朴槿恵(パククネ)大統領は任期3年を過ぎた今も、国政が何か、大統領とは何をする地位であるのかご存知ないようだ。それを知らないまま2年後に大統領職を退かれることは確実だ。本人はおそらく、知らないということさえ知らない。
朴大統領は、なぜ国家経済がこんな有様になったのか、国家経済を甦らすには何をすればいいのかご存知ないようだ。若者がなぜ苦しんでいるのか、いったい何が若者たちに諦めるようにさせているのか、そして若者たちのために何をしなければならないのかご存知ない。大多数の国民が、なぜ私たちの社会が不公正だと考えるのかご存知ないようだ。国家の未来がどうなるかも知らないようだ。政治的な目的のために「経済危機」という言葉を躊躇いなく使いながら、本当の深刻な経済危機が近づいていることをご存知ないようだ。
家計負債の負担を減らすという約束、5歳までの保育と教育に「国家完全責任制」を実現させ、無償保育と無償乳児教育をするという約束、教育費の心配を減らすという約束、こうした約束をしたことを朴大統領はご存知ないようだ。それが自分の大統領選挙公約1、2、3号だったことも。実践できない約束はしたことがないといった話、すべての約束が財政的に実行可能なのか一つひとつすべて確かめてみたといった話、約束したことは政治生命を賭け守ったといった話、こうした話を本人が口にしたという事実もご存知ないようだ。
朴大統領は自ら国政と民生を捨て、政治だけを日常的に行っているということをご存知ないようだ。本人の政治と政争は国政であり民生と考え、野党と“不純な”国民の国政と民生要求は政治であり政争と考えているようだが、本当はその反対であることをご存知ないようだ。国民との約束を最も多く破った人が、他ならぬ自分であることもご存知ないようだ。庶民の立場からすれば朴大統領こそ“背信の政治”の第1号ということもご存知でないようだ。国民の審判を受けなければならない政治家第1号が自分であることを。
朴大統領は自分は政治をしているのではないから、賭けねばならない政治生命などないと考えているのかもしれない。自身が約束したのも知らずにいたので、責任を負うものがないと考えることすらないかもしれない。知らなかったと言えばすむのが、この政府の得意技なのだから。大統領も長官も、なにかことが起これば、知らなかった、報告を受けていなかったと口をそろえる。責任を負うどころか、逆に「被害者コスプレ」にだけ熱心だ。その職位が要求するものを当然知っていたべきこと、その職責で当然知ることが出来たことを知らずにいたとすれば、その場にいる必要がないのに、なぜその場にいるのかご存知ないようだ。
「最高水準のパートナー関係」といった外交上の成果が、実は“内需用のみせかけ”であり、だからなにか起きると、中国も、ロシアも、米国も韓国寄りではないということをご存知ないようだ。慰安婦合意が誤っていたということもご存知ないようだ。
朴大統領が知っているのは朴正煕(パクチョンヒ)から習ったことがすべてであることをご存知ないようだ。それは19世紀の環境でも使える19世紀式方法で、今は21世紀であることをご存知ないようだ。今の若い世代は「朴槿恵を通じて朴正煕を見る」ことをご存知ないようだ。20年後には、朴正煕の“香水世代”が、朴正煕“嫌悪世代”に代わることをご存知ないようだ。それが朴正煕を私たちの歴史から消す最も確実な方法ということをご存知ないようだ。
朴大統領の13日の対国民談話と記者会見が、そのすべてを如実に証明した。大統領はこれらすべてのことをご存知ないので、よく言われるように「答がない」。解答は簡単かつ明瞭だ。奪うことで多くのことができるという詭弁を止め、弱者の目で問題を見さえすれば解答は自ずと見えてくる。搾取的経済を共生する包容的経済に変えれば良い。こうして何もせず、ただ今後の2年をさらに待たなければならないのか。野党がこの有様で支離滅裂なので、さらに7年を待たねばならなくなるか心配だ。
イ・トンゴル東国大経営学部招聘教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2016-01-17 19:21