宕山を崩して充当した。そして、岩国市と山口県は山を削って作られた平地に1300世帯6500人が暮らせる大規模宅地開発事業を進めていた。地域の市民団体である「愛宕山を守る会」の岡村寛代表(73)は「この事業が終われば、岩国の住居環境が大きく改善されるだろうという期待があった」と話した。

 しかし、この計画は実現されなかった。2006年5月に確定した米軍再配置計画により、現在は東京近郊の横田基地にある米航空母艦の艦載機部隊である第5空母航空団の岩国移転が決定されたためだ。以後、日本政府と山口県は住民が要求してきた宅地開発計画を白紙化し、これに従わない当時の市長を圧迫するために当初約束していた庁舎新築補助金を一方的に凍結した。現在この場所には移転してくる米軍将校が居住できる高級住宅地が造成されている。この工事費はすべて日本の市民の税金で充当される。

キル・ユンヒョン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 韓国も日本に劣らず多くの同盟の代価を払ってきた。韓国人は米国のために首都のど真ん中の広い基地と、年間1兆ウォン(約978億円)に肉迫する防衛費分担金、性病検査を終えた女性の“きれいな”からだまで提供してきた。そして、今度は韓中関係を破綻に追い込みかねないTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を通じて「お前はどっちの側か」という質問に答えるよう要求されている。

 同盟の代価は、私たちが支払い可能な範囲内になければならない。それほど大切なものなのに、一つのかごに“全てを託す”ことは、あまりにも危険なことだ。

キル・ユンヒョン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/782032.html 韓国語原文入力:2017-02-09 18:20
訳J.S(1637字)

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