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[社説]金正恩体制の現状を明らかにした高級外交官の脱北

登録:2016-08-18 21:37 修正:2016-08-19 07:04
昨年、北朝鮮国務委員会の金正恩委員長の実兄である金正哲(左)がエリック・クラプトンのロンドン公演会場を訪れた時、隣でエスコートしたテ・ヨンホ駐英北朝鮮大使館公使=日本放送貯蔵/聯合ニュース

 北朝鮮のテ・ヨンホ駐英大使館の公使が脱北し、家族と共に韓国に来たと政府が17日発表した。テ公使の脱北が今年初めの4回目の核実験以降に強化された国際社会の対北朝鮮制裁と直接関連しているかは明らかではないが、それでなくとも孤立している北朝鮮のイメージ悪化は相当なものだろう。

 政府はテ・ヨンホ公使の脱北の動機について「金正恩体制に対する嫌悪、自由民主主義体制に対する憧憬、子供の将来の問題」などを挙げている。しかしあまりに包括的であり具体性に欠ける。英国のマスコミの報道のとおり「(国外で育った)次男の名門大進学を前にして、10年の任期が終わって帰国する状況になったこと」がきっかけになったようである。いかなる場合であれ、北朝鮮の体制を西側に宣伝する役割を受け持ってきたエリート高級外交官が脱北したのは異例である。

 今年5月の第7回の党大会で金正恩・国務委員長体制をスタートさせた北朝鮮は、すぐに「200日戦闘」を宣言するなど住民総動員体制を強化してきた。同時に外務省の力を強めて自ら積極的な外交を繰り広げてきた。テ公使の脱北はこのような試みはまともに完遂されていないことを示している。北朝鮮は今後、内部統制にさらに力を入れて対外的にも硬直した姿を示す可能性が高い。これに関連して北朝鮮当局は17日、核兵器の原料に使うプルトニウムを生産したと明らかにした。国際社会の関心を向けようとする試みの一つでありうる。

 5年目を迎えようとしている金正恩体制が全般的に動揺しているという証拠はない。長い目で見ると今が最も安定しているというのが客観的な評価である。1990年代から急増した脱北者はすでに3万人を越え、外交官の脱北も昔から続いている。北朝鮮のエリート階級が最近動揺しているという分析も根拠は脆弱だ。このような面から考えると「北朝鮮の中枢階級の間で金正恩体制に対してもはや望みはないという認識が拡まっている」という政府の判断は行き過ぎだ。政府は今回の件に関連して事実確認を拒み続けていたが、17日夕に突然公表した。政府のこのような態度もまた透明性に欠ける。

 脱北が絶えないのは北朝鮮の体制に問題があるためだ。北朝鮮の政権はこれを認めて国際社会と共存する道を探るべきである。何よりも核ミサイル問題に対する前向きな態度が重要だ。韓国政府もまた、対決一辺倒を改めて、大乗的な対北朝鮮政策を繰り広げるべきである。

お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016/08/18 18:14

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/757339.html 原文:訳T.W

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